
岩手・一関市
~ 元大工のまじめ蕎麦 ~

舞台は、岩手県の南端に位置し、北上川とその支流域に広がる一関市。この地で、趣味で始めた蕎麦打ちを活かしたいと、蕎麦カフェを始めた及川福壽(ふくじ)さん(65歳)と妻の三恵子さん(64歳)が主人公です。
岩手県の旧千厩町(せんまやちょう)出身の福壽さん。高等職業訓練校を卒業後、大工を目指し建設会社に就職。25歳の時、三恵子さんと結婚し男の子が生まれます。趣味はバイクツーリング。休日に仲間と出かけては、道すがら蕎麦を食べるのが楽しみでした。県内外で100軒近くのお蕎麦屋さんを巡っているうちに自分でも蕎麦を打ってみたいと思うようなり、独学で蕎麦打ちを始めます。転機が訪れたのは50歳の時。不況のため勤めていた建設会社をリストラに。その後は、長男・徹さんが居酒屋を始めることになり、そのお店の手伝いを始めます。しかし、東日本大震災の後、客足が徐々に減り2018年に止む無く店を畳むことに。長男は地元企業に再就職し、自分はどうするか考えたとき「好きな蕎麦を商売にしよう」と一念発起しました。こうして、知り合いの工務店の力を借りながら自身も大工の腕を振るい自宅倉庫を改装。2019年1月『そばカフェ そば墅(や)』をオープンしました。
福壽さんの打つ蕎麦は、蕎麦粉が10に対して繋ぎが2の「外二蕎麦」。1.5ミリの端正な蕎麦はのど越し抜群です。蕎麦粉を使った手作りシフォンケーキやぜんざいも、福壽さんの淹れたてコーヒーと相性ピッタリ。三恵子さんも、忙しい日には接客などを手伝ってくれています。
「大工も蕎麦も同じモノづくり、妥協は許さない」真面目で職人気質の福壽さんと、支える三恵子さん。ご夫婦の日常と地域住民との交流を紹介します。



福壽さんの打つ蕎麦は、蕎麦粉が10に対して繋ぎが2の外二蕎麦。二八蕎麦より繋ぎが少ない分、打つのが難しいと言われています。そのため一番重要な作業が水回し。気温や湿度などで変化する蕎麦粉の状態を手先で感じ取り水の量を調整します。更に一番難しいのが、均等な幅に揃える切りの作業。福壽さんは喉越しの良さを考え1.5ミリの細さに切り揃えます。豊かな風味が自慢の蕎麦です。



普段の営業は福壽さん1人で切り盛りしています。「仕事は段取り八分、モノづくりは段取りが大事」と言う福壽さん。お盆を並べるところから蕎麦を茹で盛り付けるまで無駄のない見事な手際です。忙しい時には、三恵子さんも接客などを手伝ってくれます。でも普段は介護施設で看護師をしているため、まだお店の勝手がよく分からないそうです。いずれはフルタイムで手伝えるようにと、頑張っている三恵子さんです。



福壽さんがやってきたのは、蕎麦の栽培もしている「農事組合法人こがねファーム」。こちらで蕎麦打ち教室の先生を務めます。手本となる福壽さんの蕎麦打ちを見て、その手際の良さに参加者もビックリ。和気あいあいと楽しい教室になりました。蕎麦も上出来です。福壽先生の蕎麦打ち教室、大成功でした。



定休日。ご夫婦が訪れたのが、奥州市にある福壽さんお気に入りの蕎麦屋「手打ち蕎麦 わ」。店主・阿部さんの打つ蕎麦を福壽さんは目標にしています。自家製粉した鮮度の良い蕎麦粉で打つ蕎麦は、香り、喉越しも最高なんです。「自分はまだ75点。100点は無理だが95点の蕎麦は打ちたい」という福壽さん。これからも更に蕎麦道を極めます。




そばカフェ そば墅(や)
風味豊かな蕎麦を楽しめる「せいろ蕎麦」がおすすめ。寒い時期には温かい「鴨南蛮」も人気です。ぷりっぷりの「牡蠣南蛮」と「牡蠣せいろ」は2月一杯のメニューなのでお早めに。食後に、福壽さんの淹れたてコーヒーと手作り蕎麦スイーツもぜひお召し上がりください。
電話番号:0191-56-2102
営業時間:午前11時~午後2時
定休日:月曜(祝日の場合は営業)
※蕎麦は限定30食
【メニュー】
せいろ蕎麦:600円
鴨南蛮:1,000円
牡蠣せいろ(2月末まで):1,000円
蕎麦シフォンケーキ:300円
コーヒー:300円