● ● ● ● 11月6日 ● ● ● ●

司会 吉澤 一彦 (テレビ朝日アナウンサー)
矢島 悠子 (テレビ朝日アナウンサー)

【放送内容】
「街を考える 街を伝える 市民テレビ」
東京の三鷹市にある小さなテレビ局。ここで今、テレビを使ったまちづくりが行われています。
参加しているのは、リタィアした人や主婦、学生などの一般市民。スタッフは全員がボランティア。
テレビを使って、どんなまちづくりを目指しているのでしょうか。今回は、地域密着型の小さなテレビ局をご紹介いたします。

取材VTR(1) 市民自身がつくるテレビ局とは?
○「むさしのみたか市民テレビ局」の所在地は、三鷹市。
地元のケーブルテレビ局から放送枠を提供してもらって、そこで自主制作の番組づくりをしています。
放送対象となっているエリアは、武蔵野市と三鷹市。


「むさしのみたか市民テレビ局」とは?
開局したのは、5年前。
地元のケーブルテレビ会社から番組制作の誘いを受け、武蔵野市と三鷹市の市民が、「まちづくりにテレビが使えるかもしれない」と設立。
現在は特定非営利法人となっています。番組制作にかかわっている局員(市民)は、69名。
自分が住むまちを良くしたい、という熱い思いを持つ人たちが ボランティアで参加。 幅広い年齢層で番組作りが行われています。
定年を迎えてリタイアした男性、子育てがひと段落した主婦やサラリーマン、 大学生など実に様々。
1か月に1本、「わがまちジャーナル」という 30分の番組を作っています。

○ 月刊「わがまちジャーナル」
武蔵野三鷹ケーブルテレビ(通称パークシティー)のネットワークを借り受け、
毎日ひる1:00〜1:30と、よる8:00〜8:30の二回放送。
「まちを考える」というメインコーナーのほかに、もうひとつの看板コーナー「わがまち探検隊」など、
地元ならではのネットワークや人脈を元に作った超ローカル番組が目白押し!
10月から、ホームページ上で、番組の動画配信もはじまり、ケーブルテレビに加入していない人も、見ることができるようになりました。



武蔵野三鷹ケーブルテレビ 佐々木さんのコメント
Q ケーブルテレビ局は、放送ワクを市民に無償で提供したことについて。
「市民にコンテンツの根幹である情報を担ってもらうことで、より地元に密着した番組供給ができる。 そこに住んでいる人たちがメッセージを交換しあえる“2way型のネットワーク”として位置づけることで、ケーブルテレビが明瞭な ポジションを構築できる。」

参加している人たちは、世代も違えば、考え方も違います。番組作りを、どのように進めているのでしょうか。
会議をのぞいてみると、ここならではの特徴的な方法がとられていました。
会議で決められる特集に対して、スタッフそれぞれが、興味ある内容に自発的に立候補するというスタイルです。
ひとつの番組を、平均6人から8人で作ることが多いそうです。


むさしのみたか市民テレビ経営局長 津田さんのコメント
Q むさしのみたか市民テレビ局の意義は?
「最初にまとめた趣意書には、 さまざまな出来事やさまざまな生き方、考え方を伝え合うなかで、ひとつのつながりが出来て、人を知り、まちを知り、それが新しいつながりを生んで、まちづくりに貢献していくことを映像を通して、実施したい」

アナウンス勉強会
毎月第一日曜には、スタッフを対象に、プロが発声の仕方やナレーションの読み方などをレクチャー。
実際の番組で使われたナレーション原稿を元に、映像をみながらあてていく練習をしていきます。


 スタジオ 
吉澤: 実にさまざまな人が参加していますね。
矢島: 中心になっているのが、定年退職したリタィア組と主婦なんです。
他には、会社員や大学生などの若い世代。
吉澤: 放送できるワクは、ケーブルテレビ側から無料で提供されていても、とにかく番組作りにはお金がかかります。
どうしているんですか?
矢島: 運営費、制作費は、ワクを提供しているケーブルテレビ局から出ます。
しかし、市民テレビ局としては、その他にもお金が必要です。
そこで、スタッフそれぞれが年会費というかたちで、年間4千円を出しています。
その他にも、個人や法人などの賛同する人たちから支援金を出していただいています。
吉澤: みなさん、自分からお金を出してまで、この市民のテレビ作りで頑張っているんですね…。

取材VTR(2) テレビを使ってまちづくり
渡辺博史(ひろし)さん。76歳
市民テレビ局創設からのメンバーで、今年76歳!スタッフ最高齢。
この渡辺さんが、「わがまちジャーナル」8月号の放送でカメラマンとしてデビューすることになりました!

