
宮城・村田町
~ 冬のみちのく蕎麦の道 ~

蕎麦打ちの趣味が高じて定年退職後、自宅納屋を改装し蕎麦店を始めた村上玄吉さん(68歳)と、妻・喜代子さん(67歳)が主人公です。
村田町で生まれ育った玄吉さんは、高校を卒業後、地元の事務機器メーカーに就職。30歳の時、喜代子さんと職場結婚し3人の子どもが生まれました。
玄吉さんの趣味は蕎麦の食べ歩き、休日に各地の蕎麦店を巡っていました。その後、食べるだけでは飽き足らず蕎麦打ち教室に通い、自分で蕎麦を打ち、家族や友人に振舞っていた玄吉さんでしたが、「定年後は蕎麦店を始めたい」と思うようになります。そして本格的に蕎麦打ちを学びたいと、定年退職後に宮城県内のとある蕎麦店の門を叩きました。しかし、その蕎麦店は自宅から車で1時間半以上もかかる山の中。玄吉さんは蕎麦店の敷地内にテントを張り、泊まり込みで修業を始めました。そんな修業の様子を見に来た妻・喜代子さんは「テントを見て涙が溢れた」と言います。当初は蕎麦店開業に反対していた喜代子さんでしたが、夫の頑張る姿に胸を打たれ、一緒に店をやることを決意しました。こうして玄吉さんは1年間の修業を終え、2011年2月、念願の『蕎麦玄(そばげん)』をオープンしました。
『蕎麦玄』の営業は木曜から月曜の5日間。営業日、玄吉さんは夜中の1時半に起床、2時から蕎麦を打ち始めます。「とにかく一生懸命、手を抜かない」これが玄吉さんのモットー。およそ3時間かけて打つ蕎麦は2種類。北海道産の蕎麦粉を使った二八蕎麦と地粉を使った田舎蕎麦。どちらもコシがあって喉越しが良いと好評です。口コミで評判が広がり、地元はもとより県外からのお客さんも多くなりました。
開店して7年。念願だった蕎麦店の夢を叶えた玄吉さん、夫の夢を支え、共に働く喜代子さん。ご夫婦の日常と2人を支える蕎麦打ちの師匠や応援してくれる仲間たちとの交流の様子を紹介します。


営業日の玄吉さんは深夜2時から蕎麦を打ち始めます。蕎麦打ちにおよそ3時間。その後、天ぷらの具材準備に1時間。仕込み終了は朝の6時過ぎです。喜代子さんは朝9時に厨房に入り、そばつゆや小鉢の準備。喜代子さんは家事もあるので、開店前の作業は少なめにしています。この作業分担、玄吉さんの優しさなんです。


定休日、買い出し時の玄吉さんの楽しみが一杯のコーヒー。蔵を改築したカフェのマスター・山家さんとの語らいが息抜きであり活力になっています。「村田町を活性化するためには何をしたらいいのか」。常々考えながら、玄吉さんは蕎麦店、山家さんはカフェを営んでいます。故郷を愛するお2人の会話は尽きません。


一緒に暮らす玄吉さんの母・あき子さん。最初は「こんな場所で蕎麦店を始めても客が来ない」と、お店を始めることに賛成していませんでしたが、今では「順調で良かった」と息子夫婦の頑張りに笑顔。でも「蕎麦はそれほど好きじゃない(笑)」と、お茶目なあき子さんです!


定休日、ご夫婦が訪ねたのは宮城県北、大崎市の『手打そば もみじ野』。玄吉さんが1年間修業をした師匠のお店です。師匠が打った蕎麦をいただきながら、辛くも充実していた修業時代を思い出します。そして、師匠からの教え「蕎麦は人なり」。玄吉さんの蕎麦道の原点がここにありました。



蕎麦玄
玄吉さんの手打ち蕎麦は、北海道産蕎麦粉を使った二八蕎麦と地粉を使った田舎蕎麦の2種類があります。一番人気のメニューは天ぷらざる。エビ、ニンジン、ヤーコン、パプリカ、柿など彩り豊かな10種類の天ぷら。どれもサクサクの食感で蕎麦との相性は抜群です。その他、岩魚天ぷらざる、鴨南蛮そばも人気です。
電話番号:0224-83-2632
営業時間:午前11時~午後3時 ※蕎麦がなくなり次第終了
定休日:火曜、水曜