吉澤 |
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来月で「ワイド!スクランブル」の司会を担当して8年目を迎えますが。
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大和田 |
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あっというまの7年間でしたね。
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吉澤 |
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担当初日、生放送の衝撃的な洗礼を受けられたそうですが。
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大和田 |
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放送前日に「和歌山・毒物混入カレー事件」容疑者が逮捕され、予定していた番組内容ががらっとかわってしまった。
当日、番組が始まっても、カメラの後ろをスタッフが走り回って、居たんです。そして次から次へと「ここ!中継」、「次はここ!」みたいな感じで指示が出されて・・・。
カメラの後ろで起きている騒然とした様子を、視聴者にどうやってみせないでやるか、何も考えないで、勢いでやってしまったという感じでしたね(笑)
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吉澤 |
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大下さん、その時の大和田さんはどうでしたか?
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大下 |
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予定では、「ご家庭では、どんな旦那さまなんですか?」とか、「ダブルオーコンビでお送りします」みたいな感じでやるつもりだったんです。それがいきなり報道特別番組みたいになってしまって。「獏さんすごいですね、いきなりこんな展開になってしまってるのに」と聞いたら、「演技でキャスターを演じている自分になろうと思ったら、少し落ち着いた」と言ったんです。
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大和田 |
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もちろん今、キャスターを演じてるわけではないのですよ。当時経験のないことをやっているわけですから、役者の習性で、そうやっていたんだと思います。
司会になってはじめての放送が終わり、家に帰って番組を録画したビデオを観ようと思ったのですが、怖くて観ることが出来ませんでした。
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吉澤 |
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その他にも「生放送ってこうなのか」って瞬間はありますか?
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大和田 |
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時間に追われているじゃないですか。「あと何秒 何秒!」という世界ですし、予定通りいかないじゃないですか、生放送って。放送中に流すビデオが間に合わなかったり、予定していたフリップがないとか・・・。そういう時はぞ~としますね。
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吉澤 |
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でも生の魅力に魅せられた部分もありのでは?
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大和田 |
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時間通りに終わるってことですかねぇ(笑)
ドラマなんか撮っていると、夕方5時に終わるといっていたのが、夜の7時8時になることがある。
生放送の場合は始まってしまえば時間通り終わります。始まってしまえば、途中でストップ出来ないから、開き直るしかない。ビデオがこなかったら二人で話しを繋ぐしかない。
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吉澤 |
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最初にキャスターの依頼を受けたときは?
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大和田 |
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正直言って、それまでワイドショーはあまり見なかったし、話を頂いたときは「えっ?なんで僕なんだ?」という気はしました。ただ、ワイドショーというのは、どんな形にしろ、人間を扱っている。これは役者にとってプラスになるのではないかと、興味が沸いてきたのです。やってもいいかなと。
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吉澤 |
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ただ、きちっとした生活が嫌で役者になられたと聞きましたが、なぜ毎日の生放送に?
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大和田 |
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やってみて、そうだ、そうだったんだと思いました(笑)
毎日朝、同じ時間に起きて「やじうまプラス」を観て、ああ、こういう話題があるのか、こういうニュースがあるのか。こういう風に伝えているのかとチェックしています。8時に家を出て9時に局へ着いて、打ち合わせ、本番、1時05分には終了していう規則正しい生活・・・。
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吉澤 |
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それが月曜から金曜まで!
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大和田 |
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俺はなんでこんな規則正しい生活をしているのか(苦笑)
これが嫌で役者になったのになあと思いました(笑)
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吉澤 |
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7年間を振り返って、印象に残っている出来事は?
