木曜日

玉川徹が“ニュースに潜む疑問”を独自に追及

2018.08.16放送

そもそも失われた30年は失われた40年になってしまうのか?

原作者・真山仁さんが小説版「ハゲタカ」に託した想い

◆番組で紹介した書籍
小説「新装版 ハゲタカ」上・下(上巻800円、下巻750円 ※共に税別)
小説「新装版 ハゲタカII」上・下(上巻690円、下巻750円 ※共に税別)
著作者/真山仁(まやま・じん)
出版社/講談社文庫
テレビ朝日で現在放映中の木曜ドラマ「ハゲタカ」。玉川徹さんは今回、その原作者である真山仁(まやま・じん)さんに、バブル崩壊後の日本経済について伺いました。

20世紀終盤が舞台の小説版「ハゲタカ」の冒頭部分には「失われた10年」という言葉が使われていました。しかし2018年の今、「失われた10年」はすでに「失われた30年」になっているのではないか、と玉川さんは考えます。それに賛同してくださった真山さんに、玉川さんは「なぜそうなろうとしていると思われますか?」と問いかけました。

「バブルがはじけた日本は、初めて『自分たちの組織に自分たち自身でメスを入れる』という必要にかられた。しかし、『人員と経費を削減する』という最も簡単なことしかしなかった。それが後の低迷を招いた原因ではないか」と真山さんはおっしゃいます。小説版「ハゲタカ」の中には「倒れるものは倒すべき。これは自然の摂理であり、弱肉強食があってこそ世界は健在である」という旨の理論が書かれています。これについて真山さんは「生き物と一緒で、起業にも“寿命”というものがある。命が果てようとしているものを無理やり延命させてしまうと、多くの人に不幸をもたらす結果となる」とおっしゃいました。

真山さんは日米の意識差の象徴として、航空会社「パンアメリカン」の例を出されました。それはかつてアメリカを代表するエアラインでしたが、その倒産を国は救いませんでした。「それは、『すでにパンナムの寿命は尽きている』とアメリカが認識していたからである。しかし日本だと、同様の企業に公的資金を注入して延命を図ったりする」と真山さんは指摘します。

日本人が潰せなかった「潰すべきもの」を潰しているのがハゲタカ

真山さんは更に、日本のエネルギー政策についても意見を述べられました。「福島原発事故を機に“脱原発”に舵を切った国の多いヨーロッパでは、再生可能エネルギーへの転換が進んでいる。しかし日本では、原発をやめることもできず、再生可能エネルギーへの転換も進んでいない。これは結果的に、新しい産業の芽を摘んでしまっていることになるのではないか?」

「日本人が潰せなかった『潰すべきもの』を潰しているのがハゲタカである」と真山さん。「日本企業の最大の弱点は『内側から変われない』ということなので、変革を実現するには『外圧』が必要。しかし同じ国の企業がそれをやると軋轢(あつれき)が生じやすくなるので、『外資』が行ったほうがスムースに事が運ぶ」。そして真山さんは「会社が腐らなければハゲタカはやって来ない。ハゲタカがやって来ないような状態を、企業が維持することが大切である」とおっしゃいました。

「なぜ日本は日本人の手で変えられなかったのでしょう?」という玉川さんの問いに、「国民性が一つの要因ではないか」と真山さん。アメリカ人の知人から「日本のサラリーマンは、何もしなくても毎月お金がもらえてうらやましい」と言われて愕然としたものの、「非常に的を射ている」とも感じてしまったそうです。「日本のサラリーマンは周囲との衝突などを嫌い、戦うべき時になっても戦わない。右肩上がりだった時期の幻影を見続け、ただ栄光の再来を待つばかり」と真山さんは語り、これが「昔も今も変わらない日本の姿」だというのです。

「失われた30年」を「失われた40年」にしないための方法とは?

「失われた30年」を「失われた40年」にしないための方法は何かあるのでしょうか? 小説の中で真山さんは、日光へ鷲(わし)を見に行った主人公に「あの鳥は、今の日本が失ってしまった何かを持っている気がする」と語らせていますが、その「失った何か」が何であるかは書いていません。

「それは何なのでしょう?」という玉川さんの問いに、真山さんは「読者がそれぞれ答えを考えてくれるのが理想。それはもしかしたら『落とし前』かもしれないし、『矜持(きょうじ)』かもしれない。あるいは『動かせる力』かもしれない」と述べた後で、「それぞれがやるべき事をやって、ダメになったら交代していくこと」とおっしゃいました。「退くべき時が来たら退く」という“トップの覚悟”は最低限必要である、というのです。

小説版「ハゲタカ」のバックボーンは「武士道的な精神」

小説版「ハゲタカ」のバックボーンとなっているのは「武士道的な精神」なのだそうです。作中に出てくる「まだ生きている」というセリフには、「死に場所を探すことも大切だが、生きるべき時にはちゃんと生きなければいけない。『まだ生きている』ということは『生きて、やるべきことがある』ということ。大変ではあっても『やり直す』ことができる。だから、やり直せよ」という、真山さんの想いがこめられているのだといいます。

今回の取材を終えた玉川さんは、「サラリーマン根性は、経営者や官僚・政治家にも。それが変わらなければ…」という感想を抱きました。それはつまり、「ここさえ変われば日本は復活できるはず!」という期待のあらわれなのです。