児童福祉

【新規助成事業】蓼科高原で「里子のためのポニーキャンプ」

新たな体験活動事業はホースセラピー効果にも期待!

新型コロナウィルス感染症の影響で、児童養護施設の児童のための海外生活体験の旅inシアトルや農村ホームステイ体験の旅in遠野が実施できなくなっているため、新しい体験活動事業への助成を検討してきましたが、2023年度から長野県の蓼科高原で、里親家庭で生活する児童のためのポニーキャンプを実施することになりました。

ポニーの世話や乗馬体験をすることで、ポニーのセラピー効果で子どもたちが安心して、また自信を持って楽しく過ごすことができるようになればと期待しました。事業を実施する公益財団法人ハーモニィセンターは、45年以上、蓼科のポニー牧場で5歳から中学生までのポニーキャンプと家族で参加できるファミリーキャンプなどを実施しています。今回は里子が対象となる初めての試みで、発達障害やトラウマを持つ可能性のある児童が参加するということで、慎重を期するためファミリーキャンプとして開催することとし、さらに、スタッフ向けに事前セミナーを実施することにしました。

蓼科高原で「里子のためのポニーキャンプ」

里親制度と里子への対応について学ぶ! 事前セミナー実施

6月15日、セミナー当日は、ポニーキャンプを実施する現地の職員とカウンセラーと呼ばれるボランティアの大学生、そして財団の職員の方も参加して、代々木の青少年センターにある財団でリアルとオンラインとのデュアル開催としました。まずハーモニイセンターの村松真哉代表理事、金山竜也事務局長の挨拶の後、関東甲信越静里親協議会の叶会長に事業への期待などをお話しいただきました。その後、テレビ朝日福祉文化事業団の木下智佳子イベント担当部長から里親制度と社会的養護の現状などについて説明し、さらに公認心理士の柏崎朗子氏から里子への対応についての説明を行いました。柏崎氏は、褒めて伸ばそうとすると子どもたちは期待に応えなければいけないと思い無理してしまう場合がある、痛いのに痛いと言えないことがあることや、他人との距離感の取り方がうまくいかない児童がいること、また距離感が近いからと言って、心を開いているわけではないことなど説明しました。

カウンセラーの学生たちは初めて聞く話に驚きつつも、いろいろ質問してくれました。そして、「心配ごとはあるけれど、こちらも委縮しないで、子どもたちが子どもたちらしく伸び伸びできるように、熱い体験ができるキャンプにしたい」と話してくれました。

学生ボランティアのカウンセラーと、爽やかな高原で初めての乗馬体験!

7月21日(金)から23日(日)まで、蓼科ポニー牧場(長野県茅野市)で開催された里子のためのポニーキャンプ「ファミリーポニーキャンプ」には、7家族21名が参加しました。

学生ボランティアのカウンセラーと、爽やかな高原で初めての乗馬体験!

1日目

夕方6時、ハーモニィセンターの引率スタッフが待つ新宿駅に5組の家族が集合、JR特急あずさに乗車するとすぐに車内には旅の始まりにはしゃぐ子どもたちの声が聞こえてきました。到着した茅野駅で下車するとあいにくの土砂降りの中、学生カウンセラーが出迎えてくれ送迎バスで森の中にある蓼科ポニー牧場へ。現地集合の2家族と合流し、早々に各部屋に分かれ就寝しました。

学生カウンセラーたちはその後ミーティングを行い、子どもたちの様子など情報交換しました。学生カウンセラーの役割は、プログラムや生活面、遊びなどキャンプ期間中の家族フォローです。家族ごとに担当カウンセラーが配置され班がつくられました。

2日目

昨夜の雨はすっかり上がり快晴です。朝食の後、クラブハウスの前で開村式がおこなわれ、牧場スタッフや各班担当カウンセラーの紹介がありました。そしていよいよ、ポニーとの触れ合い、まずは馬小屋の掃除です。今日は一班(家族)一馬房担当です。掃除道具は、スコップ(大型シャベル)、網カゴ、一輪車など。スコップで敷材のおがくずをすくってカゴで振るい、ボロ(馬糞)を一輪車へ積み込み、溜まったら軽トラへ運ぶという作業を繰り返します。予想以上に大変で、親子で汗だくになりました。でも、最後は綺麗になった馬房で記念撮影、達成感を得ることができたようです。牧場には、ポニーからサラブレッドまで30頭以上いて、5人ほどの職員が日々世話をしていると聞き、皆スタッフの大変さに思いを馳せていました。ちなみに、「ポニー」とは、特定の品種ではなく、肩までの高さが147cm以下の馬のことです。

馬小屋の掃除
馬小屋の掃除

掃除の後は、1回目のポ二トレ=乗馬です。大人と子どもに分かれ、それぞれ乗るポニーのところへ集合、馬の身支度を整えるため手入れと馬装をします。カウンセラーから、馬の健康チェックも兼ねているので必ず素手で行うことなど、作業のコツと何故必要で大切なのかを教えてもらいながら、蹄の裏堀り、ブラッシング、鞍や手綱などの馬具をセットしました。

いよいよ乗馬の時間です。屋内馬場で、乗馬用ヘルメットと長靴、手袋をして馬にまたがります。子どもはひょいっと乗れますが、大人は中々足が上がらず四苦八苦していました。牧場スタッフから姿勢、目線、綱の持ち方、緊張は馬に伝わるので堂々とするようにと教えてもらい、まずは、なみあし(常歩)からスタートです。歩いて、止まって、曲がって。子どもたちは、初めての乗馬で高い視野になっても怖がる様子もなく、手綱を動かし上手にポニーを操っています。カウンセラーが引き馬してくれていることもあり、安心して楽しんでいました。

