● ● ● ● 11月20日 ● ● ● ●

司会 吉澤 一彦 (テレビ朝日アナウンサー)
矢島 悠子 (テレビ朝日アナウンサー)


【放送内容】
テレビ朝日系列局の番組の質向上を目指し行われている「プログレス賞」とANN加盟各局のアナウンサーの技術向上を目的とした「ANNアナウンサー賞」、そして民間放送教育協会と文部科学省の主催で行われた「教育と放送の役割」フォーラムについてお伝えします。


「プログレス賞」
2005年10月27日、山形市でテレビ朝日系列24社の放送番組審議会委員代表者会議が開催され、今年で11回目を迎える「プログレス賞」の表彰式が行われました。この賞は、全国各地の放送局が前年度に制作し、それぞれのエリア内で放送した作品が対象です。各地の制作者たちの、日頃の努力とその過程を評価し、系列全体の今後の番組作りに結び付けていくのが目的です。
今回は24作品が参加、最優秀賞1作品、優秀賞1作品、奨励賞2作品が決定しました。

※ プログレス(PROGRESS)=進歩・向上・成長

    各受賞作の紹介
最優秀賞
「妖怪を見た男~近代建築界の巨人 伊東忠太の世界~」
制作 山形テレビ 放送日 平成17年2月26日
(放送内容)
神社建築の権威で、明治から昭和にかけて日本の建築界の中心的存在だった、山形県米沢市出身の伊藤忠太。実は、彼は妖怪をこよなく愛していた。そしてそれを空想の世界だけではなく現実の建築作品にも表現しました。今も数多く残る伊東忠太の建築作品を訪ね、彼が目指した表現とは一体何だったのか、また近代日本を支えた建築界の巨人の、知られざる一面も描きだしています。
(受賞理由)
最近、若い人に伊東忠太が、人気があるが、この番組を見るとその理由がよくわかる。伊東忠太という人間の人物史と近代建築を独創的な視点から交叉させた興味深い作品。後々の才能の開花に幼少期に育った地方の風土や文化が大きく関わり、影響を与えていることを丁寧に描いていることから、人づくりこそ地方の役割といった自信めいたものを感じさせる番組。
(受賞コメント)
庄司 勉ディレクター
「伊東忠太さんは、建築家であり、建築史家であり、デザイナーであり、そして漫画家でもあり、といろんな顔をもった人で実はまだまだ未解明な忠太像というものがある。今回の番組を通して建築界の巨人である、伊東忠太に興味を持っていただくきっかけになれば、と思いこの番組を企画しました」
※ 最優秀賞を受賞した「妖怪を見た男~近代建築界の巨人 伊東忠太の世界~」は
  12月25日(日)午前5時放送予定です


優秀賞
「検証 動かぬ基地~沖国大米軍ヘリ墜落事故から1ヶ月~」
制作 琉球朝日放送 放送日 平成16年9月13日
(番組内容)
2004年8月13日沖縄県宜野湾市の沖縄国際大学にアメリカ海兵隊のヘリコプターが、墜落する事故が起きた。たまたま事故の現場近くで、別の取材をしていたカメラクルーが事故の悲惨な様子をスクープ。アメリカ軍は、日米地位協定を盾に、現場を封鎖。マスコミの立ち入りも拒否。さらに墜落の原因さえも明かされずに同型のヘリがイラクへと向かった。墜落現場となった大学構内に特設スタジオを設け、生放送で事故発生からの1ヶ月をさまざまな角度から徹底的に検証した。
(受賞理由)
日本がぶつかっている一番大きな矛盾を直撃するような問題を取り上げている。米軍が厳しい封鎖をしてメディアが入れないようにしたが、琉球朝日放送は粘り強く取材を続け、「生の記録」というものを唯一外に持ち出し放映し、大きな成果を上げた。報道としても秀逸で、現在でも記録的価値を失わない。
(受賞コメント)
賀数 朝夫プロデューサー
「自分たちが信念を持って作った番組がこのように評価されたことをとても嬉しく思っています」


奨励賞
「地震で死なない 大切な人を失わないために~阪神から静岡へ~」
制作 静岡朝日テレビ 放送日 平成17年1月15日
(番組内容)
10年前の「阪神・淡路大震災」で亡くなった人の実に8割以上が、建物の倒壊による圧死や窒息死だった、という調査結果が出ている。想定される東海地震の震源域の上にある静岡県で、今一番大事な地震対策は、建物、特に一般住宅の耐震化を進めること。ところが現状では、県の制度が不十分なため、地震後の避難生活の備えばかりで、なかなか耐震化が進まない。“自分の命、そして大切な人を守る”という身近で現実的な視点から、災害対策の遅れに警鐘を打ち鳴らす。
(受賞理由)
神戸の震災の教訓と耐震化の重要性を無理なく結び付けている。静かな中に、伝えたいこと、人の心の傷跡などがきちんと描かれていることを高く評価する。市民や行政の注意を喚起するというメディアの重要な役割をこの番組が果たした。
(受賞コメント)
浅羽 純生ディレクター
「もともと視聴率を狙うとか賞を狙うとかではなく、みんなに少しでもこういう問題に気づいてほしい、という想いから始まった企画だったので賞をいただいたのは正直言って驚いています」


