● ● ● ● 8月22日 ● ● ● ●

スタジオ 吉澤 一彦アナウンサー
上宮 菜々子アナウンサー


【放送内容】
テレビ朝日に今年度入社し、今回から当番組を担当する上宮 菜々子アナウンサーと同期の古賀 佐久子ディレクターの2人組が、スポーツ取材の現場で奮闘する様子をお伝えします。2人が初めて担当する番組は、「速報!甲子園への道」。古賀ディレクターは筑波大学在学中、硬式野球部の唯一の女子選手でした。新人の彼女達は初めての現場で、何を感じ、何を学ぶのでしょうか。


7月20日 取材開始
 
「速報!甲子園への道」は、夏の高校野球の地方大会の結果を当日の夜にダイジェストでお伝えする番組です。今回2人が取材に向かったのは、昨年の東東京の優勝校・都立雪谷高校と筑波大学付属高校の一戦。試合が行われたのは江戸川区民球場。この日の東京の気温は39.5度。選手・番組スタッフ共に体力勝負です。

古賀さんは1週間で仕事を覚え、ディレクターとしてデビューすることになっています。取材から編集まで独りで行えるようにと、この日から実践訓練に入るのです。もちろん上宮アナも初取材。行きのロケバスでの2人の表情からも緊張ぶりが伝わってきます。

(ロケ取材)
試合が始まると、古賀ディレクターは、先輩ディレクターから指導を受けながら、自分でハンディカメラを回します。今回、番組では昨年の東東京の優勝校ということで、都立雪谷を中心にした構成を立てることになっています。かつて野球を指導したこともある筑波大学付属は気になりますが、ディレクターとして、都立雪谷側のベンチ・スタンドを精力的に回ります。

上宮アナはスコアブックをつけています。これも、新人アナが覚えなくてはならない重要な仕事。また、合間を見つけて、スタンドで応援する選手の家族の方々を取材しますが、皆さん試合に夢中で思うようにインタビューができません。

午後3時30分、ゲームセット。試合は都立雪谷の圧勝。さっそく、古賀ディレクターはかつての教え子達のいる筑波大学付属のベンチ裏へ、そこでは選手達が皆号泣していました。

古賀ディレクターのコメント
「本当だったらそっとしておいてあげたいところだけど、こういう画が高校野球の象徴であり、人の心を揺さぶると思う。最後までしっかり追いかけていきたい」

しかし、彼女は選手達にカメラを向けたものの、インタビューを試みることは出来ませんでした。ディレクターの立場と個人の感情の狭間で、彼女の心は揺れていました。いきなり、取材というプロの仕事の本質を見せ付けられた瞬間でした。

上宮アナは選手達の去ったグランドで、試合のまとめのコメント撮り。しかしなかなかうまくいかず、7回目でようやくOK。「リポート原稿の暗記は大変」


吉澤アナウンサーのコメント
「コメントはそもそも自分の言葉で語るもの。暗記したものをそらんじるというのは、取材が甘い証拠。これからの訓練の中で、もっと勉強していくことになるでしょう」

(編集)
午後7時20分、テレビ朝日編集室に戻ってきた古賀ディレクター、「速報!甲子園への道」の3つの取材班のディレクターからテロップ原稿を集めて、電子画へ発注します。ナレーション原稿はディレクターの仕事ですが、今回は先輩ディレクターの仕事ぶりを観察します。

上宮アナは、画にあわせて出来上がったばかりのナレーション原稿を読んでいきますが、なかなかうまくいきません。「スポーツの盛り上がりを表現するための緩急がうまくつけられなかった。まだまだです」


(そしてOA)
深夜0時、放送まであと40分、古賀ディレクターは副調整室で出来上がったテロップをチェック。間違いを見つけ急いで修正。0時40分放送開始、1日の集大成である放送の進行を見守ります。そして0時55分放送終了。ホッと息をつく間もなく、すぐに反省会へ。

古賀ディレクターのコメント
「現場での仕事は、まだ想像の及ばないところもあるので、独り立ちしてやっていけるのか不安もあるけれど、また、明日から先輩の仕事ぶりをよく見て、はやく仕事を覚えたい」
反省会は3:00に終了。初日なのでこれで終了だが、本当はもう一仕事ある。

