● ● ● ● 2月12日 ● ● ● ●

司会 吉澤 一彦 (テレビ朝日アナウンサー)
矢島 悠子 (テレビ朝日アナウンサー)
ゲスト 立元幸治
(NHK局員として主に教育系番組の制作を手がける、退職後は東和大学教授として「メディア論」を担当。
現在は客員教授を務めつつ執筆・講演活動を展開している)

番組内容
中学生と各テレビ局の番組制作者が「いま、中学生にとってテレビとは」というテーマで議論し、これからのテレビのあり方について考えた「中学生フォーラム」。 参加した3つの中学校(青梅市立泉中学校、桐朋女子中学校、墨田区立墨田中学校)の生徒たちが制作したVTRを紹介して中学生は、いまテレビとどのような付き合い方をしているのか、探っていきます。


■取材VTR(1)

青梅市立泉中学校
〜テーマ「中学生が必要だと思うメディアランキングとその理由」

青梅市立泉中学校は、全校生徒数およそ350人。
鹿野川喜代美先生が、フォーラムに参加する5人の生徒にこれから制作するテーマを伝えました。
そのテーマは、「中学生が必要だと思うメディアランキングとその理由」。
今どきの中学生は、情報を何から得ているのでしょうか。生徒に聞いてみました。

北島大資君(2年)の話
「ほとんどがテレビのニュースや新聞から情報を得ている。最近はインターネットも使っている。」

金子勇太(2年)の話
「よくインターネットを使っているが、実際に本で詳しく調べたら間違っていたこともあり、あまり信用できないと感じた。」

真島彩さん(2年)の話
「新聞を読んでいる。面白い、影が薄そうな記事とかいま話題になっていることとかを見ることが多い。」

熊谷優子さん(2年)の話
「ケータイでお金のかからないサイトを自分で見つけて、そこから情報を得ている」

鈴木春香さん(2年)の話
「ケータイは使ったらお金がかかるけど、テレビは使っても一定の料金だから。情報を得るにはテレビの方が得。」

中学生が情報を入手するメディアも実にさまざま。早速、2年生全員にアンケートを実施することに。「中学生が必要だと思うメディアランキングとその理由」というテーマ受け、アンケートでは次のような質問項目を用意しました。

まずは、生活アンケート。
一日の中で、どんなメディアを、どのくらい利用しているか。

次に、10年、20年後のテレビや新聞の未来について意見を求めるもの。

そして、いくら視聴率がとれるからといっても、「アゴヒゲアザラシ、タマちゃんの昼寝」といったあまりニュースとはいえないことに時間をさくのは疑問だという、ある女子中学生の新聞への投書を題材にして、みんなの意見を求めるもの。

アンケートは、2年生のほぼ全員から回収できました。そして以下のような意見が出ました。

テレビ、新聞が無くなると・・・
「友達との会話が減る」 「日本全体が崩れてしまう」 「視聴率よりもっと大事なことがあるのではないか」 「もっと幅広い年齢層に分るニュースをやってほしい」

アンケートを集計して、担当者ごとに項目の結果をまとめました。北島くんのまとめたものを少しご紹介しましょう。

Q,テレビや新聞は品位を保っていると思いますか?
「そう、思う」という答は、意外と少ない。

Q,テレビ、新聞はプライバシーを侵さないようにしているか?
テレビより新聞の方が配慮していると感じているよう。

Q,テレビ、新聞は、意見を公平に伝えているか?
「だいたい公平に伝えている」という答の多さが印象的。

調べた結果を、VTRに収録。フォーラムで発表することになりました。

●青梅市立泉中学校のVTR〜テーマ 「テレビと他のメディアの比較」

※ 2年生110人にアンケートを実施(複数回答あり)

