スタジオ1
吉澤)
報道局映像センターというところはどういう仕事をしているのですか。
加藤)
文字通りニュースを作る工場と考えていただいていいと思います。
部門は大きく四つに分かれています。
事件発生したときに真っ先に現場へ駆けつけるカメラマン、
またある時は現場から生中継をするクルー、その映像が本社へ届き、
視聴者の方々に分かりやすくお伝えする編集という部門。
さらに編集したテープを元にニュース番組を放送するスタジオを担当する部門、
そして放送したテープを保存して管理する部門、
この四つで成り立っています。
VTR1
朝9時。報道フロアの一角に報道各部署の担当者が集まり、「ニュース編成会議」が
始まります。各担当者がどんな情報があるのか、それぞれ報告しあい、
それをもとに、ニュース編成デスクがその日取り上げるニュースを選んでいきます。
その中に、映像センター取材部・工藤デスクの姿がありました。
映像センターに戻った工藤デスクは、会議を受けて、早速、取材カメラの手配。
デスク業務は、この段取りが重要な仕事となります。一日の取材平均はおよそ100件。
これに限られた取材チームを割振っていくのですから、やりくりが大変。
デスクの腕の見せどころです。決まった順から、カメラマンに最新情報を伝え、
指示を与えます。また、この日は、「真夏日」の予報が出ており、 暑さを象徴するような映像を支局に取材依頼しました。
昼のニュースが終わり、12時になると、今度は、午後に向けたニュース編成会議。
ここで、江東区の事件の続報をメインに伝えることに決まりました。
容疑者が、深川署から東京地検に移送される場面を撮るため、
カメラ取材チーム3班の投入を決めました。現場の地図を元に、カメラの配置を決め、
遠く離れた場所から、望遠レンズを使って、その瞬間を狙うことにしました。
「スーパーJチャンネル」もトップ項目に、この事件を取り上げ、現場からの生中継が
決まりました。
しかし、中継スタッフのやりくりがつきません。中継デスクは思案中。
夜勤予定のスタッフを急遽、早めに出勤させ、どうやら間に合いそうです。
一方、もう一つのニュース項目、真夏日の風物について、富山支局から
若アユ遡上の映像が送られて来ました。
使えそうな映像は、自ら番組担当デスクに足を運んで提案する工藤デスク。
映像センターには、中継の映像や支局から送られてくる映像が一目でわかる、
マルチモニターが設置されています。鮎の映像も、富山から送られてきました。
深川署からの映像も入ってきました。狙い通り、容疑者の顔を捉えることができそうと
思った瞬間、周囲はブルーシートで覆われてしまいました。
夕方のニュースが終われば、つづいて、夜のニュースに向けた編成会議。
会議が終われば、工藤さん、夜の泊まりデスクと引継ぎです。
映像センターは24時間、眠らない。
スタジオ2
吉澤)
何百とある取材項目、どこに行かせるかというセレクトは大変ですね。
加藤)
この現場はカメラを2台出そう、3台出そうということが、取材デスクの技量の
見せ所だと思いますね。
取材デスクは映像の責任者であると、彼の采配一つによって撮れる映像、
撮れない映像があることも。現場を知っている人間でないと、
カメラマンから「ここ、どうしましょう?」と聞かれても答えられませんよね。
また、このカメラマンはこういう現場が得意とか、そういうのを理解し、
考えてやらないと、カメラマンも面白くない。結果、そのカメラマンが
良い映像を撮ってくれたときが、取材デスクの醍醐味だと思いますね。
VTR2
局の中には、報道カメラマンたちの控室があります。
ここで、機材を準備し、それぞれ、取材に向かうのです。しかし、堀田カメラマン、
今日は、「突発待機」です。
突然の事件、事故に対応するため、待機し連絡を待ちます。
デスクからの電話を受けて現場へ急行。現場に近くなると、車を降りて走りだす堀田さん。
取材は脱税容疑で、ある団体の家宅捜索。現場では、まず、撮影ポジションの確保。
しかし捜査員は、すでにビルの中に入っている様子。捜査状況を確認しながらの撮影。
現場に到着してから4時間が経ったころ、やっと捜査員たちが押収した証拠を運びだす
シーンの撮影に成功。
政治の中心国会周辺でも、万が一に備えるスタッフがいました。
午後3時過ぎ、取材デスクから厚生労働省へ向かえとの指示がありました。
厚生労働省で、急遽、記者会見が行なわれるというのです。
カメラマン岡田さん、会場へ急ぎます。今日の記者会見は、医療器具を使いまわしに対し、
厚生労働省が全国調査に乗り出すというもの。夕方のニュースの時間が近づいています。
しかし、まだ医療器具の撮影が残っています。最後の撮影が終わると、待機していた
