● ● ● ● 8月5日 ● ● ● ●

司会 吉澤 一彦 (テレビ朝日アナウンサー)
島本 真衣 (テレビ朝日アナウンサー)
ゲスト 五嶋 正治(玉川学園 講師)

【放送内容】

今回は、玉川学園の高校2年生およそ300人の生徒たちによる
週に一度の必修科目の授業を通じ1年かけて自分たちの映像作品を作る授業の様子を紹介します。


VTR1

東京、町田市にある玉川学園は、幼稚園から大学まである一貫校です。
コンピュータを活用した授業「情報」の中で、メディア教育が行われ、
高校2年生では、5分の映像作品を一年がかりで作りあげます。
生徒指導にあたる五嶋正治先生。メディア教育の始まった5年前から携わってきました。


●五嶋正治さん(玉川学園 講師)のコメント
「玉川学園ではコンピュータをあなた方の道具として自由に使いこなす能力を
身につけてもらいたい。そしてこの授業ではひとつの映像作品を作ります。
その作品を作るという意味では人の意見を聞いたり自分の意見を相手に伝えたり話し合いをして、
納得していかないとひとつのものは作り出せません。そういう協調性を大切にしたいと考えています」


第一回目の授業は、前の年の先輩たちが作った作品の上映会。
クラス全員の笑顔を、自分たちで作った歌に乗せた作品「HAVE A NICE DAY」。
撮影も音楽収録も、自分たちの教室で行いました。

空を飛びたい、と言う願いは叶ったものの、なんとその姿は、
思いもかけないものという、不条理感たっぷりの「ICAN FLY 誰もが体験してみたいこと」。
教室内を飛び廻る、ハエの目から見たシーンが好評でした。

先輩たちの作品は、それぞれユニーク。
過去、人気の高かったこの作品は、学校の裏山を探検する「鍵和田直也探検隊」。
テレビのバラエティー番組の影響もあってか、笑える、楽しいと生徒たちには大好評でした。
高校2年のこの一年で、みんな、どんな作品と思い出を残すのでしょうか?


●五嶋正治さん(玉川学園 講師)の話
「玉川学園では5年前から『情報』の授業が始まりました。
現在、中学1年生でもかなりのスキルのコンピュータの授業が行われています。
高校2年生では、映像制作を通じてメディア全体のことを学んでいこうと、
コンピュータを道具として使いこなし、1つのメッセージ性のある作品を作ることが
必修科目となっています」



VTR2

作品作りは、どんなメッセージを伝えたいのか、企画を立てることから始まります。
上映時間は5分。そこに「5W1H」という情報の要素とメッセージをどう
盛り込むのか、さらに・・・。


●五嶋正治さん(玉川学園 講師)のコメント
「作品の内容がおもしろくて、さらにこんなメッセージを私は伝えたい、と説明できることが大切なこと」

番組のオープニングの撮影が始まりました。

このあと、グループにわかれ、企画についてみんなで話し合い。
みんなの意見を聞いた後、一人一人、自分の企画をまとめます。
そしてみんなの企画が完成しました。起承転結がわかるように4コマの絵コンテになっています。
ヒット番組やゲームの影響が感じられるのは、この世代の特徴でしょうか。


●五嶋正治さん(玉川学園 講師)のコメント
「全員の企画で作品を作れるわけではありません。そのチームの中で一つだけ採用されます。
どの企画を採用するかはその5人のチームの中で話し合って決めてもらいます。戦いです」


5人のグループで一つの作品を作るため、メンバーが出した5つの企画から1本に絞ります。
ポイントは、興味が持てるテーマなのか、5分の作品として成り立っているのか、さらに、実現性、
メッセージ性など。自分の考えたことを作品にしたいと、皆、一生懸命、企画の説明をしています。
こちらの24班では、長谷川眞優さんが、プレゼンの真っ最中。長谷川さんが考えた企画は、
嫌いな物の名前を書いて送ると、何でも消せる携帯サイトを見つけてしまった女子高生のストーリー。
ちょっと怖そうなお話ですが・・・。


