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2019年11月23日霜月の四

埼玉・伊奈町
~ 夢紡ぐ みんなの古民家 ~

舞台は、首都圏近郊ながら畑や緑などが多く、のどかな風景が広がる埼玉県伊奈町。
今回の主人公は物置同然、朽ちかけていた築200年の古民家を修復し、貸しスペースとカフェに蘇らせた大島玉江さん(62歳)。造園仕事など家まわりを担当している夫の美敏さん(64歳)、カフェ店長の長女・友里さん(32歳)と力を合わせ、思い出の詰まった家を再び賑やかにしたいと頑張っています。
かつては豪農だった大島家、明治から大正期には織物工場を抱え栄えていたそうです。そんな大島家に生まれた玉江さんは、年頃になると古い家での暮らしに反発するように。愛知県に進学し社会福祉を学んだ玉江さんは、児童施設などで相談員として働きました。28歳の時、大学時代に出会った美敏さんと結婚し3人の娘が誕生。転機は36歳の時。兄が独立し家を出たため、両親の誘いで家族と実家に戻り新たに家を建てました。当時、母屋は使われておらず、物置小屋と化していました。遡れば600年の歴史を持つ大島家。歴史好きな美敏さんが、大島家のルーツについて調べると先祖のことが色々と分かってきました。すると「先祖代々を見守ってくれたこの家を守りたい」と強く思い始めた玉江さん。6年前に貯金をはたいて、築200年の母屋を修復。人が集まる場にしたいと土間をカフェに、和室を貸しスペースにしました。同時に相談員の仕事をライフワークとして続けるため、相談室も設けることに。先祖の紡績業、そして人と人をつなぐという意味を込めて、母屋を『紡ぎの家 大島』と名付けました。
貸しスペースでは、歌いながらウクレレを弾く「うたレレ」や、ヨガ、生け花など、様々な教室やイベントが開催されます。また、貸しスペースを利用するお客さんがお腹を満たせるようにと『cafe BLANCO』も併設。長女の友里さんが考案するメニューは、玉江さんの母・節子さん(88歳)が育てた自家製野菜を使った優しい味。古民家の雰囲気とあいまって人気です。夕方になると玉江さんの大親友の内田さんや、元職場の仲間・山﨑さんがボランティアで食器洗いなどを手伝ってくれ、自然と人が集まる空間になりました。夫の美敏さんは植木の手入れや看板の補修などの作業が大好きで、楽しみながら日々を過ごしています。そんな美敏さんは“長く続いた大島の名を残した方がいい”と、2か月前に「遠藤」姓から「大島」に変えるという大きな決断もしました。
“家の歴史を後世に伝えたい”と家族や仲間たちと奮闘する大島さん一家。これからも大切な古民家を守り続けていって下さいね!

幕末期に建てられたという大島家の母屋。大正時代に紡績業を始め、敷地内の織物工場では多くの職人さんが働いていたそうです。家に入るとまず目に付くのは、土間にある玄関の引き戸。人が出入りするための小さい戸口がついており、扉をすべて開け放すことも出来ます。玄関脇にある客人を招き入れる「取次」の奥には、田んぼの「田」の字のようにつながる4つの和室が。冠婚葬祭の際には、ふすまを外して広く使える設計になっています。また、座敷にある板戸は建築当時のものと言われ、山や家屋、太鼓橋のある風景が描かれた貴重なもの。去年、国の有形文化財に登録されたこともあり、最近は「古民家を見たい」という見学希望のお客様が増え、時間がある時は玉江さんや美敏さんがガイドしています。

『紡ぎの家 大島』の貸しスペースでは様々な教室やイベントが開催されます。この日、和室を覗いてみると…大勢の皆さんがさまざまなポーズをとって、ヨガ教室が行われていました。講師や参加者からは、「この空間がすごく落ち着く」と大好評。そして小上がりでも、仏像を楽しく簡単に彫る「楽仏像教室」が始まりました。最初は仏像でしたが動物や風景など何でも彫る自由な教室に変わったそうです。生徒さんは「古民家で仏像を彫っていると心が穏やかになる」と、作業に集中していました。

元々は貸しスペースを訪れるお客様のために、土間を使って始めた『cafe BLANCO』。店長は料理が得意な長女の友里さんです。玉江さんはおっとりタイプで、丁寧に作業するのに対して、友里さんはいつも素早くテキパキ。「急いで、急いで!」「次は30秒後にパスタいくよ!」と、的確に指示を出します。玉江さんは「ゆっくり心を込めてやりたい…」とぼやきながらも娘に合わせていて、母娘の名コンビです!友里さんが考案するカフェメニューは、季節の野菜を使った優しい味。自慢の自家製スープは前日から野菜をすりつぶして煮込みます。パスタやスープのランチにはサラダや小鉢などが付き、たっぷり野菜が人気です。

閉店が近づくと、必ず見られる光景があります。玉江さんの小学校からの幼なじみ・内田きよ子さんと、かつて相談員をしていた中学校の先生だった山﨑泰宏さんが将棋を打つ姿です。お2人は『紡ぎの家 大島』を通じて仲良くなった将棋仲間。ひとしきり対局を楽しんだ後、お2人には仕事が待っています。店内の片付けや洗い物、仕込みの手伝いなど、開店時からずっとボランティアで通ってくれています。「この家に来て手伝いをすることが生きがいになった」と笑顔で語るお2人。この家は、沢山の仲間に守られているんです。

『cafe BLANCO』で使う野菜の多くは、玉江さんの母・節子さん(88歳)が育てています。この日、ニンジンの収穫をし「良いのが採れた」と満面の笑みを見せる節子さん。玉江さんがカフェを始めて沢山の人が訪れてくれることを「本当に嬉しい」と語ってくれました。カフェでは、時折、節子さんが同級生と女子会を開くことも…。この日は、大の仲良し山本さんと岩﨑さんの3人で、お茶、ランチ、デザートを食べながらおしゃべりを楽しみました。その時間はなんと、朝10時から夕方まで…。止まらないトークの中でお仲間の口から飛び出したのが「こんな古い家は壊しちゃえばいい」とアドバイスをしたエピソード。以前は古い家は取り壊してモダンな家に立て替えるのが当たり前だったそう。今となっては、壊さなくて本当に良かったですね!

楽園通信

紡ぎの家 大島 cafe BLANCO

『紡ぎの家 大島』では様々な教室やイベントが開催されます。
『cafe BLANCO』ではランチやスイーツが楽しめます!

営業時間:午前10時~午後6時
定休日:木曜・金曜・土曜

スープランチ、週替わりパスタランチ(ドリンク付き):1,150円

一般社団法人 伊奈町観光協会

伊奈町の観光については、こちらにお問い合わせください。

電話番号:048-724-1055
問い合わせ時間:平日 午前8時30分~午後5時15分