渡辺さんのコメント
Q 市民テレビに参加したきっかけは?
「市民報で局員募集の記事をみたので。ビデオが好きだったので参加してみた」

渡辺さんの記念すべきカメラマンデビューは、レギュラーコーナーの「かけこみ情報」。
市民や視聴者がPRやお知らせをする、なんでもありのテレビ掲示板。
撮影する内容は、市民合唱団のお知らせ。カメラの操作を教わりながら、 まずはパンフレットの撮影。
なかなか構図が決まらないようです…。 しかも、なれないカメラ操作。
悪戦苦闘しているうちに、このあと大変なことが…。 渡辺さん、カメラを落としてしまいました!
気を取り直して、コメント部分の撮影を開始。PRの時間は30秒。この短い時間に収めるのは、なかなか難しいんです。
何とか撮影も終了し、渡辺さんにも笑顔が戻りました。

渡辺さんのコメント
Q どんな思いで、市民テレビで番組作りを続けているのですか?
「若い人と一緒にやれる。76歳という年を忘れて若返ることができる。
50年住んでいると、三鷹は広いなと。知らないことがたくさんある。
それも勉強になる。取材に出ても、いろんな人と知り合えることが良い」

スタッフ 白築さんのコメント
Q 参加したきっかけは?
「第二の人生をどう過ごすかという模索のなかで、テレビ作りの話が出てきた。
これ幸いと思った。定年するまでは、会社人間で何も知らなかったが、 テレビ局に参加したことで、三鷹のことは詳しくなった」
Q むさしのみたか市民テレビ局の魅力は?
「会社には、若い人も年寄りもいるが 同じレベルでは作らない。テレビ局のなかは、高校生も長老も立場は同じ。
ワイワイやりながらモノ(番組)を作る。それが楽しい。

取材VTR(3) 市民が作る地域限定情報 
これまでは、30分番組の「わがまちジャーナル」を月に1本作っていたのですが、
10月から新たに、もうひとつ番組がスタート!
新番組のタイトルは、「吉番」。情報を吉祥寺の町にしぼりこんだ30分番組です。
市民テレビ局のスタッフである大学講師の元村さんと、主婦でありフリーアナウンサーでもある原さんを中心に、地元のライブハウスのオーナーや、ミュージシャンに外部スタッフとして参加してもらい、番組を制作することになりました。番組コンセプトは、「吉祥寺好きが作る、吉祥寺好きのための番組」。

新番組「吉番」のなかのメインコーナー「キチジョウジャー」の撮影が始まりました。
キチジョウジャーとは、これを見れば、誰でも、吉祥寺通、吉祥寺のスペシャリストになれるという地域限定情報コーナー。
第一回目は、「アニ名所」というタイトルで、吉祥寺にある、コミックに関係するスポットを巡るという企画。
リポーターはミュージシャンの南くん、案内役は吉祥寺とコミックに精通している フリーの編集者、竹熊さんにお願いしました。

プロデューサー元村さんのコメント
Q 今回はどんな企画になりますか?
「吉祥寺がなぜマンガの舞台になりやすいのか、マンガ家がたくさん住んでいるからだが、
ではなぜたくさん住んでいるのか?というところまでやりたい。」

移動しながらの撮影は、かなり大変。ロケポイントのサンロード前で、おもむろに武熊さんのふところから、一冊のコミックが。
それに描かれているは、まさに目の前に立っている場所でした。
ただ喋るよりもコミックと対比させながら、 見せるというアイディアが効果的な演出となりました。
広報担当であり、アシスタントも兼ねるOLの赤羽さんは、今回の撮影が初参加。
新番組のことを知ってもらおうと、道行く人にチラシを配っていました。

赤羽さんのコメント
「撮影中、配っていたということもあり、みなさんが注目してくれて もうチラシは半分に減りました。」

編集者・竹熊さんのコメント
Q このような市民テレビ局をどう思うか?
「受け手と送り手がごっちゃになってきた。そのなかのひとつの表れとして こういう活動は面白い。」

新番組「吉番」の「吉祥寺ランキング」のコーナーの取材。
吉祥寺パルコ前に集まったのは、元村さん、原さん、そして、リポーターの女性デュオ「とんかつぱん」のふたり。
普段仕事を持っている方が多いのでそれぞれのスケジュールをあわせることが大変だそうです。
取材現場に到着。 移動式のパン屋さんの取材です。
原さんが注目したのは、若い女性2人でやっていることと、見た目も、味も評判のパンの魅力に惹かれたからです。
原さん、ここの人気パンを、ランキング形式で紹介しようと考えています。

