● ● ● ● 5月18日 ● ● ● ●

司会 吉澤 一彦 (テレビ朝日アナウンサー)
島本 真衣 (テレビ朝日アナウンサー)
ゲスト 鬼久保美帆(題名のない音楽会 プロデューサー)

【放送内容】
「題名のない音楽会」制作の舞台裏」
44年目を迎えた長寿音楽番組「題名のない音楽会」
この春、指揮者・佐渡裕さんを新たな司会者にリニュールしました。
2072回目の今回は、20歳の天才ピアニスト辻井伸行さんがフルオーケストラの協奏に挑む注目企画です。
今回は、この制作現場に密着、音楽番組のディレクターと録音技師の仕事、
ハイクォリティーの音楽番組を作りだすスタッフの苦労と努力を紹介します。

VTR−1

本番を翌日に控え、リハーサルが、川崎にある
ホールで行われました。今回の演奏は、ロシアの作曲家ラフマニノフの
「ピアノ協奏曲 第2番第3楽章」
数多くの映画のテーマに用いられた最も美しいといわれる
ピアノ協奏曲の一つですリハーサルには、番組スタッフも立ち会います。
この回の演出は、番組を担当して、7年目。ディレクターの市川幸介さん。
音声を担当する高林正彦さん。今日は、技術を統括する
テクニカルディレクターと打ち合わせしながらの下見です。
その他、プロデュサーの鬼久保さん司会の久保田アナウンサーの姿も
生の演奏に立ち会うことで、本番の展開をシミュレーション。
演奏中の動きをどう映像化するか、どの楽器の音に注目して音を録るのか、
そのためのプランやカメラやマイクの配置を決めていきます。
いよいよリハーサルが始まりました。
市川さんの手元にあるのは、オーケストラの楽譜、これに時々、
何かを書き込んでいます。何をメモしているのか、見せて頂くと、
そこにはどのカメラを使い、どこを映すのかを書いた“カット割”です。

音声の高林さんは、観客席を移動しながら、音の聞こえ方のチェック。
ホールの質感を伝えるためには大事なポイントです。
7台のカメラの映像から映像を決めていくスィッチャーの渡邉さんは、
本番のイメージを掴もうとしています。
指揮者、ピアニスト、オーケストラ、そして、スタッフ、
それぞれの意気込みをのせ、本番終了。
しかし、全体のリハーサル終了後も、佐渡さんと辻井さん、
2人だけの音作りが続きます。気がつけば、周囲にスタッフが集まり、
2人の会話をじっと聞いていました。
その日の夜、リハーサルの結果をスタッフそれぞれ持ち帰って、
プランの練り直しが行われました。市川さんは、自分のデスクに向って、楽譜と格闘中。
一章節ごとに、どんな映像をどのカメラで、
どんな構図で撮影するか、いわゆるカット割りを書き込んでいます。

これをさらに、楽譜のままでは扱い難いため、
番組独自のカット割表に書き写します。
これが完成したカット割り表。モノと楽譜に市川さんが書き込んだメモを
カメラスタッフにも分かるようになっています。カメラの番号・小節・撮影する内容、
そしてカット番号。リハーサルで、市川さんが注目したのは、佐渡さんと辻井さんの動き、
デュエットのようだとメモしていました。
一方、音声の高林さんも、リハーサルで生の演奏を聞いて、
録音プランの修正にかかりました。ステージの平面図には、
オーケストラの各楽器にどのマイクをどの位置に配置するのか

スタッフはこの図を見てセッティングしていきます。
当初の設置図をみながら、マイクの種類や位置を見直して行きます。
それを録音スタッフ全員に配るため、パソコンで書き直しました。
使用するマイクは、当初の予定より増えて30本になりました。
明日はいよいよ本番。



VTR−2

本番当日。スタッフは、朝8時30分に会場入り。
最初に到着したのは、セット担当の大道具の美術と照明の機材、スタッフ。
その数、膨大なものです。今回使うライトだけでも、
ホールのものと併せて100灯以上になります。
「題名のない音楽会」のステージ作りは、
照明スタッフがライトの取り付けるところから始まります。
バトンと呼ばれる昇降棒にライトが取り付けられ、上から吊るしてステージを
照らします2階席や天井にもライトをセット。
パイプオルガンなどもライトアップされ、
光による幻想的な世界が作り出されるのです。
9時半、照明のセッティングが終わる頃、今度は撮影、録音の機材が搬入され、
すぐにカメラが設置されます。今回の収録には7台のカメラが使われます。

こちらは、高林さんたち録音チーム。オーケストラの場合、音のメインとなるのは、
天井から吊るされるこのマイクです。
5本のマイクを取り付け、天井にワイヤーで3点から吊るすのですが、
個々の楽器の音ではなく、指揮者が作るオーケストラ全体の音は、
こうやって録っていきます。
ピアノのマイクは2本使用してステレオ収録。
基本となるマイクとは別に個々の楽器を録るマイクを足していきます。
それぞれのマイクの特性を生かしてそのつど、使い分けているわけです。
以上のマイクで録った音が集まるのが、この音声中継車。音楽番組には欠かせません。
車内は、まるで音楽スタジオ。ここで音を収録し、録りながら調整していきます。
特に、オーケストラの場合は、多くの楽器の音を処理するため、大掛かりになります。
一度に48のマイクの音がここに集まり、それを調整しながら録音するのが
高林さんの仕事です。
こちら、カメラが録った映像が集まる映像中継車でも準備は万端。

ここでは、7台のカメラから来る映像を見ながら、
使う映像に切り変えながら収録していきます。
カメラは客席に3台 2階席に2台ステージ袖に1台、指揮者を押さえるカメラが1台となります。
11時、市川さんを中心にカメラ打ち合わせ。
技術スタッフに撮影の狙いを伝える打ち合わせですが、この番組では、
音を流しながら具体的な説明を指示します。
カット割表を見ながら、小節ごとのカメラの動き、構図を皆で確認します。
12時30分、佐渡さんも会場へ到着しました。
13時、佐渡さん、辻井さん、オーケストラも揃っての音合わせが始まりました。
本番さながら、全てをシミュレーションするのですが、これが最後のチェックとあって、
話し声一つ聞こえない緊張感が漂います。
ただ一人、佐渡さん、この笑顔。ディレクターの市川さんは、モニターと楽譜を
見比べながら、カット割の最終確認をしています。

音声中継車では、高林さんが音のバランス、質感 を確かめながら、
それぞれのマイクのチェックを行っています。
終了後、ステージを確認する高林さんは、音質に納得していないといいます。
マイクの方向を微調整。
急遽、メインのマイクの向きを変更しました。
一方、市川さんは、出演者と進行の打ち合わせ。音合わせも順調で、
こちらは少しリラックスムードです。打ち合わせが終わるとカメラリハーサル。

そして、本番。
ステージの裏では、市川さんがカメラリハーサルの映像を見ながら、
辻井さんの表情をもっと使うようカットのサイズを修正しました。
カット割の確認は、ギリギリまで続きました。
いよいよ開場です。2000人のお客様が、20歳のピアニストとオーケストラの協演を
聴きに集まっているのです。

いよいよ本番。
市川さんは映像中継車からスイッチャー、各カメラに指示を出していきます。
間もなく、曲はクライマックスにさしかかります。
あえて、佐渡さんと辻井さんのデュエットとして撮ろうと
市川さんが狙ったシーン。狙い以上のシーンが撮れました。



番組では、テレビをご覧の皆さまからのお問い合わせ、ご要望をお待ちしています。
次回の放送は、6月1日(日)の予定です。