古賀ディレクターの成長
  2日目の反省会が終わった直後の7月23日深夜3時、古賀ディレクターは3日目の取材のポイントをまとめていました。この日の取材は、昨年の埼玉の優勝校・聖望学園高校と県立朝霞高校の一戦。古賀ディレクターは、1年生で聖望学園の4番を打つ、久保 一等(かずと)選手にスポットを当てることにしました。彼は、今地方大会において、この時点で7割を超える打率をあげており、彼の活躍が試合のカギを握っていると考えたのです。

試合は大宮市民球場で行われました。この日、埼玉の気温は32.9度、相変わらずの真夏日です。この日も先輩ディレクターのバックアップを受けていました。しかし、初回に久保くんがデットボールを受けたときカメラが彼の表情を捕らえることが出来なかったのに気づくと、すかさずカメラの位置を動かすよう指示を出し、次の打席ではヒットを放った彼の表情をカメラに収めることが出来ました。

試合は聖望学園の圧勝。さっそく、ベンチ裏の久保くんのもとへ駆け寄り、インタビューを行います。
「3年生には甲子園に行ってもらいたいので、頑張って勝利に貢献したいです」
そして、独り立ち
 
取材8日目の7月27日午前3時、反省会を終えた古賀さん、いよいよ明日からディレクターとして独り立ちです。深夜の打ち合わせスペースに独りたたずむ彼女の顔には、疲労の色が見て取れます。しかし、明日からは、先輩ディレクターはついていてはくれません。全て独りでやらなければなりません。彼女は必死にプレッシャーに打ち勝とうとしています。

3時間後の朝6時のテレビ朝日正面入り口、集合場所に彼女の姿がありません。心配していると、30分遅れで現れました。連日の緊張と疲労がピークに達し、寝坊してしまったようです。しかし、元気そうで、先輩達も一安心。

この日の取材は、埼玉県大会の準決勝、浦和学院高校 対 聖望学園。事実上の決勝と目される大事な一戦を古賀ディレクターは任されました。

午前9時30分、ベテランカメラマンに欲しい画を伝えます。10時プレーボール、VTRの構成を落ち着いて考えるため、今日は記者席に座って試合の流れに集中します。

構成の軸に据えている久保くんの聖望は、終始押され気味。ところが彼女は聖望が負けたときのことも考えた指示を、カメラマンに出していました。

12時30分、ゲームセット。彼女は負けた聖望学園ベンチ裏へと走り、久保くんを必死で探します。「前回と同じ失敗を繰り返したくない」この一念で、座り込んで泣いている久保くんにインタビューを行います。「先輩達を甲子園に行かせてあげられず、すいませんでした」声をしぼり出すようにして答える彼の姿をカメラに収めることが出来ました。
古賀ディレクターのコメント
「3年生にとっては絶対戻ってこない夏だから、そこを表現できれば最高なんだけど」

しかし、号泣する3年生に声をかけることはできず、今回もディレクターと個人の狭間で彼女の心は揺れました。

午後6時30分、古賀ディレクターはテレビ朝日のデスクに戻って、敗れた聖望学園を軸に構成を詰めます。なぜ、敗れたチームなのでしょうか?

古賀ディレクターのコメント
「いくら練習をやってもうまくいくとは限らないし、それを必死で受け入れようとしている高校生の姿は、見ている人に訴えかけるものがあると思う」

構成が決まるとすぐに編集室へ、画をつなぎながら平行してテロップやナレーション原稿を作リます。ナレーションを読みながら、上宮アナもストレートに自分の考えをぶつけて来ます。


放送を終えて・・・


古賀ディレクターのコメント
「1回作品を作ると、他のVTRの見方も変わってくる。例えばニュースを見ていても、カメラ位置がどうだとか、どんな指示が出ているのか考えるようになったり。そういう姿勢を大切にして、これからもディレクターとして成長していきたい」


上宮アナウンサーのコメント
「最初のうちは、野球のこともわからず、古賀さんが野球に詳しいこともあり、随分焦りました。しかし、先輩の指導を受け、自分なりに野球というスポーツを理解しながら、その時々に合った取材が出来るようになりました。」
 

次の放送は、9月5日(日)です。