● ● 6月24日
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【放送内容】
今回は、各界の著名人の皆さん「テレビについて」のご意見や提言をお聞きする
ロングインタビューをお送りします。
今回は、弁護士:田中喜代重氏。
田中喜代重氏プロフィール: |
1952年生まれ。検察官退官後、弁護士開業。 |
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民事、商事一般、刑事事件を専門とする。 |
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現在、テレビにコメンテーターとしても多数出演。 |
Q. |
ご本人が「見る側」から「出る側」に。テレビの見方は変わりましたか? |
A. |
見ている者からすれば、画面から出てくる情報は「精度が高い」と思っている。
表に出たものが「真実」だと認識する傾向がある。
しかし、制作者サイドからすれば、常に試行錯誤しながら情報を整理し、 放送している。吟味はすれども「絶対ではない(100%確実ではない)」
部分がある。
テレビが放送したからといって「全てが事実」と思うことは、危険だと思う。 テレビ側は、「誰々によると…」とか「…と書いてあった」等のコメントで
断定をさけた表現を使うことがある。
しかし、見る側としては、映像と音声による情報は、インパクトを持って 受け取ってしまう。その点を考えた作り手側の工夫が必要になってくるのでは?
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*スタジオで・・・・・・
制作側には、厳しい意見です。
この事については、我々も常に様々な状況において常に正確な情報 (100%に近い報道)を伝えるよう努力は続けています。
局側として「正確な伝聞情報などをいれる」といった工夫もしています。
視聴者の方たちもそれぞれの環境の中で、報道にたいする話し合いなど、 メディアリテラシーの充実を図って頂くことをお願いしたい。
しかし、われわれも色々な問題についての勉強を続けていくべきであり、続けていきたいと思っています。
(今村 談)
メディアリテラシー: |
マスメディアに含まれる様々な情報を理解し読み解く力を養うこと。 |
Q. |
事件報道などの場合「被害者報道」「加害者報道」いずれにしても一般の人のプライバシーを侵害している。
この点については、現場で日々考えるところではあるのですが? |
A. |
プライバシーは、憲法で守られるべきものではあるが、報道することもある意味、憲法上の権利であり、民主主義を健全に生かすための大きな要素。
処方箋があり、ズバッと解決するものではないので、その都度、解決していくしかない問題だと思う。
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*スタジオで・・・・・
6月8日金曜日に起きた「小学校乱入殺傷事件」の報道について視聴者の方から多くのご意見を頂きました。(一部紹介)
- 校庭で怯えている生徒に向かって「刺されそうになったの?」と
若いインタビュアーが聞いていました。
子供に聞く言葉ではないですよ。(30歳 女性)
- 私は、精神科医です。
小学生にマイクを向けて、状況をたずねていたが、
あまりにも非常識、不謹慎な行為です。
マスコミであれば「心的外傷後ストレス障害」について十分承知のはずです。
(55歳 男性)
このようなご意見、要望を事件発生当日、44件いただきました。子供たちに対するインタビューは、事件発生当初、保護者の方々の了承を得ておこないました。
唯一の目撃者であったためです。
しかし、その後、社内での検討の結果、インタビューの放映は中止しております。
〔6月8日金曜日:小学校乱入殺傷事件〕
Q. |
事件直後の子供達のインタビューについて。
幼気な子供達は、被害者でありながら、唯一の目撃者である。
正確な報道をする上で彼らにインタビューをすべきか、否か、検討された。今回の場合は、親御さんの了解のもとでインタビューを行い、報道をした。
その後、やはり多くの方より「いかなるものか?」というご意見を頂きました。
どう、思われますか?
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A. |
.基本的にはするべきではないと思います。
しかし、今回のような場合は「目撃者である」という点、事件の惨殺さをしらしめるという意味では報道の価値はあると思う。
しかし、インタビューの取り方などに、もう少し配慮があった方が良かったのでは?
