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2018年8月11日葉月の弐

埼玉・鳩山町
~ 昭和の情景ミニチュア ~

次回は自然豊かなベッドタウン、埼玉県比企郡鳩山町が舞台。閑静な住宅街にある一軒家の一室で、日々小さな小さな「昭和の世界」を作る、山際正幸さん(67歳)が主人公です。作っているのは昔懐かしい木造の学校や、駄菓子屋さんなどのミニチュア。年数が経って汚れた外壁や屋根、お店に並ぶお菓子の一つ一つに至るまで、驚くほど精巧に作りこんであります。そんな夫の趣味を後押しする妻・朱美さん(63歳)は、「もっとこうした方がリアルになる」と、いつも細かな部分を指摘してくれます。
新潟県村上市に生まれた正幸さん。家の周囲には駄菓子店やタバコ屋さん、理髪店など商店が立ち並び、そんな町が大好きでした。18歳で上京して印刷会社に就職、写真製版の技術者として働いた正幸さん。26歳の時、朱美さんと結婚し、2人の子どもが生まれました。真面目に勤めを続けた正幸さんでしたが、夜勤が体力的に辛く、60歳できっぱりと仕事を辞めます。その後は「何か打ち込むことを見つけるべき」と模索していました。昭和の時代に愛着があり、古い物を収集するのが趣味だった正幸さん。退職から2年ほど経った頃、昭和のものを立体化してみようと思い立ちました。それが村上市にあった母の実家で、今は無い木造の写真館。この家を愛していた母・栄子さんに作品を贈ったところ、感動し、大喜び。「思い出を立体にすると、こんなに人を喜ばせることが出来るんだ」と感じた正幸さんは、木や紙、粘土などを使って「昭和の時代」のミニチュアを、趣味で作っていくことに決めました。
『情景模型 権次郎』の作家名で2013年から創作活動を開始。最近では町内の施設で作品を展示するようになり、地元で活躍する様々な作家さんとも知り合いに。定年後に始めた趣味がきっかけで、世界がどんどん広がっているといいます。
昭和をこよなく愛すお父さんが作る、驚くべきミニチュアの世界。これからも皆を惹き付ける、懐かしい風景を生み出していって下さい!

アトリエで作業する正幸さん。1日に2~3時間は創作作業に没頭します。ミニチュア作品に使っている素材はほとんどが紙です。ある日、取り出したのはお菓子が入っていた段ボール。濡らして表面を剥がし、中の波状の部分を使います。段ボールに濃淡の違うグレーの絵の具で着色していき、何ができるのかというと…。なんとトタン屋根!端がサビていたり、土ボコリで汚れていたり…、長年の風で角がめくれていたり。段ボールから作ったとは思えない完成度です。そんなトタン屋根が活躍しているのがミニチュア作品『駄菓子屋』。昔懐かしい木造の建物の中には、沢山のお菓子やおもちゃが並んで…懐かしい!

大きな作品を持って出かけた山際さんご夫婦。向かったのは、町内のコミュニティースペース「ニュータウンふくしプラザ」。去年からこちらに、月に1作品を展示するようになり、この日は作品の交換日です。今回展示するのは『居酒屋』。正幸さんの作品の中に人形など人を現すものはありませんが、倒れたビンや、おつまみ、お品書き…はたまた包丁で切りかけのネギなどが細かに作り込まれ、“女将さんを前に沢山のお客さんが賑やかにお酒を楽しんでいる様子”が浮かぶようです。町の方々も「昔を思い出す」「懐かしい」と興味津々で覗き込んでいました。

長女の美沙さん一家が自宅にやってきました。4歳の孫、健太朗くんは、正幸さんのアトリエに興味津々です。元気に部屋を訪れた健太朗くん、興味を持ったのはショーケースに豆腐やお揚げがずらりと並び、沢山の機械が置かれた『豆腐屋』です。この作品の中で何が気になったのかというと…店主が外で豆腐を売り歩くための、自転車!紙を使って精巧に車輪やサドルなど各パーツが再現されています。実はこれ、正幸さんが“2度と作れない”と言うほどに苦労した作品。なんと健太郎くん、何の気なしにクシャっとつかもうとして…思わず「あ~っ!!」と声を上げる正幸さん。間一髪、壊れずに済みました。

ある日、新潟市西区を訪れた山際さんご夫婦。この町に暮らす、正幸さんの母・栄子さんに会いにやってきました。実は正幸さんのミニチュア作りのルーツは、栄子さん。手先が器用で、木彫りや手毬作りなど細かな事が大の得意です。そんな母・栄子さんが10年ほど前、ティッシュペーパーや粘土で「おせちのお重」のミニチュアを作りました。リアルなこの作品に刺激を受け、正幸さんはミニチュア作りを始めようと思ったそうです。正幸さんが最初に作った作品が栄子さんの実家を再現した木造の写真館。この作品を貰った栄子さんは「立体で出来たのを見てとても感動した。親思いの良い子です」と嬉しそうに語っていました。

最近ミニチュアを通して、色々な交流を深めている正幸さん。地元に暮らすものづくりの仲間と協力し、ワークショップなどのイベントを開催しています。その仲間は、レザークラフトや、機織り、ガラス細工、粘土細工、彫金にペーパークラフトなど、実に個性豊かな作家さんの集団。どれも違う分野で、素晴らしい作品ばかりです。
「それぞれが色々な技を持っているのでいろんな力を貰える」と語る正幸さん。この仲間たちから常に刺激やパワーをもらい、もの作りへの意欲がどんどん湧いてくるそうです。価値観が合う仲間の存在は、ありがたい!

楽園通信

鳩山町コミュニティ・マルシェ
ニュータウンふくしプラザ

正幸さんのミニチュア作品は、あくまで趣味として作っているもの。どうしても作品を見てみたいという方は、町民のためのコミュニティースペース、鳩山町コミュニティ・マルシェの中にある「ニュータウンふくしプラザ」へ。
正幸さんの作品が月替わりで一つずつ、展示してあります。

電話番号:049-290-5469
営業時間:午前10時~午後5時
休館日:祝日、年末年始(12月29日~1月3日)

鳩山町コミュニティ・マルシェ
移住推進センター

同じく鳩山町コミュニティ・マルシェの中にある、移住推進センター。
便利で、自然豊かな鳩山町への移住に興味のある方は、相談してみては。

電話番号:049-272-7528
営業時間:午前9時~午後5時
休館日:祝日、年末年始(12月29日~1月3日)