木曜日

玉川徹が“ニュースに潜む疑問”を独自に追及

2019.02.14放送

そもそも急性骨髄性白血病の根本的な治療法はないのだろうか?

iPS細胞を用いた「白血病」の治療法とは?

お話を伺った研究者「京都大学 ウイルス・再生医科学研究所」河本宏(かわもと・ひろし)教授
※今回取材した「iPS細胞を用いた治療法」は、現時点ではまだ「マウスによる実験」の段階です。
競泳の池江璃花子選手が一昨日、自身の発病を公表した「白血病」。白血病は4つに大別され、それぞれで症状や治療法が異なるといいます。日本人の成人が最も発病しやすいのが「急性骨髄性(きゅうせい・こつずいせい)白血病」です。その根本的な治療法となり得る可能性があるのが、京都大学で現在行われている「iPS細胞を用いた治療法」だといいます。玉川徹さんは、その研究現場を取材させていただきました。玉川さんが今回お話を伺ったのは「京都大学 ウイルス・再生医科学研究所」の河本宏(かわもと・ひろし)教授です。

番組では一昨年、iPS細胞の開発者でノーベル賞受賞者でもある山中伸弥(やまなか・しんや)教授に取材し、「iPS細胞を使ったがん治療」についてお話を伺いました。山中教授によれば、「がんを攻撃する免疫細胞をiPS細胞から大量に作り出す」というのが、そのメカニズムだといいます。そして、「免疫細胞を大量に作ることにはすでに成功しているので、数年以内には臨床実験に入りたい」ともおっしゃっていました。河本教授が現在行おうとしているのは、その治療法の「白血病への応用」なのです。

免疫細胞には、常に体内を監視し、有害なものがあれば食べてしまう「自然免疫」と、感染した病原体を特異的に見分けて記憶し、次に出会った時に排除する「獲得免疫」の2種類があります。河本教授が注目したのは、獲得免疫細胞のひとつである「T細胞」。このT細胞には、攻撃の指令を出す「ヘルパーT細胞」と、攻撃の過剰化を防ぐ「制御性T細胞」、感染細胞やがん細胞などにとりついて排除する「キラーT細胞」の3つがあります。河本教授は、このキラーT細胞を利用してがんを治療しようとしているのです。

コストを抑えながら「キラーT細胞」を増やす方法とは?

「患者の体内にも存在しているが、数がとても少ない」というキラーT細胞。河本教授は「それをiPS細胞によって大量に増やす」というのです。なんと「1個から100万個ほどまで、ほとんど無限に増やせる」のだとか。ただし、「患者から取り出したキラーT細胞を増やし、また体内に戻す」というやり方は、確実性があるものの「膨大なコストがかかる」という欠点があるのだそうです。しかし最近、「もっと簡単に同じような効果の期待できるT細胞を作る方法」が開発できたといいます。

免疫細胞というのは、排除対象の持っている「目印」を頼りに働くのだそうです。その目印を「抗原(こうげん)」といいます。白血病細胞の場合、8~9割のものが「WT1抗原」という目印をつけているのだとか。そのため、iPS細胞を使って「WT1抗原を攻撃するT細胞」を大量に作れば大きな成果が期待できるわけです。高齢者の場合は「骨髄移植」による治療ができないそうなのですが、このやり方ならば対処できるといいます。

iPS細胞で増やした「WT1抗原を見分けられるキラーT細胞」による治療法は確かに画期的ですが、「白血球の型が一致しないと使えない」のだそうです。そのため、多くの患者さんに用いるには「たくさんの種類のキラーT細胞をストックしておく必要がある」といいます。すでにマウスの実験では「明らかに延命や救命の効果が見られている」そうで、人体での臨床試験の時期が気になるところですが、「臨床試験の申請をするには、あと3~4年ほど大規模な試験を行う必要がある」のだとか。「早ければ4年後くらいを目指しているが、今後の進展次第なので、まだはっきりしたことは分からない」と河本教授はおっしゃいます。

今回の取材を通じて玉川さんは「血液のがんも、新しい免疫治療が主流になる日が近そうだ」という感想を抱いたそうです。