● ● ● ● 10月16日 ● ● ● ●

司会 吉澤 一彦 (テレビ朝日アナウンサー)
矢島 悠子 (テレビ朝日アナウンサー)
ゲスト デーブ・スペクター(テレビプロデューサー)

【放送内容】
“外国放送局の東京支局は今日本の何を伝えているのか”
韓国は「KBS」、アメリカは「CNN」,ヨーロッパからドイツの「ARDドイツテレビ」、
アラブ諸国からヨルダンの「ペトラ通信」の4社を取材してどんな情報を発信しているのかを紹介します。

 VTR 

先日の「総選挙」のニュースを外国放送局の特派員たちは、どのように伝えたのでしょうか。

アメリカ・CNNが伝えた総選挙
「小泉総理は、この選挙で政治に無関心だった日本人を驚かせました。
彼は、この選挙を“古い日本”と“新しい日本”という対決として演出しました」

韓国・KBSが伝えた総選挙
「このような圧勝は、郵政民営化を推進する自民党が“改革勢力”で、それに反対する野党は“反改革勢力”とした小泉総理の選挙戦略が見事に当たったと見られています」

ドイツ・ARDが伝えた総選挙
「今回の選挙で勢いがついた国民は、基礎的な改革を恐れることなく、政治家をも 奮い立たせることができることを示した」


 VTR 

<韓国 KBS>

韓国放送公社、KBS東京支局は、NHKの中にオフィスがあります。
昨年7月に来日した特派員のヤン・ジウさんは、早朝4時に出社。朝刊全てに目を通し、
主なニュースをまとめて韓国の本社へと送ります。そして本社からの要請を受け、取材を始めます。
1974年に開局したKBS東京支局は、韓国のスタッフが10人と日本人スタッフ3人の合わせて13人。
他の外国放送局の支局に比べればかなり規模は大きいといえます。

ヤン特派員インタビュー
(Q東京支局をもつ理由)
「1970年代、80年代は韓国にとって日本の経済はとても立派なのでいろいろ学ぶべきことがたくさんありました。その頃、韓国は経済成長が始まったばかりで“日本は重要な国だ”ということで支局を開局しました」



この日、ヤンさんは、東京・世田谷の家電量販店に取材に出かけました。KBS東京支局では平均して月に40本ものニュースを韓国本国に配信しているそうです。一体どんなニュースを送っているのでしょうか。


ヤンさんインタビュー
(Qどんなニュースを送るのか)
「特に今年に入って韓日の良い関係に望ましくないことがたくさんありました。
韓国に関連のある歴史や外交問題に関すること、たとえば小泉総理の発言や町村外務大臣の発言、細田官房長官の発言とか」



KBS東京支局が今年配信した主なニュース
(1)総選挙 自民党圧勝
(2)島根県の竹島についての条例が通過
(3)中学校の歴史教科書問題
(4)国連常任理事国入りの動き
(5)北朝鮮による日本人拉致問題〜横田めぐみさんの遺骨は偽ものだった


日本との緊張関係がうかがえますが、こんなユニークなニュースも・・・。


ニュース「東京ゲームショー」
幕張で行われたゲームショーでは、インターネットオンラインゲームとして日本国内でトップをいく韓国の「ラグナロク」が相変わらずお客さんの注目を集めていました。

(ヤン特派員リポート)
「日本がオンラインゲームをし始めたのはあまり昔のことではないので、オンライン
ゲーム大国である韓国の活動の余地はたくさんある」という言葉が韓国の企業から出ています。

取材したテープは、編集されたあと、インターネットを通じて韓国のKSB本社へと送られます。


ニュース「キーワードは“省エネ”」
電気代がとても安い韓国で、家電製品を買うときのポイントは省エネではなく、たくさん物が入ること!ところが日本の消費者は・・・
( 家電量販店 店員の話 )
「購入の決め手になるのはやはり電気代がいかに安く上がるか」

