● ● ● ● 8月8日 ● ● ● ●

スタジオ 吉澤一彦アナウンサー
市川寛子アナウンサー
ゲスト 千葉大学教育学部 助教授 藤川 大祐 氏


【放送内容】
「メディアと中学生」と題したBPO(放送倫理・番組向上機構)のフォーラムが開催されました。 日本大学豊山中学校、船橋市立三田中学校、お茶の水女子大学付属中学校、杉並区立高円寺中学校の生徒達が、それぞれの学校紹介ビデオを制作し発表しました。番組では、そのプロセスを紹介。 「情報を受け止める立場」から、自分たちで「情報を送り出す側」となって学んだ生徒たちの様子を伝えます。


第4回中学生フォーラム「テレビ大討論」
 
開催日: 7月21日(水)
場所: イイノホール(東京都千代田区)
主催: BPO(放送倫理・番組向上機構)「放送と青少年に関する委員会」

※ BPO(放送倫理・番組向上機構)とは
NHKと(社)日本民間放送連盟が設置した機関です。放送による言論・表現の自由を確保しながら、視聴者の基本的人権を擁護するため、放送への苦情、特に人権や青少年と放送の問題に対して、自主的に、独立した第3者の立場から迅速・的確に、正確な放送と放送倫理の高揚に寄与することを目的にしています。

 

今回紹介する4つの中学校の生徒達は、このフォーラムにて、事前に総合学習や国語の時間を利用し制作した3分ほどのビデオを会場で上映しました。上映後、制作意図や体験談を発表し、司会者やNHK,民放キー5局の制作者を交えて中学生たちと討論しました。

<千葉大学教育学部助教授 藤川大祐氏 コメント要約>
「これまでのメディアリテラシー教育は、視聴者としてテレビ番組をどう分析するかということに主眼が置かれていたが、このフォーラムでは、生徒達が実際にビデオ作品を作ってみて、テレビの見方がどう変わってくるかということが、1つのテーマとなっている」

生徒達の作品
 
日本大学豊山中学校 「スポーツの豊山」~狭いグラウンドの秘密~」
スポーツ活動が盛んな日本大学豊山中学校ですが、実はグラウンドが狭い。ナレーションをあえて使用せず、文字スーパーと音楽のみで見せる手法で、この狭さをどのような工夫で克服しているのかを紹介。
 

船橋市立三田中学校 「歩き出した三田中」

学校のテーマ曲を作り、プロモーションビデオ風に学校を紹介。テーマ曲の作詞は、生徒自身の制作によるもの。
 
お茶の水女子大学付属中学校 「お茶中 紹介CM」

1クラスを6つのグループに分け、それぞれが独自にテーマを決めて30秒の学校紹介CMを制作し、これをつないで1つの作品に仕上げた。学校の行事や授業風景をモチーフにするのを禁止して、グループの独自性を引き出すことを狙った。

ビデオ作品作りのプロセスに密着
 
今回フォーラムに参加した4校の1つ、杉並区立高円寺中学校の作品作りに密着しました。
   
○テーマを決め、構成を立てる

最初は学校の1日の生活を追う構成を立てていましたが、あれもこれも詰め込み過ぎてポイントがはっきりしませんでした。

そこで、今回ビデオ作りに参加した生徒達は、全校生徒に高円寺中学校のイメージをアンケートで聞いてみることにしました。

すると、「高円寺の阿波踊り」が大多数を占めました。実は、高円寺中学校では、今年から杉並区で初めて「阿波踊り」に学校活動として取り組むことになったのです。生徒達は、これをテーマにすることに決めました。

「阿波踊り」の練習は、踊りのレベルに合わせ、3つのグループに分かれて行われる予定でした。ビデオ班は、練習風景に密着し、1番レベルの低いグループのメンバーの踊りが上手になっていく過程を柱にしながら、インタビューや他の学校生活をちりばめたドキュメンタリータッチの構成を立てました。

※「高円寺の阿波踊り」
高円寺では、およそ50年程前、徳島県の「阿波踊り」を街の活性化を目指し、お祭りとして取り入れた。今では区民に大人気の夏の1大イベントとしてすっかり定着している。

