木曜日

玉川徹が“ニュースに潜む疑問”を独自に追及

2018.11.22放送

緊急特集・そもそも日本の水道事業は民営化したほうがいいの?

現在審議中の「水道法改正案(水道民営化法案)」がはらむ危険とは?

国際ジャーナリスト・堤未果さんの著書「日本が売られる」
発行元/幻冬舎
定価:860円(税別)
現在行われている臨時国会、参議院で審議中なのが「水道法改正案」です。別名を「水道民営化法案」というこれはすでに衆議院を通過しており、成立は確実と見られています。しかしこの民営化には「水道料金の値上げ」や「サービスの低下」など様々な懸念があるんだとか。「経年劣化した水道管の補修」など喫緊の課題も抱えている中、水道の民営化は私たちの暮らしにどんな影響を及ぼすのでしょう? 玉川徹さんは今回、著書「日本が売られる」の中で水道事業について詳しく触れている国際ジャーナリストの堤未果(つつみ・みか)さんにお話を伺いました。

「今回の法案の問題点は、『コンセッション方式』というものが導入されたことで『水道の“所有権”は今まで通り自治体が持つが、“運営権”が民間業者に渡ってしまう』という部分」と語る堤さん。民間が運営すれば水道事業も「営利を求めるビジネス」になってしまいます。公共事業ならば「採算」よりも「水の安定供給」や「水質維持」が重視されますが、民間事業になれば「株主」もいるため、一定の利益を出さなくてはいけなくなるわけです。

また、複数の企業がひとつの送電網を共有できる「電力」と違い、水道管は「1地域につき1本」なので、「1社独占」の状況となってしまいます。そのため、「事業者が届け出さえすれば料金はいくらでも上げられるようになる」と堤さんは指摘します。

さらに、「水道施設の管理体制」にも懸念が生じるのだとか。ガスや電気の場合は法律によって、たとえ民間であっても「安定供給の責任」は事業者に課せられます。しかし今回の「水道法改正案」が可決されると、水道だけは例外的に「安定供給の責任が自治体に課せられる」こととなり、つまり「料金値上げで生じた利益のみ事業者側に渡り、万一の場合の修復や後始末の義務だけが自治体側へ行く」という状況になるのだそうです。そうなると水道事業は「ノーリスク・ハイリターンの理想的なビジネス」ということになります。

海外では「再民営化」に踏み切る例も多いが、そこでまた問題が勃発

海外ではすでに多くの国で採用されているという「水道事業の民営化」。民営化率はイギリスやフランスで70%以上、ヨーロッパ全体や北米・南米でも50%を超えているそうですが、果たしてそれらは成功しているのでしょうか? 「イギリスで民営化した際、まず料金が上がりました」と堤さん。なんと上昇率は「民営化から25年で300%」だといいます。それは他の国々でも同様で、ボリビアが「2年で35%」、南アフリカが「4年で140%」、オーストラリアが「4年で200%」、フランスが「24年で265%」となっているそうです。

また、「料金が上がったぶん設備が充実するか」といえば、それは疑問なんだとか。営利事情であれば「利益が上がらなかったので出来ませんでした」という言い訳ができてしまうのです。イギリスでは、水道事業者がタックスヘイブン(租税回避地)を利用して利益隠しをし、「水道管が直されないまま料金だけ上がる」という事態に陥ってしまったため、国民が怒って“再公営化”という流れになったといいます。こうした動きはイギリス以外でも進んでおり、2000年から2015年の間に「料金高騰」や「サービス低下」を理由に民営化をやめた国や地域は、世界37カ国・235都市にも上るんだとか。

民営化をやめれば全て良しとなるかといえば、必ずしもそうではないそうです。運営契約を切られた民間業者が“違約金”を要求する可能性があるからです。再公営化を決めたアメリカ・インディアナ州では、民間業者との間にまだ10年の契約期間が残っていたため、「およそ29億円」もの違約金を払わされているんだとか。そんな危険をはらんでいる「水道事業民営化」を、なぜ日本は進めようとしているんでしょうか? 堤さんは「法律を決めるメンバーが、水道事業に参入したい財界の側を向いてしまっているから」と指摘します。

「公共の財産」が危険に晒されている日本人が行うべきこととは?

政府が「水道施設の更新のために必要」と主張する「水道民営化」と、そのための「水道法改正」。しかし堤さんは「その前にやることがある」とおっしゃいます。フランス・パリが2010年に「25年ぶりの再公営化」に踏み切った際、いくつかの決め事をしたそうです。そのひとつが「水道事業の運営をチェックする第三者機関への市民の参加」でした。「料金」「投資」「使用する技術の選別」といった重要事項の決定に市民の目と声を入れることで、健全な運営ができるようになったといいます。「日本も、ただ『民営化はいけない、役所がやるべきだ』と言うばかりではなく、海外の事例を参考に、まずは『水道事業の徹底的な透明化』を図ることが必要」と堤さんは指摘します。

危険に晒されている「公共の財産」は水ばかりではありません。「森や海、種、農地、労働力、個人情報なども“商品”として売り買いされるリスクをはらんでいる」と、堤さんは警鐘を鳴らします。そうした大切なものを守るために、私たちは何をすればいいんでしょう? 堤さんは「国民自身が『民営化して良いものと悪いものとの線引き』をすること」とおっしゃいます。「いったん法律化されると元に戻すのは難しいので、政府がどう法律を変えていくのか常に見極めていないといけません」と堤さん。玉川さんは今回の取材を終え、「もう一度立ち止まって、審議を尽くすべきでは?」という思いを強くしたそうです。