【番組内容】
川崎市立宮前平中学校放送部による「テレビの見かた実態調査」のVTR制作に密着し、中学生は、いまテレビとどのような付き合い方をしているのか、探っていきます。
■取材VTR(1)
昨年暮れ、放送と青少年に関する委員会主催による「中学生フォーラム」が行われました。
参加中学4校、各テレビ局の番組制作者も加わって、「いま、中学生にとってテレビとは」というテーマで議論し、これからのテレビのあり方について考える場となりました。
参加した4つの中学校は、事前にそれぞれのテーマを与えられ、フォーラムで発表するためのVTRを制作しました。
桐朋女子中学校は「テレビの良いとこ悪いこと」
青梅市立泉中学校は「中学生が必要だと思うメディアランキングとその理由」
墨田区立墨田中学校は「こんな番組あったらいいなあ」
川崎市立宮前平中学校は「テレビの見方実態調査」
今回は、川崎市立宮前平中学校の「テレビの見かた実態調査」のVTR制作に密着し、「中学生にとってテレビとは何か」に迫ります。
■取材VTR(2)
川崎市立宮前平中学校は生徒数およそ1000人。部活動がとても盛んです。
放送部は普段、校内で流す学校紹介やイベント紹介のVTRを制作。
放送コンクールの全国大会では何度も入賞を果たすなど、とても伝統のあるクラブです。
「中学生フォーラム」の2ヶ月前、放送部顧問の中村先生は、生徒にこれから制作するVTRのテーマを伝えました。
そのテーマが「テレビの見かた実態調査」です。早速、放送部のみんなに、テレビの見かたについて聞いてみました。
福島健士くん(3年)の話
「高校受験をひかえているが、アニメを中心に毎日2時間はテレビを見ています。」
中西健太くん(1年)の話
「1日のテレビ視聴時間は3~4時間。家族と話しながら見ています。」
佐塚智史くん(1年)の話
「中学生になってあまりテレビを見なくなった。休みの日にザッピングしながら面白い番組を探しています。」
定絵里加さん(1年)の話
「塾でいつも帰りが遅いので、気に入ったドラマ1本を録画して休みの日に30分づつ見ている。テレビ中心の生活ではなく生活の中で空いた時間を利用してテレビを見ています」
4人の話を聞いただけでも、それぞれにテレビの見方が違うことがわかりました。
早速、中村先生はアンケートを実施することを提案。2種類のたたき台を用意してきました。
ひとつは「メディア日記」と題されたアンケート。
中学生たちの生活環境のなかにあるさまざまなメディア、テレビやケータイ、インターネットやTVゲームなどに1日のなかで、いつ、どの位の時間利用しているか、という調査です。もうひとつは、誰と?どこで? 好きな番組は?あなたの生活にテレビは必要か?など、テレビについての質問。
生徒たちの意見
「テレビを見ていて特に見たい番組ではないときケータイでメールに集中する」
「メールを送ったとき、ケータイは音が鳴るけどパソコンは反応してくれない、相手が出てくれないので返事が返ってくるのが3日後だったりする」
「テレビはみんなで見ているからずっと見ていても怒られないが、インターネットばかりしていると親に怒られる」
○中村純子先生の話
「テレビは1人視聴より家族で見ている傾向がある」
「1人視聴で怒られるのは、テレビよりもパソコンのほうが多い」
用意した、たたき台に生徒たちの意見を加えて、アンケートを完成させました。
続いて、VTRを作るためには、どんな要素が必要かを生徒たちだけでアイデアを出し合っていきます。
それぞれに必要と思われる項目を書き出し、VTRの流れを組み立てていきます。
さすがに、伝統のある放送部。VTR作りに慣れていました。プロのテレビマンも同じやり方をする人が大勢います。
定さんは生徒だけでなく父兄にも「テレビについてどう思っているのか」聞いてみるつもりのようです。
佐塚君は、「ある生徒の一日」を再現してみたいと考えているようです。
そして最初の構成案が完成。サブタイトルは「情報社会の渦」。中学生がたくさんのメディアに囲まれている状況を表現しました。
