
大阪・大阪市
~ おとんはピアノ調律師 ~

舞台は大阪市鶴見区。都会ながら緑が豊かなこの地で、40年来の夢を叶えた宮本教三さん(68歳)と妻の壽賀子さん(70歳)が主人公です。いつも重いカバンを携え、依頼主のお宅を訪ねるやいなや始めるのが、ピアノの分解…。教三さんの夢だった仕事は、「ピアノの調律師」。しかも、ピアノの不具合を直したり、ずれた音を調律するだけではなく、サービスとしてピアノの弾き語りをしたり、お花の苗などもプレゼントしちゃう!“おもろい調律師のおっちゃん”として地元で評判となっているんです。
地元出身で18歳の時、電子楽器メーカーに就職した教三さん。仕事は電子ピアノの営業兼エンジニア。技術向上のためにと働きながら専門学校で調律を学んだ時、その世界に惹かれました。その頃、ピアノ奏者として会社に出入りしていた壽賀子さんと出会い、演奏を一から教わることに。その後、交際に大反対する壽賀子さんの母親を押し切り2人は結婚しました。義母・華子さんが言い渡した条件は、「大学を出て、安定した職業に就く」こと。条件を受け入れた教三さんは、猛勉強の末に音楽大学に入学し、中学校の音楽教師となりました。定年まで勤めあげた教三さんでしたが、20歳の頃に抱いた夢を忘れてはいませんでした。「調律師になって楽器店を開きたい!」と2016年、自宅で『ミヤモト楽器』をスタート。65歳にして、調律師としての活動を始めたんです。
長年の夢だった調律師として歩み始めて3年。教三さんは「思い出のピアノの傷を修復したい」、「放置していたピアノを、子どものために調律してほしい」など、一人ひとりの思いと向き合い、懇切丁寧に作業に取り掛かります。さらに、自慢の声を張り上げて披露する教三さんの弾き語りサービスにお客さんはびっくり。「本格的!」「ピアノも喜んでいる」と大好評です。そんな皆さんの笑顔がまた、教三さんにとっても生きがいとなっています。20代で調律の世界に惹かれ、60代で夢を叶えた教三さん。そんな夫を優しく支えてくれる壽賀子さん。音楽を通じて広がる愉快な交流を日々、楽しんでいます!



ある日、初めてのお客様のもとへやってきた教三さん。今回調律するのは、30年間全く使っていないピアノです。依頼主の藤田さんが子どもの頃に使っていたもので、最近息子さんが「弾きたい」と言い出したため、調律してほしいとのことでした。音程を確認するために取り出したのは世界基準の音となる音叉(おんさ)。音叉とピアノの音を聴き比べると、かなりずれていることが分かりました。そこで、いつものようにピアノを分解し始めた教三さん。チューニングハンマーという道具でピアノの弦を引き締め、ずれた音をぴったりと合わせていきます。また、ピアノの弦をたたく部分、フェルトでできたハンマーという部品を針でほぐすことによって、かたい音をやわらかくする技も。
そしてピアノが復活したら、恒例の弾き語りサービスが始まります。披露したのはナポリ民謡「サンタルチア」、あまりの熱唱に、お客さん方は大拍手!握手まで求められ、みんなの笑顔に元気をもらった教三さんでした。



自宅に「ミヤモト楽器」の看板を掲げ、調律の他にも様々な活動をしている教三さん。その一つが、中古ピアノの買い取り販売です。誰も弾かず、いらなくなったピアノや、壊れたピアノ…。そんなピアノたちに出会うと、かわいそうに思ってついつい引き取ったり買い取って来てしまいます。そのため家じゅうが、ピアノだらけなんです!自宅のダイニングもピアノで埋め尽くされてしまい、食卓も2階に追いやられるはめに。「どんどん増えて困ってる」と妻の壽賀子さんもあきれ顔です。
そんなある日、教三さんがまたまた、中古の電子ピアノを抱えて帰って来ました。驚いた壽賀子さんは「なにこれ!どこに置くの!」と怒りをあらわに…。びくびくしながら言い訳する教三さんに「わかった。もうしょうがない」と最後には笑って許してくれました。教三さんの深いピアノ愛を理解し、支えてくれる頼もしい壽賀子さんなのです。


教三さんが新たな活動を始めてから、意外な方向にも音楽の仕事が広がっています。この日訪ねたのは地元の三愛幼稚園。実は以前、こちらの園から「園歌」を作ってくれないかと依頼を受けました。教三さんが作曲を担当し、先生方が歌詞を考えることに。思いがけない依頼でしたが、引き受けるからには、とことんまで努力するのが教三さんです。作曲にあたり、全国の幼稚園の園歌を50曲以上聴き、徹底調査。子供たちが歌いやすいよう、音域を狭くすることや、覚えやすいメロディラインを心がけました。その結果、先生方全員が考えた歌詞と合体し、未来に歌い継がれていく、素敵な園歌が誕生しました。元気よく歌う園児たちの姿を眺め、教三さんも感動です。



この日、近所に住む家族が自宅の屋根裏部屋に集まり、始まったたこ焼きパーティー!関西では通称「タコパ」。一家に一台はあるというたこ焼き機を囲むのは、長女・真理子さんと次女・教子さん、そして3人のお孫さんたち。教三さんと壽賀子さんはお孫さんたちに「パピィ」「マミィ」と呼ばれています。そしてさすがは関西…タコパを「タコパ~」と呼ぶ教三さんには間髪入れず「タコパやで!!」とお孫さんたちから厳しいツッコミが!ふっくら美味しいたこ焼きに会話もはずみ、笑顔が絶えないタコパとなりました。
タコパの後は、お孫さんのピアノ演奏に合わせて教三さんが歌います。それも名曲「もしもピアノが弾けたなら」!最近2人で練習を重ねていたそうです。わいわい明るい家族に囲まれて、幸せをかみしめる教三さんでした。



咲くやこの花館
世界各地の草花を堪能できる日本有数の植物園。
熱帯から極地圏までの約5500種の植物を栽培展示しています。
定期的に植物が入れ替えられるので、何度来ても楽しめますよ!
電話番号:06-6912-0055
開館時間:午前10時~午後5時
休館日:月曜(祝日の場合は翌平日)
入館料:大人500円
(中学生以下、障がい者手帳をお持ちの方、大阪市内在住の65歳以上の方は無料)
※3月23日まで臨時休館しています


ミヤモト楽器
主人公・宮本教三さんが営む楽器店。
ピアノの調律などで、教三さんが出張して伺える地域は限られています。
お一人で活動されているので、どうぞご了承ください。
【出張エリア】
自宅のある大阪市鶴見区から車で40分以内の場所に限ります。
(高速道路を使わず、一般道のみでの移動になります)