オートバイスタッフにテープを渡します。テープは、局で待つ編集スタッフに渡され、
すぐさま編集、放送されるのです。
国会近くで待機をしていた、中継車が動き出しました。今回は、政治や官僚の事件ではなく、
江東区で起きた「行方不明事件」の続報を、昼のニュースの中で、現場から生中継をするというもの。
急遽の出動要請。テクニカルディレクターの木根淵さんの指示で、中継車の位置が変わりました。
近隣の住民に迷惑をかけないようとの配慮。生中継の準備が始まりました。
今回は、記者のリポートがあります。取材に当たっていた社会部の醍醐記者から、
取材したテープが渡され、その映像を中継車から局へと伝送。
醍醐記者と小松カメラマンは中継リポートの最終確認を行ないました。
そして本番。生中継は、取材している記者だから伝えられる実感を伝えます。
東京都江東区、新木場にある東京へリポート。
ここには、テレビ朝日の空撮用ヘリコプターが2機、待機をしています。
カメラを外に取り付けた特別仕様。その操作は、後部座席のカメラマンが行ないます。
取材中に、出動の連絡。昼ニュース終了直後のフライトの指示でした。
東京郊外で事件が発生との第一報。およそ15分で、現場近くまで着いたものの、
空からその建物を探し出すのに一苦労。しかし大きなブルーシートが掛けられた
マンションを発見しました。
場所を探し、時にはレポートまで。
誰よりも早く現場に着けるヘリならではの速報性はニュースには欠かせないのです。
スタジオ3
吉澤)
上空から撮影するというのはかなり難しいのですか?
坂内カメラマン)
現場へ行って、その対象物を見つけるということはとても難しいですね。
吉澤)
パイロットと息が合わないと難しいですか?
坂内カメラマン)
現場まではパイロットに連れていってもらい、住所を頼りに協力しなが
ら探します。海上だと緯度や経度を頼りに行くのですが、海の場合、
まったく何も見えないとか探すのは苦労します。
大島沖で貨物船が炎上という取材の時は、昼間に一度飛びました。
そのときは煙が立ち昇っていたので、すぐ発見でき、よかったのですが、
夜に再び行ったら、昼間の場所から海流で流されてしまっていて、
発見できなかったのです。
生放送まで時間が迫っていますし、かなり焦りました。
そこで潮の流れを予測して、飛んでいったらようやく光の点を見つけることが出来、
放送の10秒前にカメラのレンズに捉えることができました。
VTR3
取材した映像を放送用にまとめる「編集」は、いわばニュースの仕上げの作業。
ここ報道編集ルームには、約80名の編集マンがいて、放送ぎりぎりまで、 作業を行っています。この日だけでも取材されたテープは膨大な数にのぼります。
夕方放送の「スーパーJチャンネル」では、江東区で起こった「行方不明事件」が トップニュース。放送の時間が迫り、編集マンと取材した記者、 ディレクターが9チームに別れて、約10分ほどのニュース映像にまとめています。
膨大な取材テープから、ニュースにまとめて行く作業は、判断力とスピードが勝負。
編集が完成すると、映像はサーバーに取り込まれ管理されます。
時間がない場合はニュースサブ(直接副調整室)へと運ばれることも。 放送が始まり、編集を終えたばかりの記者やディレクターが放送を食い入るように 見ています。放送中も編集は続き、刻々と変わる状況に、スタッフにも緊張が走ります。
スタッフが走りだす。やっと全テープ完成しました。
カメラマン、編集マン、全てのスタッフの思いのこもった最後のテープが、 無事、放送に流れました。放送が終わった取材テープは、ライブラリーとして アーカイブ倉庫に保存されます。その数は30万本をこえ膨大な数になります。 そのどれもが、取材に関係したすべての人々の思いがこもった貴重なもの。
時代の目撃者として、未来へ繋がっています。
スタジオ4
吉澤)
ニュース現場の編集というのも1分1秒を争いますね。
記者会見のテープを局へ運ぶというシーンもありましたが、
放送が始まっている中で、放送に間に合わせるべく編集を進める、
いかに大変かわかりますね。
また編集の仕方によってどっちがいいか、どっちが悪いかと恣意的に
変えられるということも言われますよね?
加藤)
元の素材テープは一本なわけですが、編集の仕方では、
その伝え方が変わってしまう。
それがあるので、編集マンは中立公正で、冷静に物事をきちんと
判断し、それを視聴者の方々に伝えるということを、
心がけることが大事なのです。
私たちは、確かな映像を、分かりやすく伝えることが、
重要な役割だと思っております。
吉澤)
ありがとうございました。
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