
兵庫・神戸市六甲山
~ さわって楽しむ美術館 ~

神戸市六甲山が舞台。元保養所だった建物を利用し、作品に触って楽しめる美術館をはじめた矢野茂樹さん(62歳)と妻・貴美子さん(54歳)が主人公です。
茂樹さんは神戸の高校を卒業後、百貨店に就職。海外赴任も経験するなど仕事にまい進しました。30歳の時、宝石店で働いていた貴美子さんと結婚。夫婦で宝石店を開き、お店を切り盛りしながら4人の子どもを育てました。その傍ら、趣味で彫刻品を集めていた茂樹さんは、いつしか作品を触って楽しめる美術館を開きたいと考え始めます。それは、若くして亡くなった母・和惠さんへのある思いからでした。
茂樹さんが海外で仕事をしている頃、和惠さんはがんを患い失明。茂樹さんに心配をかけまいと、家族はそのことを黙っていたそうです。視力を失い、49歳という若さで亡くなった母親への思いを胸に決意したのが、「目の見えない人にも美術品を楽しんでもらえる美術館」を開くことでした。10年間で200軒近い物件を見て回り、ようやく見つけたのが六甲山にある現在の建物。元保養所を自宅兼美術館として、2013年12月「六甲山の上美術館 さわるみゅーじあむ」をオープンしました。
かつて食堂で使われていた食卓は展示台に、元会議室は展示室に生まれ変わりました。さらに保養所時代の厨房を利用してレストランの営業も始めるなど、美術館では保養所時代の設備を有効活用しています。
また新たな試みとして、六甲山まで来られない人にも触れる美術館を体験してもらおうと、店などに美術品を運び込み展示する「移動式美術館」も始めました。
作品に触れる新しい美術館を多くの人に楽しんでもらおうと日々奮闘する茂樹さんと、それを支える妻・貴美子さんの日常を紹介します。


以前は保養所として使われていた「六甲山の上美術館 さわるみゅーじあむ」。
保養所時代のテーブルや部屋などを今も活用しています。随所に保養所の名残が見られ、普通の美術館とは一味違った雰囲気を楽しめます。


この日は視覚障害を持つ方々が来館されました。普段はできない美術品を“さわって鑑賞する”という新しい楽しみ方にみなさん大満足。お客さんの笑顔を見て、茂樹さんや貴美子さんも嬉しそうでした。



休館日にはご夫婦揃って館内の大掃除です。茂樹さんは屋根にたまった落ち葉集め、貴美子さんは保養所時代の「客間」を掃除機がけです。夢の山荘暮らしですが、時には苦労もつきもの。一方、お孫さんたちには広い館内が最高の遊び場です!


広々とした美術館ですが、矢野家の皆さんが過ごす「リビング」はかつての「管理人室」です。こじんまりとした空間で過ごす家族団らんのひと時。なんだかホッとしますね。



六甲山の上美術館 さわるみゅーじあむ
矢野さんご夫婦が営む、芸術品にさわることができる美術館。宝石彫刻や金属彫刻、絵画など、およそ100点の作品を所蔵しています。
美術品の新しい楽しみ方を発見できます。
電話番号:078-894-2400
営業時間:午前10時~午後5時
定休日:木曜日
入場料:大人(中学生以上) 1,000円
子供(3歳以上) 500円
レストラン:完全予約制