「省エネ」の技術では日本に遅れをとっている韓国の企業は、日本での販売競争で苦戦しているのが現状です。

(ヤン特派員リポート)
「日本の消費者の“省エネ”志向は、韓国の企業が日本に進出する際の大きな壁になっている」
という質問にヤンさんのこんな答が返ってきました。


ヤン特派員インタビュー
(Q東京支局が今抱えている問題)
「一人の特派員が経済、政治、外交、科学、台風、地震など災害の問題までカバーしてリポートしなければいけない。でも一人でいろいろな専門知識を持っているはずがない。日本という国の重要性を考えれば特派員の数を増やすほうが良いと思います」

スタジオ1

デーブ・スペクターさんの話
「韓国と日本は近いから政治、文化など共通の話題が多い。だから配信するニュースも多い。特派員にとってはかなりやりがいがあるのでは。また韓国の放送局では日本のニュースを配信しているだけでなく、日本の番組の作り方やメディアのあり方などノウハウをいろいろ学んでいる。つまり研修目的で来ている人も多い」



 VTR 

<CNN東京支局>

CNNは、世界で唯一の24時間ニュースネットワークとして1980年に開局。
現在、世界中に36の支局を持ち、アジアにも東京、ソウル、北京など9つの支局があります。

東京支局は、1982年に開局。スタッフは5人。日本人のプロデューサーや技術スタッフ4人。
そして、ただひとりのアメリカ人が特派員のアティカ・シューベルトさんです。

アティカ特派員インタビュー
(Q東京支局をもつ理由)
「CNNだけではなく他の放送局にとっても日本の経済は非常に強い力を持っています。
そのことだけでもここに支局をもつ理由になると思います」



CNN東京支局が、世界に向けて発信しているのは日本のどのようなニュースなのでしょうか。


アティカ特派員インタビュー
「速報性のあるニュースがあればそれが優先されます。それが選挙であったり列車事故であったりそういった速報性のあるニュースを視聴者は見たがっていると思います。世界では環境問題、健康問題、政治などに対する日本独自の対処方法に興味を持っています」



CNN東京支局が今年配信した主なニュース。
(1)総選挙 自民党圧勝
(2)戦後60周年〜戦争の遺産
(3)自衛隊イラク駐留
(4)ジェンキンスさん問題
(5)変貌する日本社会〜長寿国日本 出生率の低下 晩婚化

戦後60周年のリポートは、こんな内容でした


ニュース「戦争の遺産」

(アティカ特派員リポート)
「8月15日は降伏から60周年です。何千人もの人がこの靖国に集まります」

アティカさんは、元兵士や遺族を取材、今なお日本人の心の奥底にどのような深い悲しみが残っているのかリポートしました。

(アティカ特派員インタビュー)

「戦後60周年記念の番組は私にとって戦争の遺産に深く向き合った最初の経験でした」


ニュース「変貌する日本社会〜高齢化・少子化」

(アティカ特派員リポート)

「日本は、世界でも有数な長寿国でしかも老人は健康であるとともに深刻な少子化問題を抱えています」

大車輪のCMでも有名な野末 実さんを取材。元気の秘密に迫ります。老人たちに必要な年金と医療費。
これを支える若者たちが年々減っている、という少子化問題のきびしい現実もリポートしました。

(アティカ特派員インタビュー)
「世界では環境問題、健康問題、政治など普遍的な問題に対する日本のユニークな対処 方法にとても興味を持っています」


ニュース「ジェンキンスさん問題」

(アティカ特派員インタビュー)
「ジェンキンスさん自身の話や彼の家族の話は他にはないドラマチックな話で、それを聞いた人はみんな心を奪われる。この問題が日本だけではなくほかの多くの国で解決されていく過程が放送された。私たちは自分たちのカメラを通して問題が解決 され良い結果で終わったことを幸運だと思う」

リポートは、インターネットを通じてアトランタのCNN本部へ送られ、生中継というかたちで放送されます。大きな事件や事故が起きた時はこんな風にして1日に20回以上、中継を行ったりすることがあるそうです。


