VTR(1)
コンテストに出品するために、中学生が初めて番組を作ることになりました。
日大豊山・放送部は、伝統ある放送部です。これまでラジオ番組のドラマやドキュメンタリーを制作。
数々のコンクールで賞を獲得してきました。
しかし、映像部門ではまだ制作環境が整っていないために、経験がほとんどありませんでした。
今回、放送部顧問の西田先生が与えたテーマは、「著作権」。先生からは、こんなアドバイスが。
(西田先生和樹のアドバイス)
○「説教する番組じゃなくて『これも「著作権なの?」という驚きを感じるような番組をぜひ企画してみて欲しい」
動揺する中学生たち。彼らは、まず役割分担を決めることにしました。
脚本・監督は、千葉 滉平くん。
カメラは、小久保 智朗くん、出演は、島村 純平くんと関口 伸之助くん。
そして、アドバイス役は放送部部長、高校3年生の末松 祐紀くん。
それにしても、テーマの「著作権」のことは、ほとんど何もわからない状態。とりあえずは、パソコンで調べてみることに。ところが、キーワードの「著作権」に対してなんと6480万件もの検索件数が出てみんなは戸惑ってしまいます。
その後、中学生たちは、番組内容を決めないまま漠然と撮影を始めました
。その様子を見た末松部長。まず構成をしっかり作ってから撮影をするようにとアドバイスをしました。
著作権のことが何も分っていないから、番組内容も決められない…。
そう考えた中学生たちは、もう一度リサーチをし直すことに。彼らなりに新たな発見もあり、ここからさらに知りたいことも出てきました。ところが、これを、番組の構成にどう生かせばいいのか…。ふたたび壁に突き当たってしまいました。
○小久保 智朗くんの話。
「番組は、多分、作れるでしょう…。そこらへんは、監督の千葉くんに一任しているので…」
○千葉 滉平くんの話
「西田先生から『著作権』の番組を作るよう言われたとき、何でこんな番組を作らなくてはいけないの!?と驚いた。その後、自分たちで作れるかなと不安になった。インターネットで調べたら想像以上に検索件数が多かったので余計に不安になった。」
VTR(2)
中学生たちが、身近な問題として決めたのが、「音楽の著作権」でした。CDやテレビ、ゲームなどで中学生たちがいつも接している音楽。この「音楽の著作権」とは、曲を作った作曲家や作詞家などに与えられる権利でこの権利を侵害した場合は、「著作権法」に基づき罰せられるのです。
「音楽の著作権」を、保護、管理している日本音楽著作権協会、JASRACを取材することにしました。
○JASRACへの質問(案)
Q.結婚式で音楽を流すのはいいの?
Q.なぜ著作権保護期間が50年なの?
Q.死後50年たった音楽の著作権はどうなっているの?
Q.どこまでが複製になるの?
実は、この質問内容は、ネットからそのまま取り出したもの。
「これでいいのだろうか?」とみんなが思っていたところ、監督の千葉くんからこんな意見が。
●監督・千葉 滉平くんの意見
「オレたちが知りたいことではなく、JASRACに行くから知りたいことを考える、という感じになっている。自分たちがわからないことを質問した方が絶対に面白い。」
そこで、再びみんなが自分たちの身近な問題として本当に知りたいこと、疑問に思うことを、もう一度出し合うことに。
JASRACへの質問項目を考えるために生徒にもインタビューしてみることにしました。「音楽の著作権」についてどう思っているのか、みんなに話を聞いてみると「著作権のことはよくわからない」「著作権はなくなったほうが良い」という意見がほとんど。千葉くんは、この生徒たちのインタビューを番組の中でどう生かしていくつもりなのでしょうか。
●千葉 滉平くんの話
「わかりません」というコメントを番組のオープニングに使いたかったので、いっぱい撮れたので良かった。他にも『著作権なんて別にいいじゃん』という開き直ったコメントが欲しい。」
なんとなく番組のイメージも見えてきたようです。
このインタビュー取材とみんなからのアイデアを元にJASRACへの質問項目が決定しました。
○ JASRACへの質問(決定)
Q.買ったCDを友達に売るのは著作権違反なの?
Q.CDをダビングする時の注意は?
Q.駅のアナウンスを録音してもいいの?
Q.買ったCDをコピーした後その買ったCDを友達に譲るということを繰り返すのは著作権違反なの?