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大和田 |
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まず2001年、小泉政権誕生ですね。
ワイドショーで連日のように取り上げていましたよね。
あの頃からじゃないですか?ワイドショーで政治を扱うようになったのは。それはそれで面白かったのですが。
政治を扱うなんて夢にも思わなかった(苦笑)
それから衝撃的だったのが、同じ年の2001年、ニューヨークの9・11アメリカ同時多発テロです。
和歌山の時と同じく、次の日の予定が全部ひっくり返って、それこそ、その場、その場で伝えていかなければならない。もの凄い悲劇で、もの凄い惨状だったじゃないですか。もう寝るとあのビルが崩壊していく映像が浮かんできて、なかなか寝ることが出来ない日々が続きました。あれは僕の中で衝撃的な出来事でした。
そして次の年の9・17 小泉総理、訪朝、日朝首脳会談。
その後出てくる拉致被害者の問題・・・。これも伝えていて辛かった。
この番組をやっていく上での分岐点になった出来事です。
その辛い中にも人間味だけは失わないよう心がけました。
拉致被害者家族の横田夫妻にも何度かスタジオに、お越しいただきました。お会いしたとき「なんていい人なんだ」、人格的にも素晴らしい人達でした。それが、どうしてこんな悲しみ苦しみを味あわなければならないのかと、ずっと胸に突き刺さるものを感じていました。
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大下 |
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私もかなり大和田さんと重なるところが多いですね。
いけないなと思うのは、悲惨な事件とか、事故が多くて、当たり前に思わなければいけないんじゃないかという感情が、欠落しているんじゃないか?ということが気になりますね。何かこう、刺激に感じなくなっているのではないかと。それがいつも恐ろしいですし、冷静に伝えなければいけないというアナウンサーの仕事と同時に、痛みを共有しなければというところで、やればやるほど難しさを感じます。
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吉澤 |
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俳優とキャスター、ふたつの仕事には大きなギャップが違いがあると思いますが。
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大和田 |
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違いますね。
一番大きな違いは仕事の終わり方ですね。役者の場合は、役作りの苦労はありますが、役を演じきって、終わったときは「おつかれさま!」となれますが、キャスターの場合は台詞を覚えなくていい、役作りをしなくてもいい、だけど正確に伝えなければならない。
さらにその伝えていることが本当のことであると。たとえば、悲劇だったら、本当の悲劇なんですね。「生放送終了です、おつかれさま!」って言われても終われないのですよ!ですから、もうひとつ作業が必要で、「どっこらしょ」と、それをおろし、少し時間が必要なわけです。
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吉澤 |
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その辺の気分転換はどうされてるのですか?
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大和田 |
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大下アナの顔を見て癒されるとかね(笑)
スポーツクラブ行って汗流すとか、お酒が好きなので、酒を飲むとか、家族のだんらんや愛犬と戯れるなど、そういうなにげないことで気分が変わることがありますね。
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吉澤 |
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健康管理はどのように?
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大和田 |
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身体に自信がないのでセーブするようになりましたね。
たとえば飲みに行っても、何時までには必ず帰ろうと。12時をまたがない、シンデレラのような日々です。(笑)そういった意味では自主規制しています。それでも金曜日や土曜日は結構飲んでしまうことが多いですけど(笑)
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吉澤 |
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大下さん、体調不良とかは?
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大下 |
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多いですねぇ(笑)
毎日私は会社に行けるのだろうかと・・・。
朝は甘いものをしっかり食べるようにしています。
菓子パンとかチョコレートとか(笑)
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吉澤 |
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ニュースを聞く立場から伝える立場になって、どんな気持ちで伝えていますか?
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大和田 |
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まずは正確に伝えてなければならない。
もうひとつは偏ることなく中庸であるべきだと。
自分の視点を真ん中においておくこと。
どんなニュースでも人間味を忘れないで伝えていきたいです。
もうひとつは想像力を働かさせていたいです。
一方だけ見ていると見えないことでも、裏側から見てみると違った形で見えてくることってあると思うんですよね。
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吉澤 |
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芸能ニュースを扱っているときって困りませんか?
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大和田 |
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正直困りますね(笑)
ただ仲間意識がありますから・・・でも仲間だからって、甘くなるということではなくて、仲間だからきちっと伝えなければならないことがあると思うんですよね。
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吉澤 |
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来月にはいよいよ8年目、どんな番組にしていきたいですか?
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大和田 |
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8年目だからといって、特別なことはなくて、今までやってきたことを大事にしていきたいです。
さらにワイドショーですから、もっと“ワイド”にいきたい。
“ワイド”な視点で扱っていけるものが、もっとあると思います。
今の芸能ネタだけですと、幅が狭いではないですか。たとえば小さな劇団でも、やっている芝居でいいものが多くあるのです。あまり宣伝されていないけど、いい映画とか、そういうものを紹介していけるような、番組にしたいですね。
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大下 |
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分かりやすく、正確に、楽しく、お伝えすることしかないですね。
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吉澤 |
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視聴者の方たちは期待していると思います。
今日はどうもありがとうございました。
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