
大分・竹田市
~ 父ちゃんのカレーパン ~

舞台は大分県竹田市。瀧廉太郎の名曲『荒城の月』が列車到着を告げる豊後竹田駅。その駅前にただ一軒だけ、飲食店があります。店頭のショーケースに並んでいるのは、店主が毎日手間隙かけて作るカレーパン。どこか懐かしい味で人気です。
「店を拠点に町おこしをしたい」そんな思いを胸に、長年続くカレーパン店を受け継いだ瀧下雅幸さん(64歳)が主人公です。
地元出身の雅幸さん。郵便局に就職し、結婚。家族と大分市内で暮らしていましたが、定年が近づくと「故郷に戻ってゆっくり田舎暮らしがしたい」という思いが膨らんでいきます。しかし、これが原因で夫婦は別々の人生を歩むことに。
2013年、空き家を購入し竹田市にUターンした雅幸さん。地域のボランティアの会に参加すると、運命の出会いがありました。会の活動で意気投合した20歳年下の珠美さんと59歳の時に結婚。2年後には長男の和幸くんが生まれました。やがて「息子に残す故郷をもっと元気にしたい」という思いが強くなりました。ある時、行きつけのカレーパン店が閉店するという話を耳にし、地域で愛されていた味を守り、町おこしの拠点にしたいと店を継ぐことを決意します。
そして今年1月「ランチカフェ らんぷ屋」として再オープンさせました。
らんぷ屋のカレーパンは、先代からのレシピをそのまま受け継ぎ、パン生地はもっちり。野菜や牛挽肉、地元でしか手に入らない特別なおからなどを加え、じっくり煮込んだ具がたっぷり入っています。また、カレーライスに使うお米は、雅幸さんが仲間と育て、地域のブランド米として売り出そうとしている「竹田竹炭米」。しっかりとした味わいのある美味しいお米です。このお米を広める「竹田竹炭米研究会」に参加している雅幸さんは、会の仲間や地元の有志と共に、さらなる大がかりな計画も…。いずれ地元の農地や空き家を使って、滞在型の貸農園「クラインガルテン」を開こうと考えているんです!
熱い思いで頑張る夫を支える珠美さんとその原動力になっている2歳の長男・和幸くんと共に、ひたすら走り続ける64歳の雅幸さん。これからも故郷のため、家族のため、竹田を元気にしていって下さいね!



16年前に初代が創業したカレーパンのお店は、2代目店主へと引き継がれ、そして雅幸さんがまた、そのままのレシピを大切に受け継ぐこととなりました。そんな“駅前のカレーパン”は地元の名物として、長年親しまれています。秘伝のレシピは、細かく切った玉ねぎとニンジンをバターでじっくりと炒め、野菜がトロトロになってから、牛挽肉を加えていきます。このカレーパンに欠かせないのが、ミネラル豊富な名水で仕込む『郷豆腐店』のおから。豆乳を搾る時、旧式の機械を使うため、豆乳をたくさん含んでいる特別なおからです。これを入れることで、カレーパンの具の味がマイルドになり、毎日食べても飽きない味に仕上がるそう。豆腐店の郷トヨ子さんも、「おからの入ったカレーパンが本当に美味しい!」と絶賛していました。


お店が休みの日、地域おこしの仲間の吉野さん、農作業ボランティアの土屋さんと市内の竹林に出かけた正幸さん。そこは耕作放棄地となった棚田だった場所。今は竹林となり荒れてしまっています。その竹を大量に伐採し、有効活用しようとしています。雅幸さんは、切った竹を持って農家一筋63年の大ベテラン、お隣仁部屋さんのお宅へ。刈った稲をかける、“はざかけ”の道具を作ろうと、その指導を仰いだものの、手が届かないほど丈が長すぎたことで「長いわ、こんなの掛けられん」といきなりのダメ出し!しかも仁部屋さんは、突然雅幸さんに「教えてくれ」と頼まれたそうで、「前もって言うちょきゃあ用意しとくのに…」と不満気。それでも丁寧に竹の縛り方を教えてくれた上、一緒に作業もしてくれました。とっても温かく、頼もしいご近所さんです。



雅幸さんが参加する「竹田竹炭米研究会」は、田んぼから町おこしを進めようとしているグループ。まずは竹林で伐採した竹で、竹炭作り。竹炭を田んぼの土に混ぜ、土壌改良をしています。竹炭のおかげで美味しく育った「竹田竹炭米」を地域の特産品にしようと考えています。ようやく迎えた稲刈りの日、雅幸さんが機械で稲を刈り、仲間たちもサポート。その中に、雅幸さんの母・84歳のサチコさんの姿も。機械が刈り残した小さな株を見つけては鎌で手刈りし「これでもご飯一膳分になるんで。」と大切そうに稲を抱えていました。この田んぼの持ち主、89歳の小代英子さんも稲刈りを見学に。「真面目、誠実、皆が頼っちょる」と雅幸さんを頼もしく見つめていました。これまで農業を支えてくれた先輩方のためにも、ますます頑張らねばと気合いが入る雅幸さんです。



共働き夫婦の、たまの休みが合う日。雅幸さんが妻の珠美さん、長男の和幸くんと向かったのは近所の「長湯(ながゆ)温泉」。歴史があり良質な炭酸泉として、全国にその名が知られる名湯です。和幸くんと湯船につかり、ゆっくり温泉を楽しんだ雅幸さん。妻と年の差20歳、息子とは62歳の差があります。ふとした瞬間にこの先のことを考えてしまい、時には「僕の見られない未来を、和幸は見ることになるんだな…」としみじみと思いを語ることも。妻・珠美さん、「出来るだけ一緒に未来を見よう!」と夫を勇気づけていました。



竹田市商工観光課
市内に数多く湧き出る名水や温泉など、魅力一杯の竹田市の観光情報はこちらまでお問い合わせください。
豊後竹田駅では、かわいらしい猫の駅長がお迎えしてくれますよ!
電話番号:0974-63-4807
問い合わせ時間:平日午前8時30分~午後5時


ランチカフェ らんぷ屋
先代から受け継いだ、まろやかで飽きのこない味の駅前名物カレーパン。
また、スパイシーなカレーライスには、ガス釜で炊き上げた竹田竹炭米が使われています。
雅幸さんが1人で切り盛りしているため、カレーパンは1日40個限定、カレーライスとともに、売り切れ次第閉店となりますので、ご了承下さい。
【メニュー】
カレーパン:120円 ※1日40個限定
カレーライス:600円
電話番号:0974-78-1008
定休日:木・日曜
営業時間:午前11時~午後6時
※農繁期などの際は臨時休業あり