木曜日

玉川徹が“ニュースに潜む疑問”を独自に追及

2018.10.18放送

そもそも 急性骨髄性白血病をiPS細胞を使って治療するってどういうこと?

血液がんの治療に光明をもたらした「キラーT細胞」とは?

そもそも総研では、これまで様々な“最新がん治療法”を取材してきました。ただし、それらは「固形がん」を対象としたもので、「血液のがん」への有効な結果は得られていません。「血液のがんに有効」とされる「CAR-T療法」というものもありましたが、それも「リンパ性白血病」に限定しての実用化となっています。

血液のがんの中で私たちがよく耳にするのが「急性骨髄性白血病」ですが、それに有効な治療法はまだ無いのでしょうか? 番組が調べてみたところ「京都大学」で、あの「iPS細胞」を使った治療法が研究されていることが分かりました。

そもそも総研では昨年、iPS細胞の開発者である山中伸弥(やまなか・しんや)教授から「iPS細胞から『がんを攻撃する免疫細胞』を大量に作り出すことに成功している。その技術を使って『免疫細胞をより強力にし、がんを克服する』という治療法の臨床実験に、数年以内には入りたいと思っている」というお話を伺いました。その技術が白血病に応用されようとしているのです。

玉川徹さんは、iPS細胞を使ったがん治療を研究されている「京都大学 ウィルス・再生医科学研究所」の河本宏(かわもと・ひろし)教授に、その詳細を伺いました。河本教授によれば、免疫細胞というのは「常に体内を監視し、有害なものがあれば食べてしまう“自然免疫”をつかさどるもの」と、「感染した病原体を特異的に見分けて記憶し、同じものに出会った際に排除する“獲得免疫”と呼ばれるもの」に大別されるといいます。

河本教授が注目したのは獲得免疫細胞のひとつである「T細胞」というもの。T細胞には、攻撃指令を出す「ヘルパーT細胞」、その攻撃が過剰にならないよう制御する「制御性T細胞」、感染細胞やがん細胞などにとりついて排除する「キラーT細胞」の3つがあるそうです。河本教授は、この3つ目のキラーT細胞を使ったがん治療法を研究しておられるのです。

「iPS細胞から作られたキラーT細胞」の効力は?

※現在はマウス実験の段階で、人体での臨床試験に移るのはまだ数年先となる見込みです。
確実性が高いのは「患者の体内から取り出したT細胞を、iPS細胞技術で大量に増やしたうえで戻す」という方法なのですが、それだと1人1人個別に行うため莫大なコストがかかってしまうのだとか。そこで河本教授は「同じような効果がもっと簡単に出せるT細胞を作る方法」を開発したといいます。

免疫細胞が攻撃対象を認識するための目印を「抗原(こうげん)」と言います。通常のがん細胞はあまり特別な抗原を出していないそうですが、白血病細胞の場合は「WT1抗原」という目印を8~9割という高確率で出しているのだとか。そこに着目した河本教授は「WT1抗原を見分けられるT細胞をiPS細胞に遺伝子導入し、そこからキラーT細胞を作り出す」という方法に到達したといいます。ただし、この治療法は「白血球の型が一致していないと使えない」ため、河本教授は「多くの人々に対応できるよう、たくさんの種類のキラーT細胞をストックしておく必要がある」と語ります。

河本教授はすでに「人間のT細胞を白血病のマウスに投与する」という実験を行っており、そこで「明らかに延命効果が見られた」という結果を出しているそうです。白血病となったマウスは通常なら1カ月程度で死ぬそうですが、T細胞を投与したマウスの中には「5カ月以上も生存しているものもいる」といいます。

待たれるのは「人体での臨床実験」ですが、河本教授によれば「まだ大規模な実験に3~4年程度かかり、そのうえで臨床試験の申請をすることになる。早ければ4年後ぐらいを目指しているが、詳しいことは今後の状況を見なければ分からない」とのことでした。今回の取材を経て玉川さんは「血液のがんも、新しい免疫療法が主流になる日が近そうだ」という感想を抱いたといいます。