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2019年12月7日師走の壱

長崎・平戸島
~ 元船長の竹とんぼ工房 ~

舞台は、大海原が広がる長崎県平戸島。この地で、竹細工を通じて子供たちが楽しく集まれる場所を作りたいと体験工房を開いた杉山安信さん(69歳)と妻の悦子さん(66歳)が主人公です。
平戸市出身の安信さん。中学校卒業後、海運会社で働き始めましたが、初めての航海は当時、戦争中だったベトナムでした。機関銃の弾が飛び交う危険な航海から帰国すると、当時16歳だった悦子さんにバスの中で一目惚れ。結婚を希望するも、悦子さんの父に猛反対されます。それでも安信さんは頭を下げ続け、20歳の時に悦子さんと結婚。4人の子供を育てました。28歳で貨物船の船長となり、充実した暮らしを送っていた安信さん。人生の転機となったのは58歳の時。体調を崩して自宅療養中に、散歩していた浜辺で流れ着いた竹を見つけたことでした。この竹で子供の頃によく遊んだ「竹とんぼ」を作り、地元の小学校に持っていくと子供たちが大喜び。安信さんは「子供たちがワイワイ騒いで竹細工を作れる場所を作りたい」と思うようになります。そうして、地元の大工さんに工房を建ててもらい、2017年12月『体験工房 竹とんぼ』を開きました。
独学で竹細工の腕を磨いてきた安信さん。実物のリアルさを追及した緻密な作品は、市の美術展で市長賞を受賞しました。水産加工場で週5日ほど働く悦子さんも、竹の伐採などを手伝ってくれています。竹馬、竹笛、竹とんぼ…安信さんは、お散歩途中の園児や地元の小学生たちに、竹で作るおもちゃの魅力を伝えます。また、工房では地元のお年寄りを集め、お茶会も開いています。子どもからお年寄りまでたくさんの笑顔が集う工房です。

安信さんは、これまでに100点以上の竹細工を作ってきました。風を受けて進む「帆船」は、デッキ部分まで細かく再現され、2年前に市の美術展で市長賞を受賞しました。また「秋の夜長」という作品には、よく見ると何かが隠れています。なんとキリギリスやコオロギが35匹も!今にも虫の音が聞こえてきそうな作品です。他にも竹とんぼや竹笛、竹馬など昔懐かしい竹細工は、工房に訪れる子供たちに大人気です。

工房に平戸島の小学生30人がやってきました。みんなで竹とんぼ作りです。羽の部分をヤスリがけします。両翼の重さをぴったり同じにすると高く飛ぶそうです。安信さんから合格をもらったら完成。外に出て、「とべー!」の合図でいっせいに飛ばしました。工房の屋根にのっかるくらい高く飛んだ竹とんぼに、子供たちは大喜び。「子供たちが騒ぎながらやるのが一番楽しいです」と安信さん。竹細工の工房は、笑顔を作る工房でもあるんです。

安信さんは30代の頃、貨物船の船長をしながら、漁船を持ち漁師の仕事もしていました。この日は、友人・田渕さんの遊漁船に乗り込み沖釣りへ。狙うは、高級魚のクエやマダイ。立ち姿が様になっています。しかし、当たりはあるものの、タイミングが合わず釣果はゼロ。「帰ろうか」と潔く決断します。言い訳しないのが海の男!でも、背中は「悔しいぃ~」と語っていました。

夕方、工房を建ててくれた大工さんをはじめご近所さんや親戚が集まりました。みんなでバーベキューです!イノシシ肉に…悦子さん手作りの干物もいい感じに焼けました。工房について、大工の松山さんには「こういう場所が少しでも増えたらいい」「ほんとにいいものを作ってくれた」と仰って頂きました。杉山さんの工房は、みんなの憩いの場になっています。

楽園通信

平戸市役所 文化交流課

潜伏キリシタンの里として2018年世界遺産に登録された、「春日集落」は、見事な棚田でも有名です。12月27日まで、イルミネーションが楽しめます。また、春日集落案内所「かたりな」では住民の方が語り部となって、歴史や体験談を教えてくれます。

電話番号:0950-22-4111
問い合わせ:平日 午前8時30分~午後5時15分