○一番役に立っていると思うメディアは何?
新聞・・・122人  テレビ・・・109人  インターネット・・・43人  雑誌・・・21人  ラジオ・・・21人

○ 影響力のあるメディアは何?
テレビ・・・105人  インターネット・・・61人  新聞・・・54人  雑誌・・・49人  ラジオ・・・10人

○ テレビや新聞の報道を信頼できるか?
信頼できる、大体信頼できる、と答えた生徒がほとんどだった

○ もし情報が届かなかったら、どう思うか?
「今どんな事件が起きているのか不安になる」
「気持ちが落ち着かない」
「地震や津波など災害や天候がわからない」などの意見がありました

○ 10年後、20年後にテレビと新聞はあるか?
テレビと新聞両方ある・・・・63人
テレビはあるが新聞はない・・・4人
テレビと新聞両方ない・・・・14人

「テレビと新聞が無くなると話題がなくなり会話もなくなる」
「新聞がなくてもテレビやインターネットがあるから要らない」
「テレビも新聞もケータイで見られる時代が来るかもしれない」などの意見がありました

中学生の周りには信じていいのか、信じていけないのかわからない情報がたくさんあります。正しい情報を得るためには自分自身が賢い情報の受け手になることが大切だと思います。

スタジオ1

元東和大学教授 立元幸治さんの話
「インターネットが急速に普及しているが、情報や娯楽はテレビや新聞からと答える中学生が多いのは納得できる。私が教えている大学生はインターネットやケータイで情報を得ている人が多い。今の中学生はクラブ活動や塾、受験勉強などでとても忙しくインターネットやケータイを利用する時間が比較的少ないのが現状。そんな中、インターネットの情報には間違いもある、ということ中学生がきちんと認識していることが注目すべきところだと感じた」


■取材VTR(2)

桐朋女子中学校
〜テーマ「テレビの良いとこ悪いとこ」

※ 各学年1クラスずつ計107人にアンケートを実施

○ テレビの良い点

  • 目で人物の表情、場所の状況を明確に知ることが出来る
     また耳から生の声を聞いて臨場感も得ることが出来る
  • 事故・事件・災害などの情報をいち早く知ることが出来る
  • ○ バラエティ番組の問題点

  • 内容が下品
  • ネタが幼稚
  • レベルが低い
  • 似たりよったリの番組が多くマンネリ化している
  • ○ ドラマの問題点

  • 先の話が読めてしまう
  • 本や漫画原作のドラマが増えている
  • ○ 番組編成の問題点

  • どのテレビ局も同じジャンルの番組が放送されることがあるが、それは各テレビ局が視聴率を競っているからなのか
  • 同じような番組が放送されているとそれが重大事件であっても別の番組を見たいと思うし、飽きてしまう
  • 各局が独自の番組を放送してほしい
  • ○ テレビの問題点

  • 番組制作者に視聴者の顔が見えていないのではないか
  • 番組の盛り上がったところでCMを入れ、続きを引き伸ばす作りが目立つ、これではもっと知りたいと思う気持ちが沈んでしまう
  • 番組スポンサーや制作者側の意図で番組を作るのではなく視聴者側の視点に立って番組を構成する姿勢を大事にしてもらいたい
  • テレビ局番組制作者の反応は・・・。

    フジテレビ「あいのり」プロデューサー・演出 西山仁紫さんの話
    「たくさんの人に不快感を与える番組は良くないと思うが、逆にまったく毒がない番組は面白くないし、誰も見ない。制作者はみんなぎりぎりのラインを超えないように考えながら番組を作っているのが現状」

    日本テレビ 「野ブタ。をプロデュース」担当 井上健さんの話
    「“野ブタ。をプロデュース”についてドラマ自体はたくさんの人に楽しんで見ていただけたかなと感じる。一方でいじめの問題を扱ったことについて視聴者の方からいろいろな批判や意見をいただいた。テレビの影響力についてあらためて考えさせられ、どこで線引きをしていけばよいのか難しい問題だと思っている」

    テレビ朝日 「報道ステーション」担当デスク 宮川晶さんの話
    「確かに全部のテレビ局で同じ記者会見や現場中継を放送することがある。視聴者は他の番組を見たいと思うのは理解できるがなかなか他のニュースを見せるというわけにはいかない。ただ同じニュースでも伝え方を出来るだけ工夫したいとは思っている」

