● ● ● ● 11月2日 ● ● ● ●

司会 吉澤 一彦 (テレビ朝日アナウンサー)
本間 智恵 (テレビ朝日アナウンサー)
ゲスト 酒井 陽寿(技術局 美術制作センター CG担当部長)
加藤 喬(技術局 美術制作センター)

【放送内容】 テレビCG制作の舞台裏~「男装の麗人」メイキング~
旧満州を舞台に数奇な運命にもてあそばれた「川島芳子」の生涯を描くスペシャルドラマ
「男装の麗人」(年内放送)には、テレビ朝日が誇る最新のCG(コンピュータグラフィックス)技術が駆使されています。
今回は「紫禁城」再現のプロセスなど、CG制作の舞台裏を紹介します。



スタジオ1

○酒井陽寿(技術局 美術制作センター CG担当部長)の話
「CG(コンピュータグラフィックス)が果たす役割は、
番組に味付けをして視聴者をより楽しませ、満足感を与えること。
例えばニュース番組ではCGを使ってよりわかりやすく見せたり、
ドラマでは不可能な表現でも違和感なく自然に伝えたり、
バラエティ番組ではCGで意外性や驚きを伝えたり、
スポーツ番組では知りたい結果を早くわかりやすく伝えたりする」



VTR1

07年放送のテレビ朝日開局50周年記念ドラマ「点と線」。
松本清張不朽の名作の完全ドラマ化は、大きな話題を呼び、
文化庁芸術祭ドラマ部門大賞を受賞しました。
その原動力の一つに、テレビ朝日の最新CG技術があります。
昭和30年代の東京駅のホームをなど、映像化不可能と言われた作品の世界を完全に再現しました。
そして今年、注目されるのは、戦前戦中の中国を舞台に歴史の流れに翻弄された、
川島芳子の生涯を描くスペシャルドラマ「男装の麗人」(年内放送予定)です。
この作品でも、テレビ朝日が誇る最新のCG技術が大活躍。
清朝の王女として生まれながら、日本人を名乗り、
混乱の中国に活躍した男装の麗人、川島芳子(よしこ)。
ドラマは、昭和初頭、時代に翻弄された一人の女性の生涯を壮大なスケールで描きます。
このドラマでは、戦前の上海の様子など、CGによる画作りが重要なカギとなります。

○1937年当時の上海のシーン

ドラマで放送される「1937年当時の上海の街」について。
現在の上海の風景を撮影してきましたが、
ビルなどが当時と随分異なり、そのままでは使えません。
そこで、日本に戻り、当時の資料を参考にして、現在のビルを消し、
逆に当時のビルなどを背景に描き、重ね合わせたのです。
次に空を合成します。空の色合いを暗くし、稲妻を足して、
風雲急を告げる「1937年の上海」が、完成しました。

○監獄の外に群がる人と餅の向こうで裁判が行われているシーンを繋げる

別々に撮影した2つのシーンをCGで繋ぎ、あたかもワンシーンのように繋ぐ技術。
この場合、監獄の前に、人々が詰め寄るシーン。塀の向こうは誰もいません。
これに、別撮影した塀の中で行われている裁判のシーンをCG合成します。
すると、監獄の前に、大勢の人々が集まる中、塀の中では、裁判が進行しています。
まるで、ワンカットで撮影されたように見えるため、緊張感が生まれます。

○紫禁城のシーン

北京の「紫禁城」の中で、遊んでいる主人公を、日本に連れ去られるというシーン。
これは、日本と中国で別々に撮影されました。
まず、上海に常設されている映画やドラマ用の「紫禁城」のオープンセット。
横に長いため、3枚のカットに分けて撮影しました。
これをコンピュータに取り込んで合成します。
さらに、本物の「紫禁城」の周囲には、山はないので、
セットの後ろに見える山を、空と同じ色で消していきます。
続いて、演出的に必要な「紫禁城」の中の塀ですが、
これは、上海で撮ってきたスチール画像にCGで塀を描き、背景に合成するのです。
さらに空を合成します。これで、ようやく「紫禁城」が完成しました。
こうして出来た「紫禁城」に、今度は、日本で撮影した人物を合成していきます。
黄色い布を持った人は、ひとりを使って、なんと155人にも増やします。
そのため、撮影を様々な角度から行い、まるで複数の人間がいるように、 人物パターンを用意しました。
人物の合成は、コンピュータに画像を取り込み、「キー」と呼ばれる白黒の画像を作ることがポイントとなります。
連れ去られる主人公と2人の人間の、計3人の場面では、一人ひとりの動きが違うため、
1秒を30コマに分けて3人分別々に作業を行います。
僅か数秒の動きに、100コマ近くの画像を作るのです。
さらに、3人の影も同じ作業を繰り返していきます。
これだけの手間をかけて、3人の合成用の素材が出来上がりました。
これを、いよいよ一人ずつ、背景に合成していきます。
布を持つ人間は、構図を変え、また、同じ構図でも、
光の当たり方や布のゆれ具合などの変化をつけ、
撮影のタイミングを変えたものを合成していきます。
僅か3秒のシーンに1週間以上の手間暇かかる作業の末、ついに「紫禁城」のシーンが完成しました。
演出の藤田明二(めいじ)監督が、合成したシーンをチェックします。
苦労して作った100近いカットは、演出のイメージに合うのでしょうか。
美術制作センターの担当者は、真剣そのもの。そして無事、監督のOKが出ました。