奨励賞
「熊野古道をゆく ~鄙に生きる都~」
制作 朝日放送 放送日 平成17年3月21日
(番組内容)
2004年、ユネスコの世界遺産に登録された紀伊山地の霊場と参詣道。かつて天皇や上皇が京からはるばる訪れた、本宮大社、速玉大社、那智大社という熊野の三つの神社を訪ね、古(いにしえ)から伝わるお祭りや国宝の宝物をハイビジョンならではの美しい映像で紹介している。
(受賞理由)
映像がとにかく美しい。これまで見たことのない「絵」だったことは、とても貴重な作品。世界遺産の熊野古道にふさわしい風格のある記録。完成度が高い。このような番組は、学校の教材として、世界遺産の素晴らしさを見せてあげて欲しい。
(受賞コメント)
牟田口 章人プロデューサー
「熊野古道を歩いてまず驚いたのは、屋久島よりもすごい原始林が紀伊半島に存在していてそれを実際に見ることが出来たこと。自然の恐ろしさをひしひしと感じた。そこでなぜ昔の人たちが熊野古道に分け入ったのか、その理由がわかったような気がしました。私たちが感じたことを今回、熊野古道の映像を通してみなさんと共有できたことがとてもよかったと思います」



「ANNアナウンサー賞」
2005年11月4日、六本木のテレビ朝日で、ANN系列加盟26社の「アナウンス責任者総会」が開かれ、「第4回ANNアナウンサー賞」各部門の優秀賞受賞者の表彰式が行われました。「ANNアナウンサー賞」は、ANNネットワーク系列加盟各社のアナウンサーを対象とし、この一年間の努力や成長、技術の向上に対して賞が送られます。

※ANN・・・オールニッポン・ニュースネットワーク協定の略称。テレビ朝日をキー局とする、全国26局のニュースネットワーク。

    各受賞作の紹介
「原稿のあるもの部門」優秀賞
新潟テレビ21 三河かおりアナウンサー
(受賞作品)
「月間Team ECO 我ら自然派宣言」ナレーション
小学6年生の児童が自分たちの意思でボランティア活動に取り組む姿を紹介。
(受賞理由)
さわやかな声、丁寧な読み方、そしてやさしい。心地よさを感じる。
ナレーションが映像の邪魔にならずに、引き上げている。
(受賞コメント)
「後輩もたくさんいるのでその良いお手本になりたい。そして自分自身ももっと技術を向上させて深みのあるアナウンサーになれるようこの賞を励みに努力していきたい」


「原稿のあるもの部門」優秀賞
テレビ朝日 松尾 由美子アナウンサー
(受賞作品)
「スーパーJチャンネル 故郷の被災地住民の苦悩」 リポート
台風14号の直撃を受け、変わり果てた松尾アナの故郷(宮崎)の姿に、いてもたってもいられなくなって帰郷。松尾アナ自身がムービーカメラをまわし、被害の状況を伝えた。
(受賞理由)
プライベートでカメラを回すその意欲、姿勢は素晴らしい。崩落した橋や道路の陥没などのリポートは、表現が的確で自然。住民の重い口を開かせ声を引き出せたのは彼女の人柄と力。方言で表現したことで存在感が増していた。取材に対する姿勢や喋りを含めて、他のアナウンサーがお手本とすべき作品になっていた。
(受賞コメント)
「VTRの中で、私がかなり訛っていましたので、アナウンサーとしてどうなのかな…と思っていました。それだけに賞をいただけて嬉しく思います!訛りと一緒に、故郷への想いだけはたっぷり込めたつもりです。今後とも、全国の故郷を愛するハートのある伝え手を目指して精進いたします。ありがとうございました。」



「教育と放送の役割」フォーラム
10月1日、有楽町朝日ホールで民間放送教育協会と文部科学省の主催で行われた「教育と放送の役割」フォーラム。今回のテーマは「テレビ・ラジオとの上手なつきあい方」。 急速に進む情報化社会。大人も子供も、メディアから流される膨大な情報の中で生きています。ではメディアとのつきあい方をどのようにすればよいのでしょうか。それぞれ違った立場や経験をもつパネリストの皆さんから活発な意見が出されました。

「テレビ・ラジオとの上手なつきあい方」


下村 博文(前文部科学大臣政務官)
「時にはテレビと距離をおいてどの番組が見たいのか、選んで見ることが人格形成的にも良い」

橋下 徹(弁護士)
「テレビはあくまでも情報を得る窓口。見た後は必ず自分で検証することが必要」

奈美 悦子(女優)
「テレビは必ずみんなで見るべき。テレビの話題で人間関係がスムーズになる」

原 寿雄(ジャーナリスト、前「放送と青少年委員会」委員長)
「良いことも悪いことも含めてテレビを自由に見る。その中から自分なりの価値観を見出していくべき」

村尾 尚子(テレビ朝日ニュース情報センター長)
「視聴者の意見を聞いてはじめて双方向になる。これからは制作者もテレビについて語るべき」



次回の放送は、12月4日(日)の予定です。