● ● ● ● 1月9日 ● ● ● ●

司会 吉澤 一彦アナウンサー
上宮 菜々子アナウンサー
スタジオ出演 加藤 千洋 氏(朝日新聞 編集委員)

☆加藤 千洋 氏 プロフィール
1947年生まれ。72年朝日新聞社入社。北京特派員、AERA編集部記者、論説委員、アジア総局長、中国総局長、外報部長などを経て、2002年より編集委員。一連の中国報道で1999年度ボーン上田記念国際記者賞、連載「テロリストの軌跡-アタを追う」の企画で2002年度新聞協会賞受賞。著書に「北京&東京、報道をコラムで」(朝日新聞社)他多数。



【放送内容】
「報道ステーション」(月~金曜日 夜9時54分から放送中)のコメンテーターを務める 加藤 千洋 氏を迎え、「新春対談」と題して、新聞記者の目から見た“テレビ論”そしてコメンテーター体験談を語って頂きます。


昨年4月からのコメンテーター生活を振り返って・・・
 
「慣れない仕事で未だにドキドキする」
「毎回、放送が終わると“あの時、ああすればよかったな”と思い返す」

~加藤さんの日常VTR~
ある放送日の夕方、テレビ朝日入りのため、朝日新聞から麻布十番駅に降り立った加藤さん。商店街を歩き、途中の自然食品店でヨーグルトを買いました。局に入ると、スタッフルームの前には「報道ステーション」の高視聴率を伝える貼り紙が。


 
視聴率について
 
「新聞の部数は、年単位で緩やかに動いていくが、テレビの視聴率は日々上げ下げする」
「視聴率が良いと、うれしいというよりもほっとする。日々、数字が上げ下げするたびに、一喜一憂している自分に気づく。数字を意識することで、自分も番組にかかわっているんだという責任感を強く感じるようになった」
「しかし、視聴率の良い番組が、必ずしも良質の番組とは思っていない。例えば“視聴質”のような、視聴率とは違ったものさしも必要だと感じている」

~加藤さんの日常VTR~
本番3時間前、全体ミーティングに出席し、スタッフと活発な打ち合わせを行います。ニュース項目をまとめたシートを見ると、この日の朝日新聞とニュースの取り上げ方に大きな違いが・・・本番2時間前、本番衣装に着替えデスクに戻ると、早速、インターネットや電話を使った追加取材を行い、ディレクターと構成の細部についての打ち合わせをします。本番1時間前、先ほど買ったヨーグルトを食べて一息入れると、先ほどまとめた個々のニュースに対するコメントを、パソコンに打ち込んでいきます。そして、本番10分前にスタジオに入り、9時54分、放送開始です。


 
新聞とテレビ ~ニュースの伝え方の違い~
 
「テレビは新聞と違って、話題性の高いニュースや衝撃的な映像素材があるニュースを重く扱う。重みの付け方の違いに、しばしば戸惑うこともある」
「事前に入念にコメントを考えていくのですが、限られた時間の中で、気の利いたことを言うのは難しいですね。思い通りに行くことはほとんどありません」


 
「書き言葉」と「話し言葉」
 
「長い間、新聞記者として中国にいたので、四字熟語や漢語的な表現をする癖がついています。コメントを紙にまとめるのは、習い性というのもあるけれど、声にして読んだときにわかりにくい表現はないかチェックするのが1番の理由です。また、論点を整理しやすいというのもありますね」
「現代のような混沌とした世の中では、白黒をはっきりつけられる事件・事象はほとんど無い。生の言葉でニュースを伝えていく上で、無理にわからないことをわかったように言うよりも、わからないことをわからないなりにどう受け止めていくのかを伝えるほうが誠実なのではないかと思っている」


 
新聞・テレビ、それぞれの長所と短所
 
「新聞のメディアとしての長所は、時間の進行に縛られず1度に1日の動きを概観できるという“一覧性゛と、手元にあれば繰り返し読み返すことができるという“保存性”に集約される」
「テレビの魅力は、何と言っても“速報性゛と“ライブ感”。画像の説得力で瞬時に見るものの注目をひきつける。これは新潟県中越地震災害報道においても、遺憾なく発揮されたと思う」
「新聞は、字を大きくすることで見やすくなったが、文字数が少なくなった。その結果、筋と骨ばかりの情報になり、ヒダの部分がなくなってきたという問題を抱えている」
「テレビは“映像ありき”で映像の面白さやインパクトを優先すると、本質的なことが抜け落ちてしまうこともあるので気をつけなければいけないと思っている」
 
アジアのニュースへのこだわり
 
「実は、“報道ステーション”のコメンテーターをお受けするときに、1つ条件を出させてもらっているんです。それは、アジアの企画をこれまでより多く取り上げるということです。最初は“アジアものは数字がなかなか取れない”といわれたが、これまでに北京、上海、ソウルを取材することができた」


~「報道ステーション」での加藤さんの北京リポートのVTR~
北京の街を歩く加藤さん、新しい時代に向け変貌を遂げる北京をレポート。


「時代は動き、中国・韓国をはじめとするアジアの近隣諸国との経済的・文化的交流が、以前とは比べ物にならないほど盛んになった。情報のタイムラグもほとんどなく、政治的な関係が多少冷えても、ほとんど国境が壁にならなくなってきている。これからは、同じ場・同じ時間を生きているという感覚でアジアの隣人を見ていきたい」

 
「報道ステーション」の基本理念“今日1日、何があったかを伝える”
 
「昨年4月にスタートして9ヶ月、まだまだ“今日1日、何があったかを伝えきれてはいない”と感じている。今のところ、キャッチーなニュースにフォーカスしすぎている。“今日”をきちんとわかりやすく伝えるために、工夫の余地はまだまだある」


 
2005年の抱負
 
「18年続いた“ニュースステーション”は存在感のある番組だった。“報道ステーション”もそれとは違う意味での存在感を持つ番組にしたい」
「個人的には、今動いているアジアを中心に、国際ニュースをもっと伝えていきたい。番組がしっかりと安定期に入ったら、もっとチャレンジングな企画も提案・実現していきたい」
「朝日新聞では、コラムを書いている。こちらも力を入れてがんばる」


 

次回の放送は、1月23日(日)の予定です。