● ● ● ● 2月6日 ● ● ● ●

司会 吉澤 一彦アナウンサー
上宮 菜々子アナウンサー
スタジオ出演 千葉大学 教育学部  藤川 大祐 助教授


【放送内容】
メディアリテラシー研究に取り組まれている千葉大学の藤川大祐先生をスタジオにお招きして、小学生の番組制作の様子をお伝えします。小学生達は、テレビ番組を作るプロセスで、何を感じ、何を学ぶのでしょうか。

メディアリテラシーとは・・・
「メディア・リテラシーとは、メディアはどのように機能するか、メディアはどのように意味をつくりだすか、企業や産業としてのメディアはどのように組織されているか、メディアは現実をどのように担っているかについて学び、国民のメディア理解とその便益の享受を促進する目的で行う教育的取り組みである」
※ メディアリテラシー先進国・カナダの「メディアリテラシー協会」(Association for Media Literacy)の定義


商店街を盛り上げよう!
  今回番組を制作するのは、千葉大学教育学部附属小学校6年3組です。この小学校は、千葉大学の広い敷地のなかにあり、生徒数はおよそ1000人。6年3組の生徒は総勢39人。担任の向井 浩二先生が中心になって映画を作ったり、広告を研究したりと、ユニークな授業を行っています。その評判を聞きつけたのが地元の「ゆりの木商店街」の人たち。商店街のPR番組を作って欲しいとお願いにやってきました。 

「ゆりの木商店街」の元会長で美容院を営む海保 真さんが、6年3組のみんなにビデオを見せながら、商店街の説明をします。附属小学校の生徒のほとんどは区域外から通ってくるため、近くにありながら商店街のことをよく知りません。初めて聞く話ばかりで、興味がつきない様子です。

西千葉駅を降りるとまっすぐ伸びる道路のすぐ左手に広がるのが千葉大学。「ゆりの木商店街」は、大学沿いに伸びるこの道路の反対側に面しています。お店の数はおよそ30軒。すぐ裏には住宅街がひろがっていて、「ゆりの木商店街」を利用するのは、ほとんどがこの住宅街の人たち。そのため、週末でも商店街周辺は閑散としています。そこで商店街を活性化させるために考えられたのが、「ピーナツ」と呼ばれる「地域通貨」。割引きサービスに利用できるこの「地域通貨」などで頑張ってきたのですが…。

「ゆりの木商店街」元会長 海保 真さんの話
「商店街として一度も発展したことがない。このさびしい街を、いい街にしたい」

6年3組の子供達の話
「お店がいっぱいあることは知らなかった」
「どんなお店があるのか、いろいろと自分の目で見てみたい」

こうして、6年3組に「ゆりの木商店街」のPR番組を作る「西千葉ゆりの木プロジェクト」がスタートしました。

千葉大学 教育学部 藤川 大祐 助教授のコメント
〜子供達は実際に番組作りを体験することで、何を学ぶのでしょうか?〜
「メディアリテラシー教育の主眼は、番組を作ることで送り手の立場を学び、メディアの本質を理解することですが、実際には“番組を作っておしまい”という授業が多く見受けられます。今回は何のために、誰のために番組を作るのかということをはっきりさせた上で、小学生達にとって身近な現実の社会の問題を取り上げ、そのことで、この授業を生きた実践の場にしようというねらいが見て取れます」

 
まず、役割・テーマを決めよう!
  テレビ局では、どのように番組を作っているか・・・「はい!テレビ朝日です」吉田 知則 プロデューサーがテレビ番組を作る時のスタッフの役割、分担について説明しました。いつも何気なく見ているテレビ番組ですが、たくさんのスペシャリストたちが参加して作られていました。これを初めて知った子どもたちは驚いたようです。

(テレビ番組制作スタッフの役割)
プロデューサー: 番組の方向性を決め、スタッフ・出演者を決め、予算の管理をする。
ディレクター: 番組を作るための現場責任者。ロケ・スタジオ撮影の指示をカメラマンにして、編集を行い番組を完成させる。
AD: ディレクターの作業が円滑に進むよう、制作上の雑務一切を取り仕切る。
構成作家: ディレクターと打ち合わせながら、番組を全体的に構成し、ナレーション原稿を書き上げる。
レポーター: ロケ(時にはスタジオも)撮影現場で、レポートをする。
キャスター: スタジオで、番組を進行する。
ゲスト: 放送するテーマに沿った専門家などをスタジオに招き、コメントして頂く。

(テレビ番組技術スタッフの役割)
カメラマン: ロケ・スタジオ撮影において、ディレクターの指示の下、撮影を行う。
音声: ロケ・スタジオ撮影において、円滑な音声収録を行う。
照明: ロケ・スタジオ撮影において、円滑な映像収録のためのライティングを行う。
VE: スタジオ撮影において、円滑な映像収録のための色調の調整を行う。
編集: 編集所でディレクターの指示の下、編集やテロップ挿入などの画像加工を行う。
MA: 編集所やスタジオで、ナレーションの収録をしたり、BGM・効果音の挿入を行う。

