
石川・志賀町
~ 渚の宝物 お父さんの貝細工 ~

今回の舞台は石川県志賀町。能登の美しい海、白い砂浜が広がる海岸を歩くと…
「こんにちは。どこから来なさった?」と人懐っこく声をかけてくるお父さんに出会えます。浜に通い詰め、貝を拾っては貝細工を作っているという主人公・上野良助さん(77歳)です。この浜は“日本三大小貝名所”として知られる増穂浦海岸。波打ち際には沢山の小貝が流れ着き、中でもピンク色で可愛い「桜貝」が多く打ち上げられる場所。良助さんは、貝を目当てに集まる観光客に声をかけては貝拾いのコツをレクチャーしているんです。さらには…お客さんと仲良くなると自宅の隣にある貝細工の展示室にご案内。そこには良助さんが作った250点もの貝細工が!見てくれた方には沢山の「桜貝」のプレゼントもしています。自宅にも色とりどりの貝を貼り合わせて作った絵や、大きさ1メートルを超えるオブジェなどの作品がそこかしこにあり、妻のいつ子さんは「うちの中は大変!」とお怒り気味です。
元々、外国航路の船で料理人として働いていた良助さんは、27歳でいつ子さんとお見合い結婚。良助さんの仕事は、1年間船に乗り半年休暇というサイクルで、家庭や子育てはいつ子さんに任せっきりでした。その後、船を降りた良助さんは、地元の保養所で支配人として再就職。いつ子さんも女将として支えました。その頃から良助さんは貝細工に没頭し始め、退職する頃には家中に作品があふれる事態に。これにはいつ子さんも大激怒!そこで良助さんは自宅の隣にある、亡くなったお兄さんが使っていた大工小屋へと作品を移動。そして2018年、それまで家に眠っていた貝細工を皆さんに見てもらえるよう「展示室」にしたんです。
年間300日ほど増穂浦海岸に通っている良助さん。「あった!」とテンションが上がるのが、地元で「ますほ貝」と呼ばれ親しまれてきた濃いピンクの「ベニガイ」。良助さんは「これは鳥の羽や、花びらになる」と、イメージしながら貝拾いをします。そして観光客がやって来ると、交流を楽しみ展示室へと誘います。皆さんが驚くのは、ピンクや紫、白など貝の天然の色を活かして「鶏」や「花」などをリアルで精巧に表現していること。着色は一切しないのが良助さんのこだわりなんです。
また、長年連れ添った良助さんと妻のいつ子さんはお互い“自分のことは自分でする“とユニークなルールを決めています。食事や趣味、活動エリアも全くバラバラなんです。そんな中、結婚50周年を迎えたお2人。どうかこれからも、マイペースに趣味の世界を追求していって下さいね!



朝7時。良助さんはいつものように増穂浦海岸へ出かけます。子どものように目をキラキラさせながら「あった!これこれ」と、砂浜に流れ着いた様々な貝を拾うのが日課です。夢中になって貝拾いをしていると、周囲には貝を目的にやって来た沢山の観光客の姿が…。すると良助さん、「どこから来なさった?」とすかさず声をかけ「一か所だけ見ていても見つからないよ、とにかく歩くこと!」と貝拾いのコツを伝授。しばらく一緒に貝拾いをするうちに皆さんと色んな話をして打ち解けると、これまたいつものように貝細工の展示室へ。この日ご案内したのは、お母さんと小学生のお嬢さんです。「すごい!作ってみたいと思う!」と興奮気味に話すお嬢さんの姿に、良助さんも「それが一番嬉しい」と大喜び。こうしたお客さんへの沢山の桜貝やベニガイのプレゼントは、出会いに対する良助さんの記念と喜びの気持ちです。こうした触れ合いが、良助さんの生き甲斐になっています。