●長谷川眞優さんのコメント
「今の世の中は、ケータイ依存症の人が多い。ひまな時でもケータイのサイトとか
いじっているが実は、ケータイは便利だけど危ない、ということを伝えたい」

24班では、この他に4案ありましたが、話し合いの結果、長谷川さんの企画に決定しました。

●高橋 亮人くんのコメント
「長谷川さんの企画を中心に作ろうということになって、あとでみんなのメッセージも
この企画に盛り込めたら良いなということを話しあっている。」


高橋くんの提案で、長谷川さんのストーリーに、みんなの意見が付け加えられ、
どんどん話が膨らんでいるようです。そして何でも消せる携帯サイトの話は、
みんなの意見が加わり、5分の作品の絵コンテにまとまりました。

一方、一つの企画に絞りきれず、激論が交わされる班もありました。
18班は島田くん、荏本さんの2人の有力な企画に絞られました。
島田くんは、常に自分の中にある2つの思いを同時進行させるストーリーです。
一方、荏本さんの企画は、学園祭がテーマ。学園祭を成功させるミッションを
帯びた特別生徒会の活躍の物語です。メンバーの意見は二つに分かれ、なかなかまとまりません。
授業時間が終わり、昼休みになっても議論は続き とうとう、五嶋先生も加わります。
昼休みも半ば過ぎ、それでも結論が出ません。
結局、1週間後の授業の時間までにそれぞれ考えてくることにしました。
さて、島田くんたちは、一週間で、どんな結論を出してくるのでしょうか?


●五嶋正治さん(玉川学園 講師)の話
「自分が考えた企画をプレゼンし、相手の言うことも聞いて、
最終的にどの企画にするかみんなで話し合って決定する。
このようなテーマをひとつに絞り込むプロセスがとても重要だ、と考えている」

「生徒たちが企画した番組は、半年前などに流行ったテレビ番組などの影響が色濃く出ていて、
ただただ楽しいだけ、というものが多かった。その中でどういうメッセージがあるのか、
ということがテーマをひとつに絞り込むための重要なキーワードとなっている」



VTR3

続いては、映像作品の読み解きの授業です。
読み解きに使われた作品は、イギリス映画協会が、メディア教育で活用している
短編アニメーション「岸辺のふたり」です。
全編に「ドナウ川のさざなみ」が流れる他はナレーション、台詞は一切ありません。
幼い日に少女の父親が船に乗ってどこかへでかけ、少女は大人になっていく。
ただそれだけの物語がなぜか胸に迫ります。

※短編アニメーション映画「岸辺のふたり」2000年 英国・オランダ合作 8分
監督 マイケル・デュドグ・ドゥ・ヴィット
提供 CREST INTERNATIONAL INC


作品鑑賞の前に、「自転車」「ボート」「川」と書いたワークシートが渡され、
生徒たちはその意味を考えます。3つのポイントを手がかりに、作品の創り手が伝えようと
しているメッセージを読み解き、ワークシートに記入します。
「岸辺のふたり」は登場人物の表情さえ描かれず、余分な情報は一切排除された作品。
生徒たちは一体どんなメッセージを感じたのでしょうか。まずは、少女の父親が乗る自転車。
「自転車は、娘とお父さんを繋ぐもの」「人生、命。」「父と娘のそれまでの思い出。」
「自転車の大きさで、娘の成長を表現した。」父の乗るボートから、どんなメッセージを
感じたのでしょうか。「父の姿の象徴。」「父の決意。」「ボートは出会いと別れ。」
「自分で動かさなければならないもの。」そして、この作品を通して出てくる川から、
生徒たちは何を感じたのでしょう。「川は死への入口。」「娘とお父さんの間の大きな壁。」
「残酷な時の流れ。別の世界への入口。」「川は、父と娘の絆の強さを象徴している。」

