ショーアップ

野上慎平アナが「番組独自の取材と切り口」で注目ニュースを伝えます。

2018.11.09放送

秘話 ベストセラー小説執筆の裏側に“親子の絆”

青春ストーリーを映画化

『走れ!T校バスケット部』
絶賛公開中
©2018「走れ!T校バスケット部」製作委員会
シリーズ累計120万部を売り上げた、超弱小バスケ部が全国大会出場を目指す青春ストーリー「走れ!T高バスケット部」。原作者は松崎洋さん。しかし、物語を書き終えることなく4年前に永眠、その完成は息子の準さん(28)に託されていました。番組ではこの小説の完成に隠された知られざる親子の絆に迫りました。

実は物語の主人公・田所陽一のモデルは準さん。バスケットを通じていじめから立ち直る青年の姿を描いたこの作品はベストセラーとなり、映画化されるまでになったのです。

親子で完成させた映画原作小説誕生秘話

文庫「走れ!T校バスケット部」著者:松崎洋
1巻~8巻 幻冬舎文庫

「走れ!T校バスケット部」著者:松崎洋 松崎準(10巻のみ連名)
1巻~10巻 彩雲出版
準さんは小学生の頃からバスケットをやっていて、高校では強豪校に入学します。しかしここでいじめにあい、大好きなバスケットを諦め転校を決意。それは、「自分そのものがなくなってしまうような」喪失感だったそうですが、そんな準さんを救ったのが、当時弱小といわれていた転校先のバスケ部でした。「例えば、パスを出しても取れなかったり」「それでも楽しそうにみんながやっている姿を見て、あ、これでもいいんだな。こういうバスケットもあるんだな」。仲間とともに楽しんでするバスケットは、以前の学校では経験したことのないものでした。

そんな準さんの姿に、未来への思いを重ねたのが父・洋さんだったのです。主人公が新たな仲間に出会った弱小校を全国大会出場の夢に導いていくという物語の執筆が始まります。ところが最終話10巻の創作中に悲劇が襲います。肺の機能に障害をきたす原因不明の病「間質性肺炎(かんしつせいはいえん)」を発症。治療法もないなか、病気と闘いながら原稿に向かい続けたそうですが、洋さんは小説を完成させることなく息を引き取りました。

「父が亡くなる一週間ほど前、ぎりぎり喋れるかしゃべれないかという病状でしたが、最後の完結部分は全部おまえに任せるから、最後まで仕上げてくれという風に・・・。本当に細々とした声だったんですが、僕はそれを父の遺言だと思った」と準さん。遺志を引き継いだ証は10巻を完成させ、親子の連名の作品となってこの世に残ることになりました。

準さんは父の残してくれたこの作品を通して伝えたいことがあるといいます。「今もいじめに苦しんでいる人がいるのであれば、周りに手を差し伸べてくれる人、助けてくれる人がいると思うので、そういう人たちに甘えてもいいんだよと。辛かったら逃げ出してもいい。そういう風に伝えたいと思いますね」。

生前、洋さんは「良いことも悪いこともあるから人生は面白い」とよく言っていたそうです。その想いは小説だけでなく、映画にも込められているそうです。映画「走れ!T高バスケット部」は現在公開中です。