スタジオ2

○酒井陽寿(技術局 美術制作センター CG担当部長)の話
CG制作のプロセスについては、まず撮影の数週間前に台本に沿って監督とCGの打合せを行い、
CG制作のカット数を把握。必ず撮影現場に、立会います。
追加でCG制作の発注があることも多いので。収録後、CG制作を開始する」



VTR2

○かぼちゃに止まっているハエのシーン

何気なく見逃すほどリアルなハエのシーンは、どのように作られたのでしょうか。
ハエの基本的な3Dデータは既存のCGデータ集からとりました。
これから先が腕の見せ所。昆虫図鑑などを参考に、
目や胴体、羽などの質感を出すための素材を作ります。
どれだけ本物に迫れるか、CGクリエーターの技術が発揮されるのです。
いろいろなデータを合成して、質感の素材作りを行います。
いわば、質感は絵の具のようなもの。こうして作った素材を今度は、
一つ一つのパーツに色付けしていくと、段々、リアルな3Dのハエが完成していきます。
続いては・・・!CGにおける「骨」(ボーン*動かない部分)と
関節の情報を入力するとハエは、まるで生き物のように屈伸を始めました。
さらに前足をすり合わせる、ハエの独特なしぐさは、
1コマ1コマ動きをつけていくことで、リアリティを出しました。

○空から紙切れが降ってくるシーン

まず、本物の紙を上から落下させて撮影します。
次に、紙の動きをCGで作り、先ほどの映像と合成するのです。
こうすることで、紙切れが演出の狙い通りに空に舞うように見えます。
ドラマでも大きなメッセージが込められた重要なシーンとなります。



スタジオ3

○ 酒井陽寿(技術局 美術制作センター CG担当部長)の話
「紙が降ってくるシーンでは向こうから手前に紙が降ってくる。
これを実写で撮影するとファンで向こうから風を送る必要がある。
それでは、ファンが画面に映りこんでしまうため、CGで制作する必要があった」

※ドラマスペシャル「男装の麗人~川島芳子の生涯~」は年内放送

このあと、スタジオでは「ドラゴンデフュージョン」という、CGをリアルタイムで、
手で触れることを可能にした最新CGシステムを紹介。

○加藤 喬(技術局 美術制作センター)の話
「“ドラゴンデフュージョン”システムはフランスTOTAL-IMMERSION社と株式会社NTI、
テレビ朝日の3社による共同開発により完成したものでテレビ放送に使用するのは世界で初めての試みでした。
このシステムにより今後、人とCGがより係わり合いがもてる世界が広がっていくと考えています。」

○酒井陽寿(技術局 美術制作センター CG担当部長)の話
「今後、CGの技術がさらに進歩してリアルタイムでCG合成が可能になっていくと思う。」



テレビ朝日の『出前授業』について

10月3日にテレビ朝日の「出前授業」が横浜にある「放送ライブラリー」で初めて開催されました。
「放送ライブラリー」は、一般の方が利用できる
テレビ・ラジオの番組やCMアーカイブ施設として、2000年に開館しました。
今回、「出前授業」に参加したのは、川崎市立戸手小学校5年生の80名。
出前授業の講師から「ニュース番組は200人以上の人で作られている」などの説明に、
驚いたり、質問が出たりと、熱心に聞いていました。
講義の後は、ライブラリー内のニューススタジオへ移動し、
アナウンサー、レポーター、ディレクターなど「ニュース番組のお仕事」を体験しました。





《第494回放送番組審議会からの報告》

10月17日に開催されました、第494回放送番組審議会では 「スーパーJチャンネル」について審議されました。
「スーパーJチャンネル」は月曜から金曜の夕方4時53分から、毎日のニュースをわかりやすく、
気になる生活情報をとことん追求するニュース番組です。次のような意見が出ました。

他局に比べ硬いニュースが多く、きちっとしているので見応えがある。それが視聴率の高さに反映しているのではないか。
18時30分頃からは集中しなくてもいい話題で,街の景色や人が生活する表情が映るとホッと出来て嬉しい。
あまり過剰な演出はいらない。
裁判員制度導入に伴い供述報道というのが一番注目される点だが、報道するにあたり、
被疑者に直接取材していないということを肝に銘じて欲しい。


番組ではテレビをご覧の皆様からのご意見ご要望を募集しています。
「テレビ朝日の番組や、 テレビ全般に対するご意見やご要望」 「くわしく知りたいテレビの仕事」など 何でも結 構です。

あて先は、〒106-8001 テレビ朝日「はい!テレビ朝日です」係
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次回の放送は、11日16日(日)の予定です。