海で拾ってきた様々な貝殻は、洗って砂を落とし、陰干ししてから細かな種類に分けて、ようやく貝細工に使います。自宅の脇に建つ倉庫の二階に良助さんの工房があり、ここで様々な貝細工が生まれています。まずは作品に使う貝選び。題材はタンチョウヅル、左右の羽に見立てた白い貝殻を、二枚貝の向き、大きさごとに細かく選び、木工用の接着剤で一枚一枚張り付けていきます。羽の裏側にはピンク色の「ベニガイ」、目や足には濃い紫の「ムラサキイガイ」、タンチョウヅルの特徴でもある頭には赤い「ヒオウギガイ」を使います。完成すると…見事に羽ばたくタンチョウの姿が!自宅にも沢山の大作があり、中でも5枚の桜貝を貼り合わせて作る小さな桜を、500輪も咲かせた大作“桜と水車小屋”を表現した作品は、畳一畳分もの大きさがあり圧倒されます。しかし…妻のいつ子さんに言わせれば「もう大変、邪魔でしょうがないよ!」。そんないつ子さんの趣味は、ちぎった和紙を貼り合わせて描く“ちぎり絵”。場所をとらず、かわいらしい作品はとっても対照的なのです。



良助さんの作品は、地元の施設にも展示されています。良助さん行きつけの温泉「ますほの湯」のロビーには、良助さんの大作“ひな人形”がドーンと飾られています。
女雛の手にする絢爛豪華な扇や、男雛の衣装の繊細な紐など、良く見ないと貝と分からないほど細かく色とりどりの貝殻を貼り合わせて出来ています。
通ううちに仲良くなった施設の責任者・北口さんから許可を頂いて、月替わりで作品を置かせてもらえるようになりました。まだまだ家の中に眠る数々の作品が、こうして多くの人に見てもらえるようになって良助さんも大喜び。
「上野さんが貝細工を作っているのは、志賀町中で有名。毎日毎日浜に通ってね…」と北口さん。作品を通じて、すっかり町の有名人になった良助さんです。また、別の施設では、地元の景勝地“機具岩”を模した作品も展示されています。牡蠣殻でゴツゴツした岩場を表現したこちらも、巨大な大作です。



この日、地元で評判の洋菓子屋さんへ出かけたいつ子さん。一緒にケーキを選んでいたのは、金沢に住む長女の美智子さんです。良助さんといつ子さんは、結婚50周年を迎えたばかり。実は美智子さん、サプライズでお祝いを計画していたんです。親子3人でケーキを食べてお祝いする中、こっそりもう1人、特別なゲストが…。
扉を開けて登場したのは、東京に住む孫の龍太朗さん。立派なお祝いの花を抱え、駆け付けてくれました。「びっくりしたー!」「どうして!!」と驚きと喜びが入り混じった表情を見せるお2人。話しているうちにいつ子さん、「嬉しい…本当に嬉しい」と思わず涙が溢れます。長年マイペースに、それぞれのやりたいことを尊重し、あえてバラバラの生活スタイルを守ってきたお2人が迎えた、結婚50年。改めてお互いに掛け合った言葉は…、いつ子さんが「元気でよかったね」良助さんは「また頑張ってやってくれ」。照れながらの、ご夫婦らしい一言です。何はともあれ、サプライズ作戦大成功!




志賀町観光協会
「日本三大小貝名所」、増穂浦海岸では様々な貝殻を拾うことができます。
もしも運よく良助さんに出会えたら、展示室に案内してもらえるかもしれません。
電話番号:0767-42-0355
問い合わせ:午前9時~午後5時(年中無休)4月25日より
※4月24日までは平日のみの対応です


直売所 西海丸
獲れたて新鮮な魚介類を扱う直売所です。
季節ごとに変わる、旬の日本海の幸を買うことが出来ます。
電話番号:0767-45-1221
営業時間:午前8時~正午
定休日:水曜
※4月~10月末までは店頭販売は休止です。
電話注文での販売のみとなりますのでご了承下さい。