アティカ特派員インタビュー
(Q特派員としての日本の印象)
「総合的に見ると働くのに非常に良い国だと思います。人々は友好的だし、テレビのインタビューも協力的で予定したことは時間通り進む、テレビの人間にとってはこんなに良いことはない」


 VTR 

<ARDドイツテレビ東京支局>

ARDドイツテレビ東京支局は、渋谷の閑静な高級住宅地にありました。
この放送局は、非営利を目的とする公共テレビです。東京支局を開局したのは1969年。
36年も前のことです。スタッフは、7人。特派員や技術スタッフ4人が本国ドイツから来ています。
一人一人に個室が割り当てられています。他の外国放送局の支局と比べて、かなり恵まれた環境です。

マリオ特派員の話
(Q東京支局をもつ理由)
「日本は今も昔もインフラが整備されていてニュースを作るにあたってとても便利でここ日本から支局がカバーする韓国、北朝鮮、台湾、フィリピン、南太平洋の島々に出かける方が、逆に韓国に支局を置いて日本に時々来るよりも全然良いから。それから日本から発信できるテーマがたくさんあると考えているので日本に支局を置いている」


支局の中にあるスタジオで生中継を行ったり、VTRを衛星回線を通じてドイツ本国に送ったりします。平均すると1週間に3,4本のニュースを送っているそうです。

マリオ特派員の話
(Q ARDドイツテレビのニュース選びのポイントは?)
「世界的に見て重要だとされるニュース、例えば日本の選挙とか、経済大国第2位の、日本の政治経済の行方はもちろんニュースとして出すのは当然ですが、変わったニュースとしては、ナンパの仕方を教えている人とか、奇人変人の話題も出したりします。その他政治的な問題・・・従軍慰安婦の問題や靖国神社の問題など自分たちでニュースを決めて放送しています」



ARDドイツテレビ東京支局が今年配信した主なニュース
(1)総選挙 自民党圧勝
(2)JR福知山線列車事故
(3)雅子様の苦悩
(4)愛知万博 ロボット
(5)高齢化社会の問題


ニュース「雅子様の苦悩」

(マリオ特派員インタビュー)
「皇室に関する関心はヨーロッパでは高いです。ドイツでもタイミングがあれば必ず出します」

体調を崩され外出することも少なかった雅子様が久々に姿を現しました。このときのマリオ特派員のリポートです。

(マリオ特派員リポート)
「いつかまた雅子様が再び公務をとることが出来るだろうと医者は予想しているけれど皇室がより自由を与えるという予想は立っていない」


ニュース「高齢化問題」
マリオ特派員は、日本の高齢化問題も大きなテーマとして取り組んでいます。
定年を迎える高齢者を再雇用し、高齢者の労働力を活用している日本の企業の姿を紹介しました。
日本と同じように高齢化社会を迎えるドイツ。日本から何が学べるのか、大変関心を持っているということです。


マリオ特派員 インタビュー
(Q特派員として日本で仕事をすることについて)
「日本で仕事をすることは楽しいし、楽しいだけじゃなくて良い仕事が出来ています。
どこに行ってもみんな取材には協力的で、面白いテーマがたくさんあり面白い人たちもたくさんいます。だから一日が24時間でなくてもっと長かったらいいなぁと思っています」



スタジオ

デーブ・スペクターさんの話
「CNNは世界初の24時間ニュースネットワークとして25年前に開局。東京支局のスタッフはわずか5人と少ないが、そのメリットを最大限に生かして少人数で小回りのきいた取材を行って世界的に評価されている。他の放送局がその手法をマネたりしている」

「日本はネタの宝庫。いつも新しいものがある。今紹介したCNNやARDドイツテレビや、KBSの東京支局はかなりやりがいを感じているのではないかと思う。ただ放送局によっては本国にせっかくニュースを配信しても月に1,2本しか放送されない現実もある。だから放送局によってはニュースを送ってもなかなか放送されないと強いフラストレーションを感じてやる気をなくす特派員もいると思う」