生徒たちは、実に様々なメッセージを感じ取っています。
授業では、それぞれが感じたメッセージ、読み解いたものを書いたワークシートを
グループ内で回し読みします。同じ作品を見たはずなのに、感じたものがまるで違う。
「人それぞれ違う捉え方があっておもしろい」
「自分はすごく悲しい方向に考えていたんですけどまわってきたものを見るとお父さんは釣りに
行ったとか再会できてうれしいとか人それぞれ感じ方が違うんだなぁと思った」
「いろんな意見があってそれでみんなの視点が違うんだなということも感じました。
自分の視点から見たときも『ここはこうなのかもしれない』ということも思いました」
など新鮮な驚きだったようです。


●五嶋正治さん(玉川学園 講師)の話
「読み解きの答えは40人いれば40通りあっていいと思う。全部の答えが正解です。
最近のテレビ番組はこう理解しなさい、という押し付けるものが多いと感じている。
映像作品を見て自分がどのように感じ、そしてどのように考えるか、ということが必要だと考えている」



VTR4

授業が始まって3ヶ月、カメラの使い方を学ぶ撮影実習です。

●五嶋正治さん(玉川学園 講師)のコメント
「全員がカメラに触る、全員がカメラに映る、そして60秒間という時間の長さを感じてもらう授業です」


ほとんどの生徒が、ビデオカメラを使うのは、今回が初めて。続いて、実際の撮影です。
カメラマン、リポーター、取材対象 と役割分担を行い、リポーターが取材対象を、
60秒間で紹介する「他己紹介」を行います。24班では、まず、小森さんが長谷川さんを他己紹介。
しかし照れ笑いして、うまく紹介できませんでした。先生の提案で、教室を出て、
グループごとに「他己紹介」の場所を選ぶことになりました。24班が選んだのは、図書室の一角。
今度は、横倉くんが山路さんを他己紹介。しかし、緊張したのか、言葉が出ない。
悩んでいるうちにも時間が過ぎて、無情にもタイムオーバー。さあ、気を取り直して、
次は山路さんが小森さんを他己紹介。今度は、カメラ担当の長谷川さん、
積極的に迫った熱意は買いますが、近寄りすぎて顔がわかりません。


●小森羅奈さんのコメント
「思っているより60秒っていうのが長くて撮られるのも長かったし、恥ずかしかった。」

●山路ひかるさんのコメント
「撮られていて目線とかも困るし、しゃべる内容も尽きてきた。」

●横倉啓くんのコメント
「自分の声を聞いてびっくりした。
インタビューする時の仕方とか目線をどこに合わせるのかわからなかった。」


教室に戻ると、五嶋先生から、突然の発表。
「他己紹介」の映像を大画面に映し出し、みんなで見ようというのです。
予定外のことに、教室は騒然となりました。大画面に映った自分の表情に、
生徒は、みなとても恥ずかしそうでした。


●五嶋正治さん(玉川学園 講師)の話
「まだクラス替えをしたばかりで生徒同士、お互いのことがよくわからない状態で60秒間、
ほかの人のことを話すことの大変さや、60秒間ずっと映っていなければならない恥ずかしさを
感じてもらうのが『他己紹介』の狙い。このあと撮影のステップに進んでいくが、
この先、コンピュータを道具として使い、人とコミュニケーションをとりながら、
自分の意見を言い、ひとつの作品を作り上げるためにみんなで協力しあっていくことが
出来るのか、をポイントに生徒たちを見守っていきたい」

《第482回 放送番組審議会からの報告》
7月13日に開催されました第482回放送番組審議会報告では、
『放送番組全般』について審議されました。次のような意見が出ました。

「報道・情報系番組」について
いままでの「スーパーモーニング」は、男目線というか、ひとつのテーマを深く掘り下げていき、
非常に硬派にやってきた。だが、それがうまく視聴者と層が合わず、その反省からか、
今は情報番組だかバラエティーだかワイドショーなのかわからない番組になってしまっている。
「ドラマ」について
以前は「TRICK」のようにとんがったものをやってくれていた。
今後は安定を狙うというよりは、まだまだ冒険してもらいたい。
「スポーツ」について
テレビ朝日はスポーツに対する理解度はかなり高く、これからもスポーツそのもの、
本質を尊重した中継をしてほしい。


番組では、テレビをご覧の皆さまからのお問い合わせ、ご要望をお待ちしています。

次回の放送は、8月19日(日)の予定です。