JASRAC取材当日。中学生たちは、重たそうな撮影機材を持って現れました。
日本音楽著作権協会、JASRACは、日本だけでなく、海外の音楽著作権の保護、管理もしているところで、すでに60年の歴史があります。インターネットや携帯電話などの新しいメディアの登場で、著作権の保護や管理は、より幅広く、複雑になってきました。中学生にも、知っておいて欲しいことがいっぱい。担当者の説明にも熱が入ります。
質問の前に、音楽著作権の概要についてお話を聞くことになりました。林さんのお話はとても内容の濃いものでしたが、中学生にとっては、ちょっと難しいものでした。著作権の概要説明が終わり、中学生の質問に答えていただくことになりました。
Q CDをコピーしたあと、CDを友人に譲る、ということを繰り返すのは著作権上、違法になるのですか?
●JASRAC広報部・林 幸助さんからの回答
「これは、現在の著作権法では違法ではなく、合法です。しかし、法律ではいいが、これでは芸術が育ちません。やっぱり対価は払ってやろうよ、たいした金額ではないはずだから、という考え方が本来の著作権の考え方なのです」
CDをコピーする上での注意事項など中学生の8つの質問にとても丁寧に答えていただきました。
●JASRAC広報部・林 幸助さんの話
「私たち権利者から言わせると、『コピーすると申し訳ないな』という気持ちを 持ってもらいたい」
こうして、4時間にわたるJASRACの取材が終わりました。
VTR(3)
JASRACや生徒たちの声をどう番組に生かすのか。中学生たちはまた悩みはじめました。
●末松部長のアドバイス
「ビデオカメラを撮る技術を学びたいのか、それとも番組の構成をしっかりとして、オレたちはこんなに悩んだことをみんなに伝えるために頑張りました、という番組にしたいのか?あきらめるか、死ぬ気で頑張るしかない。」
みんなが帰ったあと、千葉くんは「クイズ形式で番組を作りたい」と末松部長に相談
自分たちが本当に作りたい番組を作ろう。自分たちはそんな作品を作れるのだろうか…。
ひとりで構成を考える千葉くん。
コンクールが目前に迫っているというのに構成が決まりません。末松部長に代わって、大島副部長が激しい口調でみんなに迫りました。
●副部長 大島将大(高校3年)みんなに迫る!
「内容も大切だが、大事なことを忘れていないか!作り上げることが、一番大事なことなんだ!」
ギリギリまで追いつめられた中学生たちは、緊急会議を開きました。その結果、今日、明日で台本を仕上げ、 2日間で撮影することになった。翌日。末松部長の監視つきで、構成案を考える千葉くん。ところが、末松部長が席をはずすと…。・・・寝ていました!番組が作れなかったら、どうしょう…。そんな不安のなかで、責任感の強い千葉くんは、睡眠不足が続いていたのです。
そして、ついに!!台本が完成しました。タイトルは「著作権って何だ?」。この台本によると、どうやら、著作権についての疑問をクイズ形式にして見せていこうとしているようです。レポーター役には、入部して間もない1年生の畑 弘教くんを大抜擢。そしてクイズの問題をドラマ風に演じるのが中学2年生の関口くんと島村くんです。
撮影では千葉くん、堂々たる監督ぶりを披露。そして、最後の編集。そしてコンクールの締切直前に、ついに作品を完成させることができました。
●監督・千葉 滉平くんの話
「楽しくてみんなに伝わる著作権の番組がどうしたら作れるのか、考えるのが大変だった。」
「最初はみんなの考えがバラバラだったけどいろいろ話し合った結果、考えがひとつになった。」
「コンクールでは東京都大会で2位に入り全国大会を決めた。それまでに撮影やテロップ、音楽などを作り直したい。」
○放送部部長 末松 祐紀くんの話
「台本作りに関しては、この中に伝えたいことが本当にあるのか、何度も千葉くんに問いただした。そして台本の完成度に千葉くん自身が満足しているのかを確認した。その結果、自信を持ってこれでいきたいと千葉くんが言ったので納得した。」
「作品作りを通じてみんな成長したと思う。ビデオカメラの撮影技術もみんなよく学んで上達した。締め切りが近づいてきて番組を作り上げる気持ちがだんだんとまとまっていった。」
○西田和樹先生の話
「著作権という難しいテーマを3年前から育んできた。高校3年の末松くんには拒否されたテーマだった。難しいテーマを難しく伝えるのでは放送部としてどうなのか、と考えていたが、今回、伝えたいことがみんなにわかりやすく伝えられたことが収穫だった。」
※日大豊山・放送部の中学生が制作したVTR
Q.買ったCDをダビングして渡すのはいいのか?
Q.買ったCDを携帯電話にダビングするのはいいのか?
など「著作権」についての中学生の素朴な疑問をクイズ形式で見せる。
さらに「著作権」についての意見を先生にインタビューし、著作権を守るべきだ、今ひとつ身近でない、など先生の間にも著作権についての意識がバラバラであることを明らかにしている。
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