主な内容は、ある生徒の一日を再現で見せながら、テレビを自分の生活リズムの中でどう位置づけているのか。
「テレビは自分にとってどういう存在なのか」「自分にとって情報とは何か」など、生徒たちの生の声を生かして「テレビの見かた実態調査」のVTRを作ろうと考えています。
○中村純子先生の話
「テレビを見ながらケータイでメールをする、テレビゲームは流行っていない、自分の生活を主体に録画した番組を細切れで見ているなど、いまの中学生は私たちの学生時代とはずいぶん違うなと生徒の話を聞いて感じました」
■取材VTR(3)
アンケートは、1年生から3年生のおよそ400人に実施しました。
2種類のアンケートを用意。
ひとつは、さまざまなメディアに囲まれた中学生の、1日の生活の中でいまテレビはどのくらい重要な存在なのか、を調べるもの。
もうひとつはテレビの見かたについて「情報の入手方法」「平均何時間見ているか」「夜は何時頃まで見ているか」「どこで見ているか」「「誰と見ているか」「見る上で大切なこと」「好きなジャンルは何か」「テレビは必要か」「テレビの情報を信じるか」「テレビとは何か」など、10項目の質問を作りました。
そして、実にさまざまな答えが返ってきました。
「テレビは暇でしょうがないときに見るもの、理由はテレビよりパソコンがやりたいから」
「テレビは身近な問題提起をしてくれる」
「テレビは家族をにぎやかにしてくれる」
「テレビは必要ではあるが過信してはならない」
「テレビは友達、なぜなら人は裏切るけどテレビは裏切らないから」
ここからいったい何を読み取り、どう組み立てていけばいいのでしょうか。
アンケート用紙を見た生徒からこんな答えが返ってきました。
「朝ごはんと夜ごはんのときテレビとケータイを同時にやっている傾向がある」
「勉強しながら、テレビを見て、ケータイでメールしている人がいた」
アンケートは、項目別に分けて集計していくことにしました。
1週間後、アンケートの結果をそれぞれ発表しました。情報は圧倒的にテレビから入手していることがわかりました。
さらに、中学1年生のおよそ50%が「テレビは絶対に必要」、そして残りのほとんどの生徒もテレビの必要性を認めています。
赤田裕樹くん(1年)の話
「情報に間違いがあることもあるがテレビは絶対に必要、テレビが無くなったら何を楽しみにしていいかわからない」
中沢見音さん(1年)の話
「他にもパソコンや友達と遊ぶとか娯楽はいっぱいあるけどテレビは一番身近なもの」
定絵里加さん(1年)の話
「何を信じればいいのかわからないからテレビにすがろうとする中学生の意識があると思う」
ここで集計結果を確認するために直接、生の声を聞いてみることにしました。
生徒のインタビュー
「友達のような存在でテレビの無い生活は考えられない」
「テレビはニュースを見たりいろいろな情報を集めたりするもの」
「テレビは暇なときに見るもの」
「テレビは好きなものがいっぱい見れて楽しいものです」
みんな頑張って貴重なデータを集め、それを1週間もかけて集計し、立派なグラフを作ることができました。
ところが、ここでみんな考え込んでしまいました。
中西健太くんの話
「データが集まってあとは番組の構成だけで楽かなぁ、と思ったら結構大変で」
みんなは、データを紹介するだけでは、何かが足りないと思っているのです。
○中村純子先生の話
「データをとってただ紹介しただけではつまらない。データを読み取ってそこから中学生の君たちなりの主張がほしいよね」
データから中学生が好きな番組は圧倒的にドラマやバラエティであることがわかりました。さらに、中学生がテレビで情報を集めている割には、データではテレビに一番求めているのは「面白さ」がずば抜けていて「情報」が割合的に低いことが読み取れました。
定さんは、ここで
一般的な情報と中学生が考える情報とは少し違っていること。
例えばバラエティやクイズ番組で知らないことを知ったときそれも中学生は情報としてとらえている、という原稿を作りました。
アンケートからこんなことも分かりました。
