
千葉・八千代市
~ 母ちゃんの夢咲く つまみ細工 ~

舞台は、千葉県八千代市の静かな住宅街。古い家屋の一室に、夢を追いかけているお母さんがいます。色とりどりの布を正方形に切り出し、ピンセットで一枚一枚折りたたんで作っているのは“花びら”。これをのりで台紙に貼り付けていくと…梅や菊など、見事な花が咲くんです!
“つまみ細工”という伝統的な技法を駆使して、可愛らしいかんざしやブローチを作っているのが今回の主人公・大根田友美さん(47歳)。この春に、つまみ細工の工房兼教室『ちまこ屋』を開いたばかりです。
東京の下町に生まれ育った友美さんは、趣味のダイビングなど、一度ハマったら何でものめり込んでしまうタイプ。幸治さんと結婚して子どもが生まれると、今度は3人の子育てが生活のすべてになりました。そんな友美さんの転機は、たまたまテレビで見た成人式のニュース。女性達が可愛く振袖を着てかんざしを挿している姿を見て「娘の成人式の髪飾りを自分で作れないかな」とネットで検索、見つけたのが“つまみ細工”でした。早速つまみ細工の通信講座を受けた友美さん。さらに、伝統工芸士のもとでかんざし作りを学ぶなど、メキメキと腕を上げ、気が付くと周囲から「作り方を教えてほしい。卒業式や成人式の髪飾りを作りたい」と頼まれるように。やがて「みんなのハレの日のお手伝いがしたい!つまみ細工の楽しさを広めたい!」と思うようになった友美さん。今年4月、つまみ細工のレッスンをする教室と自身の工房を兼ねた『ちまこ屋』をオープンしました。
「娘の成人式を手作りの髪飾りで祝ってあげたい」という一心で始めた“つまみ細工”。その魅力にのめり込み、広く楽しさを知ってもらおうと奮闘する友美さん。そんなパワフル母ちゃんのそばにはいつも、支えてくれる家族、応援してくれる愉快な仲間たちがいます。
「とにかく楽しい、ずっとつまみ細工のことを考えていたい」。友美さんの夢は、さらにでっかく、世界へと広がっていきます!



小さく正方形に切りだした布をつまんで折りたたみ、重ね合わせることで「菊」や「梅」など花の形状を生み出していく“つまみ細工”。その歴史は古く、江戸時代にはくす玉や羽子板の飾り、櫛などに用いられ、江戸土産としても人気だったそうです。 中でも柔らかい印象の“丸つまみ”や、スッキリと尖った“剣つまみ”など、様々な技を駆使して作られる「江戸つまみかんざし」は、東京と千葉の伝統工芸品に指定されています。その製法は現代に受け継がれ、着物姿を美しく引き立てます。そんな伝統工芸士のもとで学んだ経験を持つ友美さん。ピンセットを使いこなし自らの手で染め上げた絹をつまんでいくと…紅白の花が咲き乱れる艶やかなかんざしに!実に見事な出来栄えです。



友美さんの工房には、伝統的なつまみかんざしの他にも、パステルカラーで可愛らしいデザインのブローチやバレッタ、金属チェーンを付けたバッグチャームなど、現代風にアレンジしたオリジナル作品も並びます。これらは販売しているわけでなく、すべて見本。生徒さんに作りたいものをイメージしてもらうためのものです。伝統的な技をベースに作業を簡単にしたり、柔軟な発想でユニークな作品を提案することで敷居を低くして、広くつまみ細工の楽しさを知ってもらう、それが友美さんのモットーなんです。
教室の生徒さんからも「ちまこ屋に来ると自分のイメージ通りのものが作れるからうれしい」との声が。友美流つまみ細工、大好評です!


今年4月に念願の工房を構え、新たなスタートを切ったばかりの友美さん。心の大きな支えとなっているのが夫と3人の子供たちです。子育て一筋だった友美さんを長年見てきた夫の幸治さんは、「一回のめり込むと倒れるまでやっちゃうタイプだから…」と心配しつつ、見守ってくれています。
長女・真生さんと次女・智彩さんは、新作のつまみ細工が完成する度に身に着け、『ちまこ屋』ブログ用の写真モデル役に。楽しみながら協力してくれています。そんな娘たち曰く…「やりたいことだから応援する」、「楽しそう。遅めの青春みたい!」。頑張る母ちゃんの良き理解者です!


この日の『ちまこ屋』は大騒ぎ。2階からテーブルや道具を運び出し、1階の広いスペースへと教室のお引越しです。作業を手伝ってくれているのは、洋裁で活動している鈴木恵美さんと、アロマセラピストの加藤和代さん。実は今回、この3人で新たな挑戦をすることになったんです!それは“シェアアトリエ”。異なるジャンルの3人が一つ屋根の下でそれぞれお店を開き、時に協力しつつ、互いに刺激し合う、そんな素敵な関係です。そして友美さんの心には新たな夢が生まれていました。「2年後、パリで行われるジャパンエキスポに参加して、より多くの人につまみ細工を知ってもらいたい!」。つまみ細工と出会い、どんどん世界を広げていく友美さん、お2人はそばで応援してくれる、大切な仲間です。これからも皆さんと、でっかい夢を追い続けてくださいね!



佐田つまみ画美術館・本部教室
つまみ細工の技法を使って立体的な絵を描く“つまみ画”。その貴重な作品の数々や、つまみ細工の歴史を伝える古作を一般公開しています。1階には、つまみ細工の基礎から絵画作品の制作まで学べる教室があります。
電話番号:042-221-4555
開館日:第1・2・3火曜・水曜・土曜
開館時間:正午~午後4時
【入館料】
大人:500円
小・中学生:300円
※受講希望は要問い合せ


ちまこ屋
主人公・大根田友美さんが営むつまみ細工の教室。つまみ細工を簡単にアレンジした、手軽な作品づくりから体験できます。
電話番号:090-7196-5524
問い合わせ:午前11時~午後4時
定休日:火曜・日曜、第4土曜
※完全予約制(女性限定)
※レッスンによる制作のみで、つまみ細工の販売は行っていません