「一人の特派員が一体何年同じ場所に駐在するべきか、という問題が昔からある。
例えば日本に長くいて日本のことを知り尽くしてしまうと客観性がなくなってしまい、 何もかもニュースとして送ってしまう。逆に日本に来たばかりの特派員は知識がないのですべてが新鮮で、例えばカプセルホテルのニュースとかありがちな、安易なニュースを送ってしまうということがよくある。どちらが良いのか未だに結論が出ていない」



 VTR 

<ペトラ通信>
書類に目を通しながら慌ただしく歩く外国人。ヨルダンの国営通信局「ペトラ通信」のカルドン・アズハリさんです。
「ペトラ通信」東京支局は、昨年6月に開局しました。
スタッフは、ジャーナリストのアズハリさんに、通訳と秘書の合わせて3人です。

アズハリさん インタビュー
(東京支局をもつ理由)
「私はペトラ通信の仕事だけではなく、他の仕事もしています。日本からアラブ諸国に直接ニュースを配信するには“信用”という意味でもオフィスを構えることは必要不可欠なのです」


実は、アズハリさんは、アラビア諸国の新聞社や、テレビ、ラジオなど数多くのメディアに、日本のニュースを配信しているのです。

昼食の時間。大好物だという「ウナギ」を食べながらもニュースのチェックを怠りません。
アラブ諸国に向けてどんなニュースを配信しているのでしょうか?


ペトラ通信東京支局が今年配信した主なニュース。
(1)総選挙で自民党圧勝
(2)自衛隊イラク駐留
(3)原油価格上昇による日本経済への影響
(4)日本の株式市場
(5)新潟県中越地震


アズハリさん インタビュー
「原油価格の上昇による日本経済への影響」に強い関心をもっています。
なぜならば私は、日本のマーケットを意識している産油国にもニュースを送っているからです。そして毎日のニュースなのですが「株式市場について」も特に関心をもっています。特に今日は日経平均13000円なので株価を追っている人々にとっては大変興味深いです」



午後4時30分、アズハリさんはあわててオフィスを出て行きました。CNBCアラビアの番組に出演するためです。虎ノ門から愛宕まで急いで歩いて10分、ようやくスタジオに到着。本番まであと5分。なんと、生放送のためのセッティングをアズハリさん一人ではじめました。別の作業をやっている人たちを気にすることもなく、放送機器のセッティングまですべて自分でやっています。カメラの前に座り、スタンバイしたアズハリさん。
カメラマンも、制作スタッフもいません。当然、事前の打ち合わせもありません。

午後4時45分。生中継が始まりました!アズハリさんが出演しているのはCNBC Arabiaの番組「マーケット」。ドバイからアラビア諸国に向けてアジアのマーケット情報を毎日伝えています。
この日アズハリさんは、「日経が13000円を上回り13500円に近づいてきました。小泉首相の勝利が投資家に対して日本経済と金融商品の安定をもたらしそれは彼なりの改革にもなった」とリポートしました。

生中継は無事終了。日本でジャーナリストの活動をすることについてアズハリさんはこう語ります。


アズハリさん インタビュー
「ジャーナリストとして日本で働くことはとても興味深いことです。なぜなら世界中のVIPたちがたくさん日本に来るからです。私は日本のニュースだけではなく、ほかの国際ニュースも配信しています。毎週のように世界のVIPたちがやってくるということは私にとって良いニュースの題材になります。ジャーナリストとして日本で働いているといろいろなキャリアを積むことが出来るので私にとってはとても良いことなのです」


スタジオ

デーブ・スペクターさんの話
「現在、世界的に中国が注目されていて、実際各国の放送局は中国に支局を構えようとしている。日本はネタが豊富だが、物価が高いので月に1,2本しかニュースが放送されないのであれば支局を撤退して、必要な時は提携関係を結んでいる日本の放送局から映像を借りれば良い、と考えている放送局もある」




「ドラえもん募金」のお知らせ
テレビ朝日では、パキスタン北部地震による被災者を援助するため、ドラえもん募金を行っています。
電話一本で100円を寄付できるシステムです。


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次回の放送は、11月6日(日)の予定です。