撮影してきた映像は、パソコンで編集。
編集は元村さんと原さんの共同作業。ディスカッションをしながら、編集作業を進めていきます。

原さんのコメント
Q 今回のアニメをテーマとした吉祥寺の取材は、どんなところに編集のポイントを?
「いろんな吉祥寺のポイントが出てくるし、それに加えて吉祥寺と、アニメの関係も話していただいたので、
それがひとつの吉祥寺の魅力でもあるので、アニメでもこんなに話題があるということを出していきたい」

スタジオ収録を明後日に控えた原さん、自宅で台本を作成。スタジオは、
出演者が先日取材した映像を見ながら進行していくことになっています。

10月8日(土)。いよいよスタジオ本番の日。新番組の初めてのスタジオ収録ということもあり、すべてが手さぐり。
ロケ取材した映像を流すためのモニターもセット。赤羽さんはスケッチブックを用意してきました。

赤羽さんのコメント
「テレビを見て、カンペを使っているところを参考にして出演者に見せようと思う。」

進行役のミュージシャン持田さんに段取りの確認。
全員そろって打合せできるのは収録直前。個別に必要なことを伝えていきます。

原さんのコメント
Q どんなことを出演者に伝えましたか?
「自由にやってもらいたいが、キーワードだけはおさえて「これだけは言ってね」という部分は、伝えた方がいいと。
メモも渡さないのでカンペで納得していただこうかと。」

番組収録の本番がはじまりました。原さんが作った大きな流れの台本はありますが、
キーワードだけをカンペに出してのフリートークで進行していきます。
若いエネルギーにあふれ、吉祥寺の新たな魅力を伝える新番組「吉番」。
無事本番も終了。

原さんの話
「なんとかうまくいったと思います。課題だと言っていたカンペのめくりは、目で合図しながらやったが大丈夫だったと思う。」

ついに「吉番」、第一回目の番組完成。元村さん、原さんをはじめ市民テレビ局のスタッフが局に集まりました。
出来上がった番組の上映をして、色々意見を出し合います。試写会後は和やかな中にも、厳しい意見や、反省点が次々と出てきました。
それらの貴重な意見を元に、新しい番組の次回へとつなげていきます。

原さんの話
Q むさしのみたか市民テレビ局の魅力は?
「一から関われることがすごく楽しい。 交渉ごとも全部自分たちでやった。
街の人とそういうことでもなければ会って話しをすることもない。番組を一から作ることで、街とのかかわりができた」

むさしのみたか市民テレビ局 津田さんの話
Q むさしのみたか市民テレビ局が成功した理由は?
「集まった局員たちが、それぞれの考えや意見をお互いに闘わせながら番組を作ってきた。
市民という立場から自由に番組が作れたということが成功した一番大きな原因ではないか」

 スタジオ 
吉澤: リタイア組が中心になって作る番組があったり、若い世代が作る新しい番組が誕生したりと、
この市民テレビは、多様な広がりをしていますね。
矢島: みなさん、番組を作る楽しさだけではなく、取材先でいろんな人と コミュニケーションができることを大切にしていました。
吉澤: テレビを使ってまちづくり、というのは情報をただテレビで発信するだけではなく、
市民同士、交流を深めながら、みんながまちづくりに参加していくことなんですね。
この「むさしのみたか市民テレビ」はまだ開局から5年。これからもいろんな新しい可能性が出てくることでしょう。

放送番組審議会からの報告》
10月21日に開催された放送番組審議会では、「ビートたけしのTVタックル」について審議されました。
「ビートたけしのTVタックル」は、毎週月曜日の夜9時から放送。
政治家ほか毎回多彩なゲストを迎え、激しいトークバトルで世相を斬り、高い視聴率を記録している社会派情報バラエティです。
次のような意見がでました。

ゲストが固定化し、アクが強くなった。
でも、このままで良い。いい意味でのマンネリズムで時代の流れが良く分かる番組だ。
中身が濃く面白い。
スタッフの気概、苦労がうかがわれる。
VTRも多角的に良くできている。
バラエティであるなら風刺をきかせて、考える娯楽番組になって欲しい。
若い政治家を集めて討論するなど、インターネット世代の若者も取り込めるような企画が欲しい。
「勉強になりつつ楽しめる」を定着させた、テレビ史的に大きな意味を持つ番組だ。

以上、放送番組審議会からの報告でした。
番組では、テレビをご覧の皆さまからのお問い合わせ、ご要望をお待ちしています。


次回の放送は、11月20日(日)の予定です。