乗馬の時間
乗馬の時間

乗馬の後は、乗せてくれたポニーの手入れです。鞍や馬具を外すと汗の跡があり、馬は汗が出る事をカウンセラーが教えてくれました。水で絞ったタオルを使って逆毛方向に身体全体を拭き、蹄に詰まった藁や土などを掻きだし、ブラッシングをしました。後ろ足の裏掘りは危険にも見えますが、こうした馬の手入れをすることで馬と仲良くなり、信頼関係ができるようになるということで、子どもたちも馬と会話するように一生懸命手入れをしていました。

馬の手入れから外乗りまで、自信と達成感、責任感も育まれたようです。

馬の手入れから外乗りまで、自信と達成感、責任感も育まれたようです。

子どもたちは牧場スタッフが前足の爪を削る様子をじっと見つめていました。

子どもたちは牧場スタッフが前足の爪を削る様子をじっと見つめていました。

馬の手入れから池の周りの外乗りまで、自信と達成感、責任感も育まれた3日間!

馬の手入れから池の周りの外乗りまで、自信と達成感、責任感も育まれた3日間!

竜神池の周囲を5頭のポニーが列になって歩く。2回目で外乗体験はちょっぴり怖いが気持ち良い。

昼食後の2回目のポニトレは、引き馬で外乗体験をしました。

昼食後の2回目のポニトレは、引き馬で外乗体験をしました。ポニー牧場から程近い竜神池まで往復約3キロ、爽やかな高原の森の中や八ヶ岳を眺める池の周りを途中で交代しながら列になって歩きます。砂利道や坂道を歩くため屋内馬場よりも歩調も速く揺れも大きく感じられ、落馬するのではと少し怖かったかもしれませんが、カウンセラーの笑顔のフォローで上手に乗りこなし、子どもたちは自信を持つことができたようです。また列の後ろでは子どもたちのお掃除隊が率先して馬糞を片づけてくれて、責任感も生まれたようにみえました。

夕方は餌やりの時間です。

夕方は餌やりの時間です。子どもたちは競うように餌の入ったバケツをつかみ、馬房に運びました。餌の次は、飲み水です。馬小屋の中にある大きな水入れが満杯になるまで、何度も往復して重い水を運びました。飲み水の次は、おやつのニンジンです。乗馬で乗せてくれたポニーに感謝を込めてあげる親子もいれば、掃除を担当した部屋のポニーにあげる親子もいました。ニンジンを馬の口に持っていくと、大きな口と大きな歯で齧ります。あまりの迫力に怖くなってしまう子もいたようです。

夕食の後は、夜のお楽しみタイム。カウンセラーが、馬のクッキー作りと馬の毛のストラップ作り、そして外のテラスで焚火でのバームクーヘンを作りと3つのワークショップを準備してくれました。子どもとお父さんたちはクッキーとバームクーヘンの間を行ったり来たり、お母さんたちはストラップ作りに集中し楽しい時間を過ごしていました。

馬のタテガミで作ったストラップは良い記念になりました。

馬のタテガミで作ったストラップは良い記念になりました。

3日目

キャンプ最終日、この日も快晴です。まず馬房の掃除、馬の手入れと馬装をしてから3回目、最後のポニトレです。前日習った常歩に続いて、5本のポールを避けてクネクネ進むスラロームや半巻きやはやあし(速足)まで体験しました。子どもたちは堂々と騎乗し、親がカメラを向けると手を振る余裕のある子もいて、キャンプ最後の乗馬を楽しんでいました。

そして最後の昼食。食堂にはカウンセラーのギターで「いただきますの歌」や「ごちそうさまの歌」の皆の合唱が響き渡り、おかわりに並ぶ子どもたちの列が続きました。

こうして2泊3日と短いながらも充実したキャンプは閉村式をもって終了となりました。

3回目のポニトレ。半巻きとよばれるUターン、子どもたちは上手に手綱を操っていました。

3回目のポニトレ。半巻きとよばれるUターン、子どもたちは上手に手綱を操っていました。

ポニトレの合間、馬場の横にある池では小さい子どもたちが遊んでいました。

ポニトレの合間、馬場の横にある池では小さい子どもたちが遊んでいました。

男の子たちは森の中の少しのスペースでも学生カウンセラーと野球をしていました。

男の子たちは森の中の少しのスペースでも学生カウンセラーと野球をしていました。

初日に「汚いのダメ。ヤダ。」とふてくされていた子どもも、いつの間にか率先して掃除に参加するようになっていたり、動物が苦手とこっそり教えてくれた親御さんも、キャンプの終わりには、「馬に触れるようになりました!」とわざわざ伝えに来てくれたり、また軽い障がいのある子どももポニーに乗ることが出来て、里親さんも子どもも自信を持てたようです。子どもたちが家では見せない笑顔だったいう里親さんもいて、ホースセラピーの効果も感じることができました。初めてのポニーキャンプは里親子にとって笑顔あふれる実りあるキャンプになりました。

2023年7月22日ファミリーキャンプ
日時

2023年7月21日(金)~23日(日)

場所

蓼科ポニー牧場(長野県茅野市)

参加者

里親家庭 7家族 大人10名、子ども11名(小学生1年~6年)

主催

(公財)ハーモニイセンター

助成

テレビ朝日福祉文化事業団

事前セミナー

日時

2023年6月5日(月) 18時~20時

場所

ハーモニイセンター事務所、国立オリンピック記念青少年総合センター内(東京都渋谷区)

方法

リアルとオンライン