木曜日

玉川徹が“ニュースに潜む疑問”を独自に追及

2018.07.19放送

そもそもアルツハイマー病は克服できるかもしれないって本当?

アルツハイマー病の投薬治療の“障壁”となる「血液脳関門」とは?

◆今回お話を伺った研究者
片岡一則さん(公益財団法人 川崎市産業振興財団 ナノ医療イノベーションセンターiCONMセンター長/東京大学名誉教授)
脳が委縮するなどして、記憶力や判断能力が低下する認知症の一種「アルツハイマー病」。一般にはあまり知られていませんが、実は“死因”としても上位にある病気で、イギリスでは「第1位」、アメリカでは「第3位」、日本でも女性に限れば「第10位」なのだそうです。「アルツハイマー病に起因する誤嚥性肺炎」などもアルツハイマー病とみなされるため、このような結果になっているといいます。

そんな恐ろしいアルツハイマー病ですが、治療法の研究はなかなか進んでいないのが現状です。その最大の理由は「血液脳関門」と呼ばれる脳内の“壁”だといいます。脳の血管には「外部から来た物質を通しづらい」という特徴があって、だから「有効な薬剤を投与しても脳内全体に浸透しにくい」というのです。

ところが最近、この“壁”を突破する方法が見つかったといいます。玉川徹さんは、その開発者である「公益財団法人 川崎市産業振興財団 ナノ医療イノベーションセンターiCONM」の片岡一則(かたおか・かずのり)センター長にお話を伺いました。東京大学名誉教授でもある片岡センター長は「ナノテクノロジー研究の第一人者」として知られ、番組では過去に「ナノマシンを使ったがん治療」の取材をさせていただいています。

ブドウ糖を欲する特性を利用し、擬態させた薬剤を脳全体に浸透

現在は「ナノカプセルを使って脳内に薬剤を届ける」という、画期的なアルツハイマー病治療法を開発中だという片岡センター長。「活動を行うためにブドウ糖を吸収しようとする」という脳の特性を利用し、「薬剤入りのナノカプセルの表面をブドウ糖で覆って脳内に取り込ませる」という実験に、すでに成功しているのだそうです。このやり方で血液脳関門を通過させると、効能は「これまでの約60~100倍」にアップするといいます。

マウスによる実験では、「1回のナノカプセル投与で、アルツハイマー病の原因となる“アミロイドβ”を作る酵素が30%低下する」という結果が出たそうです。そう聞くと人間への実用化の進捗(しんちょく)状況が大いに気になりますが、残念ながら「現時点ではまだ具体的な期日などは明言できない」のだとか。しかし今後、より大きな動物で安全性の試験をし、それが順調に進めば「5年以内には人間を対象とした臨床試験に入れるかもしれない」と、片岡センター長はおっしゃいました。

今回の取材を終えて、玉川さんは「脳関門を突破さえできれば候補薬はあるので今後に期待」という感想を抱いたそうです。