木曜日

玉川徹が“ニュースに潜む疑問”を独自に追及

2018.08.23放送

そもそも 骨も車もプリンターで作れるんですか?

3Dプリンターで“印刷”する「患者に同化する人工骨」とは?

人工骨(CT-BONE)の問い合わせ先「株式会社ネクスト21」
TEL/03-5840-8830(代表)
代表取締役社長/鈴木茂樹(すずき・しげき)医学博士
※詳細はネクスト21まで直接お問い合わせください。
「プラスチック樹脂などを塗り重ねることによって、金型を用いることなく、入力データ通りの立体成型物が作れる」という画期的な装置「3Dプリンター」。アメリカのベンチャー企業では、素材に「プラスチックとカーボン(炭素繊維)」を用いることで、電気自動車の車体の75%(モーターなどの動力部分以外)を作ることに成功したといいます。これは実際の走行も可能で、時速およそ65kmまで出すことができるそうです。使用できる素材はいまや「金属」にまで広がり、3Dプリンターは「航空宇宙関連部品」などの分野にも市場を拡げつつあるんだとか。

玉川徹さんは今回、「3Dプリンターによる“世界初の取り組み”に成功した」という日本の企業を取材しました。お邪魔したのは、医学博士の鈴木茂樹(すずき・しげき)さんが代表取締役社長を務める「株式会社ネクスト21」。なんとこちらでは、「CT-BONE(シーティー・ボーン)という“3Dプリンターで立体成型した人工骨”を、患者の骨と同化させることに成功した」というのです。この最先端技術は「今年4月に厚生労働省から製造販売の承認を取得し、5月から実際に販売を開始している」といいます。

人工骨「CT-BONE」が体に同化するメカニズムとは?

玉川さんは、CT-BONEが実際に製造されている、ネクスト21の工場内を見せていただきました。そこで稼働していたのは2台の製造装置(3Dプリンター)です。鈴木医学博士は「この2台で日本中、あるいは全アジアのニーズをカバーできる製造能力を持っている」と語ります。

3Dプリンターで人工骨を作る際、まず最初に行うのが「CT画像やMRI画像を元にした、患者の正確な“骨(こつ)モデル”の作成」です。骨モデルが出来上がったら、それを使って医師と綿密な打ち合わせをし、オーダーメイドの人工骨を作っていきます。

玉川さんは今回、骨モデルの製造過程を見せていただきました。0.1mmの厚さ(紙1枚程度)にスライスされた患者の骨のデータをどんどん積み重ねていくことで、1本の骨が出来上がります。通常のプリンターにおける「インク」に相当する特殊な液体を、「紙」に相当する粉の上に吹き付けて“印刷”していくのです。そうやって作られた人工骨の主成分は、人骨の成分と非常に近い「特殊なリン酸カルシウム」であるため、「自分の骨だと体が勘違いする」のだそうです。

私たちの体内では「古い骨が壊され、新しい骨へと入れ替わる新陳代謝」が日々繰り返されています。CT-BONEは「自分の骨だと体が勘違いしている」ため、新陳代謝のサイクルに組み込まれていくのだとか。結果、他の「古い骨」と一緒に破壊され、「新しい本物の骨」と入れ替わるわけです。その速度は、大きさと場所によって差があるものの、「若い方ならば2~3年程度」だといいます。

「CT-BONE」と「他の人工骨」の決定的な違いとは?

「3Dプリンター製の人工骨」自体は世界に数多くあるそうですが、それらは強度を高めるために「素材を焼いている」といいます。そのせいで骨の細胞が入りづらくなり、「自分の骨と同化することがない」のだとか。対して鈴木医学博士のCT-BONEは「素材を焼くことなしに強度を高める技術」を確立しています。この技術は驚くべき効果をもたらしたといいます。玉川さんは、実際の臨床例を見せていただきました。

悪性腫瘍の治療のために顔面の骨の一部を切除した患者さんの場合、自分の骨だけ用いたのでは再建に限界がありましたが、3Dプリンターで作った人工骨を用いれば切除前に近い状態まで復元することができます。また、事故によって頭蓋骨の一部が砕けてしまった場合でも、CT-BONEを使えばやがて元の状態に戻せるわけです。

これまでの治療法だと、「他の部分の骨を取ってきて欠けた部分を補う」というやり方だったため、肉体のどこかに犠牲を強いる結果になっていました。しかし、「やがて肉体に同化する人工骨」であれば、そのリスクがなくなるわけです。また、「まだ実証例はないものの、今までは“全体の切断”しか治療方法がなかった骨の病気に、“病巣部分のみを切除し、欠けた部分をCT-BONEで補う”というやり方で対処することも不可能ではないはず」と鈴木医学博士はおっしゃいました。「切断してしまう」のと「時間を経れば再生する」のでは、患者さんの精神的負担は大きく異なるはずです。

今回の取材を終えて玉川さんは「3Dプリンターで産業や医療はますます一変するのでしょう」という感想を抱いたといいます。