テレビ番組作りの役割分担を参考に、39人を5つのチームに分け、それぞれ3分間の商店街のPR番組を作ることになりました。担任の向井 浩二 先生の合図で、クラスのみんなはチーム作りをはじめました。

「ゆりの木商店街・全体PR」
元商店街会長の海保さんを案内役にして、商店街全体の魅力に迫るPR番組を作ることに。
・小守谷 慶太 プロデューサーの話
「一箇所に止まらず、全体を見たほうが楽しそう」


さっそく、海保さんに電話で出演交渉することに。出演交渉なんて、なにしろ生まれて初めてのこと。クラスではリーダー的存在の小守谷プロデューサーですが、かなり緊張している様子。慣れない敬語を使う表情はとても真剣。その結果、熱意が通じたか、見事交渉成立。プロデューサーの大役を果たしました。

「グルメリポート」
3つのお店をリポーターが食べ歩き、その魅力を伝えます。
・市川 恵梨佳 プロデューサーの話
「グルメリポートは、見る人がおいしそうだと思って、商店街にいっぱい人が来てくれると思った」 。


「憩いの空間 "コーヒーショップ 古時計"」
隠れ家的な雰囲気の漂う喫茶店を紹介。マスターのコーヒーへのこだわりにも迫る。
・宮内 優 プロデューサーの話
「雰囲気がよくて、心がなごむお店を紹介する番組を作りたかった」


「ゆりの木商店街のおしゃれなショップ」
ゆりの木商店街でしか手に入らないものも!隠れた名店を紹介。
・八田 彩 プロデューサーの話
「グルメは他のチームがやっているので、身につけるものを選んだ」


「畳屋さんに密着」
職人の仕事ぶりに迫る。畳作り体験も!
・平岡 修 プロデューサーの話
「畳屋のおじさんが、熱心に畳の説明をしているVTRを見たから」



こうして、5つの作品のテーマが決まりました。次はいよいよ「ゆりの木商店街」のリサーチに入ります。

・6年3組担任 向井 浩二 先生の話
「内容が具体的になっているので、見学(リサーチ)に行っても、有意義なものになると思います」


 
リサーチに出発!
  「ゆりの木商店街」のリサーチは、5チームがそろって出かけました。商店街は小学校から歩いて10分。さっそく、実際に商店街を取材して回りました。今回は、上宮アナウンサーも参加。小守谷 慶太 プロデューサーのチームに同行しました。
向井先生から、リサーチについてのポイントをまとめた用紙が配られました。リサーチで大切なことは、なぜ?どうして?何が?と起こっていることの要因を自分なりに突き止めること。取材対象に魅力を感じること、物、人の「裏にかくされた秘密」を探ることです。「わからないこと」「理解できないこと」をそのままにすると、人に伝えることはできません。今回は、各チームがデジカメで写真を撮りながらリサーチをします。みんなどんな写真を撮ってくるのでしょうか。


「ゆりの木商店街・全体PR」チーム 
まずは、海保さんの美容室。プロデューサー担当の小守谷君が店先の写真を撮っています。実は、ここに、商店街全体をPRする上で欠かせないあの「地域通貨」のポスターが張ってありました。当然、この場で海保さんに話を聞くべきだったのですが…、大切なことに気づかないまま行ってしまいました。

海保さんのすすめで、次に訪れたのはお隣の「ぎやまん亭」、ちゃんぽん皿うどんのお店です。ここは、アポなし飛び込み交渉!ところが!?湯気の向こう側から顔を出したのは、優しそうなご主人。でも、お昼時が過ぎるまで待って欲しいと言われてしまいました。

POINT
〜たとえ話を聞けなくても、店の雰囲気を見るだけでも、リサーチになるし、その後の取材につながる〜


そして、次に行ったのは、店の人全員が中国人の本格的な中国料理店。店員さんに「日本語は苦手なのよね」と言われ、プレッシャーを感じ、みんなは無口になってしまいました…。結局、何も聞けなかったのです。

POINT
〜基本的な質問事項は事前に用意しておく〜


千葉大学の塀沿いになっている反対側の歩道へやってきた子供達、ここで海保さんからアドバイスが・・・

・「ゆりの木商店街」元会長 海保 真さんの話
「同じ道路沿いでも大学側の歩道にはお店が無い。ここを歩いている人々を、商店街側に引きつけるような画作りを期待してます」


1時間ちょっとの貴重なリサーチでしたが、手ごたえは、今ひとつのようでした。

「グルメリポート」チーム 
チームが最初に訪ねたのは、「ゆりの木商店街全体PR」チームが先ほど訪れたちゃんぽん皿うどんの「ぎやまん亭」、やはり、今は手が離せないと言われてしまいました。出足をくじかれ、「グルメリポート」チーム一同は、少し、しょげてしまったようです。「はい!テレビ朝日です。」のスタッフが「こういうことはよくあるよ‥」と励ましますが、元気が出てきません。がんばれ!

