木曜日

玉川徹が“ニュースに潜む疑問”を独自に追及

2018.08.30放送

そもそも 水素って 本当にからだにいいの?

健康に良いと言われる「水素」の効果はどこまで確認されている?

「水素が体に良い」「治療効果がある」といった話題が、医学界では10年ほど前から上っています。しかし「水素のもたらす人体への医学的な効果」というのは、まだ確認できていないのだとか。それは市販されている「水素水」についても同様だといいます。玉川徹さんは今回、“吸入”という方法に限定して「水素の有効性を確認する臨床実験」を行っている「慶應義塾大学 医学部」を訪問し、その詳細を伺いました。お話ししてくださったのは「慶應義塾大学 水素ガス治療開発センター」の佐野元昭(さの・もとあき)センター長です。

佐野センター長によれば、かつて水素は「体に対して何の影響も与えないガス」と思われていて、「体に無害なガスの代表格」とされていたのだといいます。水素というのは、実は私たちの体内でも作られているんだとか。「腸内細菌はコンスタントに水素ガスを生産しており、私たちの体は一定濃度の水素ガスで常に飽和されている」と佐野センター長は教えてくださいました。

「体内が常に水素で満たされているのなら、新たに外部から摂取する必要はないのでは?」という玉川さんの問いに、佐野センター長はこう答えました。「腸内細菌が発生させる水素ガスはかなり微量で、影響の及ぶ範囲が限られている。しかし外部から吸入させれば影響範囲は全身に及び、濃度も高まります」。佐野センター長のお話によると、「腸内で作られた水素はほとんどが肝臓・心臓の右心房・肺を通って体外に排出されてしまう」のだとか。そのため胃・心臓・脳などには行き渡らないのですが、外部から吸入させれば「水素濃度の低いところにもプラスの効果をもたらせ得る」のだそうです。

「世界各国で行われている動物実験では、すでに『炎症の抑制』や『血行動態の安定化』などが認められている」という水素吸入療法。中でも高い効果が認められたのが「脳梗塞(のう・こうそく)の縮小」だったといいます。大量発生すると重度の臓器障害を引き起こすという「活性酸素」の増加を水素が抑えることで、最終的には梗塞部分が半分以下まで縮小したというのです。

動物実験で効果の認められた「水素吸入療法」はいつ人間へ用いられる?

動物実験では有効性が確認された「水素吸入療法」ですが、人間での臨床実験はどうなっているのでしょうか? 「小規模な研究や、吸入後の経過観察などは様々行われていると思うが、国に『医薬』や『保険対象診療』と認めさせ得るレベルでの“有効性・安全性の検証実験”はまだ行われていない。それに今、我々が取り組んでいるところです」と佐野センター長はおっしゃいました。

慶應義塾大学では現在、「心停止後症候群を対象とした臨床実験」を行い、水素の医学的な効果の研究をしているそうです。心停止後症候群とは「心停止状態から蘇生術によって鼓動(血流)が再開する際、大量の活性酸素が発生して組織や酸素を傷つけ、脳や臓器の機能障害が起こる」というもの。これによって、「一命は取り留めたものの、寝たきりになったり、昏睡状態に陥ったりすることがある」のだそうです。

心停止状態で搬入されてきた患者さんの約2割は蘇生するそうですが、「社会復帰できるまで回復する方」となると、そのうちの1割ほどしかいないといいます。しかし、水素ガスを吸入させると「脳機能や心機能、生命予後の改善効果が期待でき、患者さんにこれまで以上の恩恵をもたらせるかもしれない。私たちは今、それを検証する臨床実験を行っています」と佐野センター長はおっしゃいます。

玉川さんは、マネキンを使った臨床実験の再現を見せていただきました。実際に水素の吸入処置が行われるのは、救急外来の集中治療室となります。臨床実験では、「4%の水素を含んだ窒素(ちっそ)ボンベ」と「100%が窒素のボンベ」のどちらかが無作為に選ばれ、酸素と合わせて治療が行われるといいます。「慶應義塾大学病院 救急科 診療科」の本間康一郎(ほんま・こういちろう)副部長は、このようにするのは「主観を排するため」で、「何も分からない状況で研究を進め、最終的に解析をすることで、より正しい結果が導き出される」のだと教えてくださいました。

動物実験では確認されているものの、まだ人間では確かめられていない「水素の吸入効果」。慶應義塾大学が研究している水素吸入療法は、「特殊な機材や技術を必要としないため、臨床現場での普及に期待が寄せられている」そうです。試験は全国のおよそ20の医療機関で行われており、「合計360の症例を集めることが目標」だといいます。

「水素ガスを吸った患者さんの方によりメリットがあった、という結果が出れば、今後は医薬化や保険診療化を視野に入れた治験に移れる。逆に、出なかった場合には『動物実験では有効性が証明されたが、人間に恩恵をもたらすまでの効果はない』ということになる」と語る佐野センター長。「その結論が出るのはいつ頃なのでしょうか?」という問いに、佐野センター長は「3年後をめどに考えているが、現時点ではまだ明言できない段階です」とおっしゃいました。今回の取材を通して玉川さんは「もし動物実験の効果が人間にもあるなら、色々な応用が…」という感想を持ち、将来に希望を抱いたそうです。