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2017年12月9日師走の弐

宮城・登米市
~ 囲炉裏あったか古民家カフェ ~

宮城県登米市が舞台。里山に建つ、築110年を超える古民家。ニワトリやアヒルが闊歩する庭を通り、中に入れば昔懐かしい囲炉裏の部屋が…。お客さんが炭火で温まりながら、朱塗りのお膳を前に食事を楽しんでいます。並ぶのは紅茶とケーキ、スコーンにサンドイッチ。囲炉裏で「アフタヌーン ティー」が楽しめるカフェ「古民家カフェ 甘欧(アモー)」を去年春オープンさせたのが、主人公の伊藤秀作さん(51歳)と妻の由紀恵さん(48歳)です。食事はすべて由紀恵さんの手作り、しかも食材はご夫婦が自給自足で生み出すものが主体です。
小学校で教員をしていた秀作さんの趣味が「キャンプ」。火をおこし、食材を調達し調理、テントで一夜を明かす…そんな自然の中での遊びが大好きでした。由紀恵さんや二人の娘も影響を受け、自然とアウトドア派に。
そのうち「自然豊かな田舎で暮らしたい」と考え始めた秀作さんは、古民家を中心に物件を探し始めます。そして4年前、登米市で見つけたのが、空き家だった今の家でした。購入したご夫婦は石巻市の自宅から通ってリフォームを続け、週末だけの田舎暮らしを楽しみました。一方、昔からお菓子作りが得意だった由紀恵さんの趣味が「アフタヌーン ティー」。英国式の茶会を、友人を自宅に招いては楽しみました。ところが秀作さんが「仕事を辞めて完全移住したい」と言い出したから大変!由紀恵さんはいずれカフェをすることを条件に移住を承諾。2014年に夫婦で登米市に完全移住を果たしました。その後、囲炉裏の間が完成、由紀恵さんの夢だったアフタヌーン ティー専門のカフェをオープンさせたんです。
営業は週末のみで、自宅は現在進行形でリフォーム中。日々ゆっくりペースで土壁を塗ったり、土間を作ったりしてきました。夫婦の目標は「昔ながらの生活様式に戻す」こと。そんな夫婦の暮らしは、自給自足。畑を耕し大豆や麦、野菜を作り、鶏の卵を取り、何でも自分たちで手作りして暮らしています。そんな夫婦が家庭の調理や暖房に使う燃料は、すべて「薪」。秀作さんの長年のアウトドア経験から、ひと昔前に戻ったような生活スタイルが落ち着くそうです。そして週末になれば、厨房で由紀恵さんが次々とスイーツやスコーンなどを作り、古民家中に甘い香りが漂います。秀作さんもワイシャツに着替え、ホール担当に早変わり!ご夫婦の古民家には、いつも人が集い、ほっこりあったかです。

朝6時。秀作さんが毎日欠かさずしている事があります。屋外に設置した、石窯の火起こしです。まず、杉の葉、そしてよく乾燥させた薪を石窯に入れます。次に使うのが、クルクルと筒状に丸めた段ボール。火をつけ、息を吹きかけると、勢い良く燃えだし、窯に投入するとあっという間に火がつきます。キャンプ好き、火が大好きだという秀作さんならではの技。そして窯が温まった頃、食材を抱えた由紀恵さんがやってきます。365日薪を使い、屋外で調理しているご夫婦。「薪で料理したら美味しいよね!」という秀作さんの一言で始まった習慣だそうです。手間はかかりますが、料理の温まり方も味わいも違うといい、火はお二人の自給自足生活に欠かせないものなんです。

ニワトリやアヒル、カモ、そして4頭のヤギと暮らしている伊藤さんご夫婦。自給自足の暮らしの中で、ニワトリの卵を頂いたりヤギのお乳を搾ったりと、こちらも欠かせない存在です。お二人は毎朝、4頭のヤギを連れ、裏山に散歩に行きます。ここはお隣さんが「ヤギを放牧していいよ」と貸してくれた場所。中腹まで登ると、集落を一望できる見晴らしのいい広場に到着です。ここで放牧され、自由に好きな草を食むヤギは、のびのびとして嬉しそう。伊藤さんご夫婦もこの時間は、自然の中でヤギとの触れ合いを楽しみながら、ゆっくりとした朝のひとときを過ごします。その風景はまるで「ハイジ」の世界です。

近所の山へ出かけた秀作さん。現地で待っていたのは、古民家のお隣に暮らす千葉範造さん。この日は二人で山の木を伐採します。範造さんは秀作さんの師匠で、山のことを何でも教えてくれる方。木の切り方はもちろん、木を切ることで山肌の日当たりが良くなり、また新たな木々が育つことなど、長年山で暮らしてきた知恵を授けてくれます。範造さんは「ここから街さ出ていく人はいるけど、街からここさ来るって、ちょっと変わっている」と冗談交じりにおっしゃっていました。
二人で伐採したのはナラの木や、桜の木。一定の長さにカットして、自宅へ運びます。この木を使って、山の暮らし・自給自足に欠かせないものを作るんです。

秀作さんの家の裏に、去年範造さんの指導のもと一緒に作った「炭焼き窯」があります。この辺りでは昔、みんなが冬になると炭を焼いていたそう。この日は、以前焼いて窯に入っている炭を取り出します。カフェの常連客、猪又さんも助っ人で来てくれました。火入れ口を壊すと、レンガの壁が出てきて、その奥に炭があります。狭い窯の入り口にもぐり込んで、炭を取り出すのは弟子の秀作さんの役目。出てきた炭の出来栄えは、上出来!範造さんによると、ナラ炭は火持ちが良く、サクラ炭は着火し易く燃えるのも早く、用途によって使い分けるそうです。完成した炭、範造さんはこたつに、秀作さんは囲炉裏に使っています。

週末の営業日が近づくと、由紀恵さんは厨房にこもり、アフタヌーンティーセットのスイーツや軽食を仕込みます。お店で出す、すべてのメニューを手作りしている由紀恵さん、材料も自家製のものにこだわります。畑で野菜や小麦を栽培していて、サンドイッチのパンやスコーンの材料として使っています。例えば、自家製の小松菜やジャガイモ、生みたて卵を使ってキッシュを。食パンから焼き上げて卵サンドイッチを作ったりと…。オーブンから焼きたてのメニューが出てくる度に、古民家は美味しい香りに包まれます。
こうして丁寧に作られる「アフタヌーンティー」を楽しみに、お客さんたちは週末になると、山奥の古民家にやって来るんです。

楽園通信

登米市観光物産協会

冬期、水鳥が集まる伊豆沼やその他、登米市の観光情報についてはこちらにお問い合わせください。

電話番号:0220-52-4648
問い合わせ時間:午前9時~午後5時

古民家カフェ甘欧(アモー)

自家製食材で由紀恵さんが手作りしたスイーツや軽食、全8品をお膳に盛り付けた和風の「アフタヌーンティー」が楽しめます。
頂くのは囲炉裏のある、あったかで昔懐かしい空間。

電話番号:0220-44-4274
営業日:土・日・祝日
営業時間:午前10時~午後5時
・アフタヌーンティーセット:2,100円