POINT
〜お店の人に話を聞く際には、事前に相手の都合をきちんとうかがうことが大切。今回は、リサーチ時間とお店の仕込みが重なってしまいました〜


「憩いの空間 "コーヒーショップ 古時計"」チーム
取材チームはなにやら急いでいます。プロデューサーの宮内さんは、前日にお店を訪ね、早い時間にきて欲しいと、ご主人から言われていたからです。"コーヒーショップ 古時計"は、アンティークな小物がディスプレーされた居心地のいい空間と、コーヒーへの愛情に満ちたマスターが一杯一杯注ぐオリジナルのコーヒーが自慢のお店です。

さっそく、マスターにインタビュー開始。次から次へと、コーヒーへのこだわりを熱く語るマスターに圧倒される一同。ユニークなメニューの名前の由来や、豆の熟成法、材料にこだわったケーキの数々など、PR番組に盛り込みたい要素が一杯です。かなり充実したリサーチができたようでしたが、実は、とても大切なことをやり残していました。


「はい!テレビ朝日です。」スタッフ:
「コーヒーやケーキは味わってみないの?」

"コーヒーショップ 古時計"の取材班一同:
「味わってみたいけど、そんなこと言えない・・・」


POINT
〜店の特徴であるこだわりのコーヒーを飲み、おいしいケーキを実際に食べて、その良さを感じることが大切〜


「ゆりの木商店街のおしゃれなショップ」チーム
1軒目はカバン屋“Jiro”。さまざまな皮を使ってオリジナルの皮製品をハンドメイドで作ってくれるお店です。ご主人としっかりコミュニケーションを取って、ロケ取材で何を撮るべきか、しっかりとチェックしてきました。ところが次に予定していたギター屋さんに向かう時、反対の方向に走り出してしまいました。気を取り直して、ようやくギター屋さんに着いたと思ったら、ギター屋さんはお休みでシャッターが閉まっていました。結局、この日は、予定していた4軒中2軒しか取材することができませんでした。

POINT
〜取材するお店の場所・営業日・営業時間を、事前にしっかりチェックする〜


「畳屋さんに密着」チーム

このチームは、職人気質の榎本さんからいろいろ興味深い話を聞きだすことができました。手間のかけ方で、畳ができるまでの時間も品質も、全然違うことを知りました。畳にも直接触らせてもらって、職人さんの仕事ぶりを、しっかりと肌で感じとることができました。

「畳屋さんに密着」の一同: 「畳が意外と重かった」



千葉大学 教育学部 藤川 大祐 助教授のコメント
〜子供達のリサーチは、なかなか思うようにいかなかったようですね〜
「子供達は、人との関わりの中で、いろんなことを学びます。これは、番組作りにおいても、何ら変わることはありません。今回、子供達は大人と接する中で苦労しています。慣れない敬語を使ったり、一生懸命考えたことを簡単に否定されたり、でも、そんな困難や緊張の中で学ぶことは非常に大きいと思います」

・上宮アナウンサーのコメント
「私は今回“ゆりの木商店街全体PR”チームに同行したのですが、プロデューサーの小守谷くんが1人で仕事を抱え込んでしまって、大変そうでした。テレビ番組はチームワークで作っていくものなので、これから、どうやってうまく役割分担して、他のメンバーの才能を引き出していくのか、期待しています」

・千葉大学 教育学部 藤川 大祐 助教授のコメント
〜リサーチが終わると、あとは当然ロケ取材ですね?〜
「通常はそうなんですが、今回は、小学生達が、商店街からPR番組の制作を依頼されて、番組を制作するという設定になっています。したがって、小学生達は、ロケ取材の前に、リサーチをもとに、企画書をつくり商店街の方々に対し“ブレゼン”をします。これには、番組を作る目的をしっかり意識してもらいたいというねらいがあります」

 
放送番組審議会からの報告》
  1月21日に開催された「放送番組審議会」では、「放送番組全般」について、審議されました。
次のような意見が出されました。

年末はニュース番組などが世の中より早めに休みに入り、寂しい感じがした。「報道ステーション」の年末・年始特番を制作して欲しい。

血液型の番組が問題になっているようだが、我が家では楽しみにしている。意地悪な作り方はしていなかった。また制作してほしい。

新潟県中越地震被災者の切実な願いと、情報として報道されることが違う気がする。本当に今何が必要なのかニユースで真実を伝えて欲しい。

2005年の今年の大晦日は紅白の裏で、新しいアイディアで新しい挑戦を!


<番組からイベントのお知らせ>
  3月3日、「はい!テレビ朝日です」とテレビ朝日の生放送ベルト番組のコラボレートイベントを開催します。レギュラー出演のアナウンサーたちが大集合!
くわしくはこちら をご覧ください。



次回の放送は、2月20日(日)の予定です。