「寄ってたかって…」そのような印象を受けた。
親の了解を得たとは言え、心に傷を受けたのは子供達。
PTSD等の事も考え、もっと配慮すべきだと思う。
今回の件については、いろいろと反省し、あとで検証すべきだと思う。
PTSD: |
心的外傷後ストレス障害
犯罪や自然災害等で強い衝撃を受けた時、起きる「精神的な障害」 |
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Q. |
精神疾患を持つ、あるいは以前にそういう経歴がある人が犯罪を犯した場合の「実名報道」について。どうお考えですか? |
A. |
精神障害といっても、すべてを一緒にしてはいけない。
我々は「触法精神障害」といって、一般の精神障害の人と区別している。
彼らの問題の前に「実名報道」について。
弁護士の立場からいえば、「実名報道」はすべきではない。という声が高い。
しかし、「実名報道」についていろいろな要素がある。
○実名なしによる「でっちあげ」の防止
○冤罪の防止
○防衛(自らの身を守るため)
・・・など
このような事を踏まえて、現在時点では、実名報道もやむお得ないかなと思う。
「触法精神障害者」については
一度、罪を犯して治療し、社会に戻る際のハードルがなさ過ぎる。
日本は、この事についてのハードもソフトもマンパワーもなさ過ぎる。
この事が問題だと思う。
「触法精神障害者」の実名報道といっても一概には言えない。
彼らが侵した犯罪の大きさにもよると思う。
社会復帰をした時、どれだけの危険を孕んでいるかによる。
ケースバイケース。
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Q. |
報道被害という言葉が大きな意味を持つようになり、
政府の動きも出てきているのですが? |
A. |
政府の考えるやり方は馴染まないと思う。
どこかで線の引ける話ではないと思う。
*やはり、メディアがそれぞれ自分たちのモラルを決める話で公が介入するのはおかしいと思う。その為に民放連などの団体で話し合ったり、BRC等の機関を作って活動している。(今村 談)
(表現の自由と知る権利)
民主主義国家の中で、国民が健全に暮らすためには、情報を得なければならない。
それがなければ、考えることも表現をすることもできない。
そこで、国民にとって「知る権利・情報を得る権利」が重要。
「報道の自由」は、その「知る権利・情報を得る権利」を補足するための権利といわれている。
だから、表面だけを流すのでなく、背景にある事情やその人間を通り巻く地域の様子などを取材し、報道してこそ「報道の自由・報道の権利」となるのでしょう。
そうしなくては何の意味もない。
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Q. |
これからのテレビについて望むことは? |
A. |
見ていて、毒もなく薬にもならないような「つまらない番組」はあまりほしくない。
いろいろな意味で各局キャラクターをもってほしい。
自分達の信念の中で番組を作っていってほしい。
青少年に対して害があるか否かはあるにしても臆することなく、制作してほしい。
視聴率戦争の中で行き過ぎやりすぎのないように配慮しながら、そこに問題が生じた場合は、その都度、考えてもらいたいし、間違いがあれば、謙虚な態度で正してほしい。
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*スタジオで・・・
新しい形の事件、事故がおきるようになってきた。
報道する側でも、従来の報道の枠で計りきれないことが増えてきた。
今回の殺傷事件をきっかけに、我々は、新しい報道のやり方を考えるために、社外の識者の方と社内で検討会を始めている。
1998年1月、帝京大学ラグビー部員らによる女性暴行事件で逮捕され起訴猶予処分となった男性とその家族が、「犯行をを否認していたのに容疑を認めた都報道され、実名や顔写真をワイドショーで放送されて、名誉を傷つけられた」として
テレビ朝日に損害賠償を求めた裁判について
テレビ朝日は
「放送内容は警察が公式に発表した内容に沿うものであって、真実であるか、または真実であると信ずるにつき相当の理由に認められるから、違法性ないし責任が阻却されると主張し、被逮捕者の実名、顔写真の報道についても許容される範囲内のものであった」と主張してまいりました。
これに対して、東京地方裁判所は、6月11日、原告の請求を棄却しました。
テレビ朝日としては
この裁判は、当社の主張に沿ったものであり、適切なものであると考えております。
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