    スタジオ2

    元東和大学教授 立元幸治さんの話
    「中学生の指摘は実にストレートで厳しい。しかし、みんな誰もが思っていることである。民放のテレビ局番組制作者にとって視聴率は切っても切り離せないのが現実。そういう縛りの中で制作者がある種の緊張感、あるいは志を持ち続けて番組を作れば何か視聴者に伝わるものがあるのではないかと思う。」


    ■取材VTR(3)

    墨田区立墨田中学校
    〜テーマ「こんな番組あったらいいな」

    ※ 全校生徒226人にアンケートを実施

    ○ 学園もの・学校ものが見たい・・・226人中13人

    ○ 難しいものをわかりやすくした番組が見たい・・・226人中2人

    ○ ドラマが見たい・・・226人中29人

    ○ みんなで見られるものがいい・・・226人中2人

    ○ 楽しいものがいい・・・226人中20人

    ホラーみたいなものを見てゾクゾクするのが楽しい人もいるし、バラエティやお笑いが面白くて楽しい人もいるし、「楽しい」は人によって違う

    テレビ局番組制作者の反応は・・・。

    テレビ朝日 「報道ステーション」担当デスク 宮川晶さんの話
    「楽しいものを見たい人が多いと思うが、世の中には難しいことや大変なことがたくさんある。またいろいろ凶悪な事件が、後を絶たない。そういった楽しいことではないが、いろいろ考えさせられ、家族で話し合えるきっかけを作るような番組をこれからも作っていきたい」

    日本テレビ 「野ブタ。をプロデュース」担当 井上健さんの話
    「最近は、楽しく面白く見てもらいたい、という一方でわかりやすく伝えることに行き過ぎていたように思う。僕らが子供の頃は、テレビは楽しくておもちゃ箱のようで素敵な夢を与えてくれる存在だった。中学生のみんなの意見を聞いてあらためて原点に返って番組作りを行うべきと感じた」

    TBS解説委員 杉尾秀哉
    「今は情報の海に私たちはいる。番組制作をしている私たちはプロの目、ジャーナリスティックな視点でどうやって真実を伝えていくか、ということをあらためてやっていかなければいけない、と感じた」

    スタジオ3

    元東和大学教授 立元幸治さんの話
    「テレビの面白さには2つある。ひとつは娯楽、お笑い、バラエティ、恋愛ドラマなどエンタテメントとしての面白さ。
    もうひとつはインタレスト(興味・関心)としての面白さ。例えばある事件やテーマに対し問題意識、興味、関心を探っていき、回答が得られることによる満足感など。いまは前者に関する議論がなされることが多いと思うが、実はテレビにはもうひとつの深い面白さがあること。それは“インタレストとしての面白さ”なんですよ、ということをいまの中学生に気づかせる努力が大人や番組制作者たちに必要だと思う」

    「テレビに将来について、これからはテレビの画面が2つの方向に拡散していくのではないかと思っている。一つはパソコンやケータイなどパーソナルでモバイルな形で映像を楽しむ方向。もうひとつは液晶テレビやプラズマテレビなど大画面テレビが家庭の中に入ってきて今までパーソナルな形で見られていたテレビが逆に家族を結びつける求心力の役割を果たす方向に拡散していくと考えている」




    《第466回放送番組審議会からの報告》
    1月20日に開催された放送番組審議会では、「放送番組全般」について審議されました。

    テレビ朝日が家庭のスタンダードになってきた。やはり振り切ったものや極端なものをやらないと視聴率には結びつかない。
    「熟年離婚」「砦なき者」「終わりに見た街」などドラマの方にジャーナリスティックなメッセージを伝えることができる力を感じた。
    技術的に放送と通信の融合は当たり前になっている中で、「放送とは何か」を再定義し制度的に確保しなければならない。
    いわゆる放送らしさの追及を生え抜きの放送の人間がどれだけしっかりやっていくかが重要な時代に入った。



    番組では、テレビをご覧の皆さまからのお問い合わせ、ご要望をお待ちしています。

    次回の放送は、2月26日(日)の予定です。