   
○ロケはハプニングがいっぱい
6月の半ば、ロケは始まりました。生徒達はカメラの操作は初めて。アングルを決めるのも試行錯誤の連続です。

メインテーマの「阿波踊り」練習初日、撮影直前になって、カメラのバッテリーが切れてしまいました。別のカメラを持っている先生を駆け足で探します。なんとか別のカメラが見つかり、事なきを得ましたが、生徒達は事前のチェックの大切さを痛感したようです。

必要な画をイメージしながらの撮影。生徒達は想像力をフル回転させながら、カメラを回していきます。

そして迎えた練習最終日、突然、3つのグループの合同練習に変更になりました。1番レベルの低いブループが上手になっていくプロセスを追うという当初の構成が成立しなくなってしまいました。
そこで、生徒達は「阿波踊り」のイキの良さを全面に押し出す構成に切り替え、練習中の躍動感あふれる瞬間を狙ってカメラを回すことにしました。インタビューは、みんなが汗を書いたころを見計らって。初めのころに比べると、かなり演出意図を持って撮影が出来るようになりました。

<千葉大学教育学部助教授 藤川大祐氏 コメント要約>
「ドキュメンタリーでも、ただの事実の羅列だけでは成立しない。構成・演出は必然的に発生するが、それをどこまでやっていいのかは良く考える必要がある。生徒達はインタビューの際、どんな感じで答えてほしいか要求を出していたが、そのさじ加減は今後の課題となるでしょう。」
   
○4時間の収録テープを3分に編集
編集ソフトを使ってパソコンで編集するには、専門的な知識が必要なので、プロの指導員がつきました。画の順番をどうするか、インタビューのどこを使うか、編集で伝わり方が大きく変わってきます。

画をつなげたらナレーションを考えます。ところが、ナレーションを読んでみると、ナレーションが入りきらない部分がありました。また、受け手に誤解を与えそうな文章もありました。これらを直し、作品が完成。大変な作業でしたが、生徒達は最後まで楽しみながらやり遂げたようです。

<千葉大学教育学部助教授 藤川大祐氏 コメント要約>
「制作者なら誰でも、自分の撮った映像や頭をひねって考えたナレーションには愛着があるもの。だけども、わかりやすさを追求し、必要な部分を選択する中で、カットしなければならない部分は必然的に出てくる。この「産みの苦しみ」は、生徒達にとって貴重な経験になったはずだ」
 
完成した作品を見ての感想
 
「高円寺中 阿波踊り みんな大好き」全校で取り組んだ「阿波踊り」の練習風景を中心に、学校の様子を紹介。

試写が終わった後の生徒達の感想
「自分達が作った物ではないみたい」
「阿波踊りに取り組んでいる学校は、杉並区で高円寺中学校だけだから、学校の特色が出せたと思う」

杉並区立高円寺中学校 岩谷俊行校長
「撮った映像がそのまま作品として成立するわけではないので、編集を通じて、見せる部分を意図を持って選ぶことが、良い勉強になったのではないか。今後の生徒達の日常の行動にも影響があるとみている。生徒達は今回の活動を通じて、受け手としてテレビを見ているだけではわからないことが経験できた」

 
放送番組審議会からの報告》

「放送番組全般」について

   
 
突発的な編成対応など、最近はフレキシブルな編成が出来ているが、他局に比べて、まだ大人しくて中立的という印象。もっと極端でも良いのでは。
六本木ヒルズという地の利を番組作りにも活かしたらどうか。
深夜帯はのびのびとしていて良い。この枠で実験し、育て、ゴールデンに進出する番組作りを!
人気ドラマも長い間には飽きが来る。新しいバイプレーヤーを育てつつ、主人公の上手な若返りを!
一社提供に多いが、質の高い番組でも視聴率が取れないと、作ったことを反省してしまう。制作者が見せたいと思う番組をもっと大切にして欲しい。
我々が作る物を是非見て欲しいと、視聴者を引っ張ってくるほどの相当な覚悟をしなければならない時代だ。是非頑張って!
 
昨年からMCを務めさせていただいた市川寛子アナウンサーは、本番組の出演が今回を持ちまして最後となります。次回から新人の上宮菜々子アナウンサーが担当致します。
 

次の放送は、8月22日(日)です。