緊急企画! スイッチが入る瞬間

第7回 でんでん(菱本進・役)さん2014年2月20日

みんなの顔をずーっと見てると、似顔絵を描きたくなるんです

――でんでんさんはどんな瞬間に、どんな本気スイッチが入りますか? 「お芝居に関するスイッチっていうと…、僕の場合は舞台だと、本番に向かってエキサイトしてる間はスイッチが入らないんですよ。でも、出番を待ってるうちに、その高揚感がちょっとクールダウンしてくる。そうすると、スイッチがパチッと入って、心が穏やかになり、スーッと舞台に出て行けるんですよね。ドラマや映画の場合は、本番の合図となるカチンコの音ですね。あの音を聞くと、自然にスイッチをオンにしてもらえるんですよ」 ――仕事スイッチは本番ギリギリのタイミングで入れる、ということですね。 「僕はその方がいいみたいですね。だって、ずっと家を出た時からスイッチを入れて、役になりきってたら、クタクタになっちゃうでしょ(笑)? それをやり続けてたら、体が持たない! 以前、出番もセリフもとっても多い仕事をさせていただいた時、そこに気づいたんですよ。本番の前はぼんやりしてた方が、その後に瞬発力みたいなものがパンッと出て、わりと効果があるなって。あまり長い間、力み過ぎてもね…ということってあるじゃないですか。まぁ、それが僕のスイッチの入れ方なんですけどね。それはおいといて」
――えっ、おいとくんですか(笑)!? 「仕事の話ばっかりしてても、つまらないでしょ(笑)? というわけで、もうひとつの僕のスイッチなんですけどね」 ――おっ! そのスイッチとは何でしょう? 「僕はね、作品に入る際に行われる顔合わせの時もそうなんだけど、ずーっとみんなの顔を見てると、似顔絵を描きたくなるんです。『あ、この人を描いてみたいな』とか、『この人、描きづらそうだけど、意外と描けるかもしれないな』とか、いろんな思いが湧き上がってきて。『手始めに誰にしようかな』というスイッチが入るんです。今回もたくさんのキャストやスタッフの似顔絵を描いてるんですよ。あ、そうそう、この取材のために用意したわけじゃないんだけど…(と、スマートフォンに保存してある似顔絵データを次々と見せながら、描いた時のポイントを説明してくれるでんでんさん)」 ――貴重なものを見せていただき、ありがとうございます! さて、話は変わって、番組についてですが…。 「あ、ごめんなさい。話を聞いてないわけじゃないんですけど、今回いちばん僕が気に入ってる似顔絵がこれね(と、番組プロデューサーの似顔絵を見せてくれる)。(嬉しそうに)難しいだろうなと思ったんだけど、意外とうまく描けた例がこれなんですよ。以上です(笑)!」

今回はドキュメンタリーっぽく見えればいいな、と思いながら現場に立ってます

――では(笑)、今回演じてらっしゃる菱本進についてお聞かせいただけますか? 「僕は菱本を演じるにあたって、普通のおじさんに見えつつも、目の奥に何かを隠し持ってるように…つまり、常に目の奥で何かを考えてるように見えればいいな、と思ったんですよ。僕は本物の刑事さんや元刑事さんの目を見るたび、『実際に見てるところと、本当に見えているところが違うね』と感じるんですよね。そういう目を表現できればいいな、と。それに加えて、“でんでんという役者が演じてる”んじゃなくて、“そこに菱本進という刑事がいる”ような感じにできればいいな、と。要するに、ドキュメンタリーっぽく見えればいいな、と思ったんですよ。じゃ、そういう時のスイッチの入れ方はどうしたらいいのか…と考えたら、意図的にバチッと入れるんじゃなく、トイレの人感センサーライトみたいに現場に入ったらいつの間にか、スーッと菱本になれていれば一番いいな、と。とはいえ、ドラマティックなシーンが多いドラマですからね。登場人物は普通よりもエキサイティングしている。実は、そういう時の高揚の仕方とかいうのが難しくてね。…とまぁ、そういうことを考えながら撮影に臨んでますので、視聴者の皆さんには『それだけ考えてやってて、この程度か』なんて見方をしてもらえれば結構です(笑)」 ――大ベテランの俳優さんが何をおっしゃいますやら! 「(笑)。実は、共演者の皆さんもすごく考えてらっしゃるんですよ。今回は僕と年齢が同じくらいの共演者の方々が多いんだけど、取り組み方にはいろいろあってね。普通は稽古の仕方とか裏作業について同業者とはあまり話したりしないと思うんです。でも、今回のメンバーは良い方ばかりだから、皆さん教えてくれたりするんですよ。だから、皆さんいろいろ考えて、こういうお芝居になってるんだなって、僕も撮影をしながら、あるいはドラマを観ながら楽しんでるんです。視聴者の皆さんにもぜひ、そうやって出来上がってる各キャラクターと、彼らの掛け合いを楽しんでいただきたいですね」

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