およそ7割の生徒が親と一緒にテレビを見ていました。塾や部活の忙しいなか、テレビを見る時間帯が家族と一緒になるようです。
そして中学生の「ながら見」の実態がわかりました。テレビを見ながら、いろいろなメディアを同時に楽しんでいるようです。
テレビから得る情報については、およそ70%が、「信じる」との答えでした。
そしてついに「テレビの見かた実態調査」のVTRの構成が固まりました。
中学生は、ケータイ、パソコンなど1日の生活の中で実にたくさんのメディアを利用していること。
さらにテレビを見ながらケータイメールしたり、“ながら見”が多いことなど。
生徒の一日をドラマ仕立てで見せながら、「中学生のテレビ視聴データ」を紹介していくという構成に決まりました。
○中村純子先生の話
「いまの中学生にとっては“ながら見”は当たり前であることがアンケートから解った。
テレビで面白いシーンがあれば見て、つまらなくなればメールなどほかのことに熱中する。
いまの中学生は頭の中でチャンネルの切り替えを実に頻繁に行っているんだな、と実感しました」
2005年12月23日。
中学生フォーラムで川崎市立宮前平中学放送部制作のVTR「メディア活用の実態~ある中学一年生の一日を見つめて~」が流されました。
私たちの周りにはテレビ、インターネット、新聞、携帯電話などさまざまなメディアが存在しています。
たくさんのメディアに囲まれて生きている中学生のメディア活用状況を調査しました。
(ある生徒の一日①)
朝7時、起床。テレビを見ながら、朝食を食べ、テレビのニュースの話題について親と話す。
(データ)
いまの中学生が好きなジャンルは、圧倒的に「ドラマ」と「バラエティ」が人気。
いまの中学生がテレビを見る上で必要なものは「面白さ」。バラエティ番組やクイズ番組を見て自分の知らなかったことを知ったとき、それを情報と捉えているのです。
(ある生徒の一日②)
学校で、校内放送を見ながら昼食を食べ、校内放送の中身について友達と話す。
帰宅後、テレビを見ながらケータイで友達とメールする。
(データ)
いまの中学生は、テレビだけを集中して見ることがないようです。テレビを見ながら友達とメールをしたり雑誌や漫画を読んだりするなど一度に2つ以上のメディアを利用する、いわゆる”ながら見“が数々の場面で行われています。
(ある生徒の一日③)
塾から帰宅後、パソコンで漫画を見る。
自分の部屋で音楽を聞きながらケータイで友達とメールする。
母親に注意されて深夜0時、寝る。
このVTRを見たテレビ局の番組制作者の意見は・・・。
テレビ東京 松本篤信さんの話
「中学生にとって新しいことはすべて情報なんだ、と実感した。ドラマやバラエティ番組を作っている私たちは、情報を発信していることをあらためて自覚しました」
テレビ朝日 宮川晶さんの話
「ケータイでメールしながらテレビを見ている人は確かに多いと思う。横にいなくても離れている友達と同じものを感じていたい、寂しさの裏返しというか、そういう意識があるからこそ“ながら見”は今では当たり前だと思う」
TBS 杉尾秀哉さんの話
「昔は媒体というとテレビが圧倒的な強さだったが、今では、圧倒的な強さではなくて
媒体の中のひとつになってきつつあるのかな、と中学生の皆さんの話を聞いて感じました」
定絵里加さん(1年)の話
「VTR制作は大変で、特に構成を考えているとき、意見が出なくなってしまいここでやめたらどんなに楽かなと思ったけど、それを乗り越えて作り上げたことはとてもよかったし、達成感があった」
○中村純子先生の話
「2ヶ月にわたるVTR制作について、生徒たちそれぞれの個性を生かして適材適所でよいところを出し合って一つの番組を作ることが出来た、生徒たちはVTR制作を通してとても大きなことを学んでくれたな、と感じた」
「アンケートを通して今の中学生はテレビを素直に見すぎているな、と感じた。これからはテレビの情報を吟味、分析して見る視点をこれからは育てて生きたい」
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