11月2日

スタジオ : 吉澤一彦アナウンサー
市川寛子アナウンサー
堀越むつ子 テレビ朝日番組審査室長


【放送内容】

今回は、10月23日に決定した「プログレス賞」の受賞作品の紹介と10月の「放送番組審議会」の報告です。



《「プログレス賞」受賞作品発表 》

「プログレス賞」とは
「PROGRESS」とは、進歩、向上などを意味する言葉で、制作者たちの日頃の努力の過程を評価していこうという目的で設けられた賞です。
テレビ朝日系列24社が参加し、前年度に制作した作品を対象に、各社番組審議会委員による選考を経て決定されるもので、今回は9回目を迎えます。
 
今回の受賞作品
今回は24作品が参加、最優秀賞1作品、優秀賞1作品、奨励賞2作品が決定しました。

最優秀賞・・・
「告発 〜外務省機密漏洩事件から30年、今語られる真実〜」(制作:琉球朝日放送)
【番組内容】
沖縄返還交渉には日米政府間の「密約」が存在する。1971年毎日新聞が報じたひとつの記事から沖縄返還協定における日米政府の「財政取り決めの密約」が表面化した。記事を書いたのは当時毎日新聞政治部記者の西山太吉氏。
この記事は「外務省機密漏洩事件」として西山氏逮捕へと発展し、国家間の密約が裁かれることなく、男女のスキャンダルとして幕を閉じた。その後、西山氏は姿を消し、一貫して事件について語ろうとはしなかった。
番組では、事件後30年経った今、初めて西山がインタビューに応じた。また、事件の裁判をつぶさに傍聴した作家澤地久枝氏など関係者の証言や文書をもとに沖縄返還交渉の裏側に迫る。
【選考理由】
本土復帰30周年の節目として時宜を得た作品で、「沖縄の日本復帰」の真相を追求するひとりのジャーナリストの姿を中心に、精力的な取材と適切な番組構成で視聴者をひきつけている。事実の重みが圧倒的な迫力となって見る者の胸を打つ内容であった。
【ディレクターコメント】
西山さんと一番最初にコンタクトを取ったのは6年前。「取材に応じる気はない」の一言で電話を切られた。結局、番組に持ち込むまで5年かかった。
30年間、西山さんは事件に関して書きもせず、語りもしなかった。結局カメラの前に座ってくれたのは放送の1ヶ月前だった。

2003年度プログレス賞・最優秀賞作品「告発 〜外務省機密漏洩事件から30年、今語られる真実〜」は、12月18日(木)、深夜2時42分から放送いたします。

優秀賞・・・
「茂吉絶唱 〜茂太がゆく小園・白き山〜」(制作:山形テレビ)
【番組内容】
番組タイトルになっている「小園」「白き山」は、近代歌壇の最高峰と言われている斎藤茂吉の歌集です。茂吉が没して50年。長男で精神科医の斎藤茂太さんが、四季を通じて父を偲び、父を見直す旅に出ます。
茂太さんは父が生前唯一その建立を許したという歌碑と対面するため蔵王山頂を目指します。父の姿と重ねつつ息喘ぎ登った先の歌碑に感動する。
旅は続き、生家や小学校のある上山市金瓶へ。そして、晩年茂吉のいた大石田町(最上川中流の町)にて日々父が眺めていたという最上川にじっと見入る。
歌集「小園」「白き山」には数多くの絶唱があるが、茂太さんはこの絶唱が生まれた背景にも迫りながら夏、秋、冬と旅を続ける。
【選考理由】
郷土再発見の文芸作品だ。叙情性、ヒューマニズムにあふれ、自然描写、映像もみごとなもので、美しい。茂吉の知られざるエピソードがいろいろ紹介され、生身の人間茂吉の魅力が鮮やかに描き出されている。地元ならではの身近な風景が撮れている。
【ディレクターコメント】
 茂吉の歌の作り方がすごく写生的でじっと対象を見て歌を作っている。
 だから、どんな映像をつけたらいいのかとても苦労した。


奨励賞・・・
ミッドナイトAスペシャル「にっぽんスクーター事情」(制作:静岡朝日テレビ)
【番組内容】
「オートバイの街」として知られる静岡県浜松市。番組では10万円を攻防ラインとする低価格スクーターをめぐる3つの会社の企業戦略に迫ります。
3つの会社とは、中国から逆輸入して低価格で販売するホンダ。メイドインジャパンで勝負するスズキ。技術力の高い台湾に生産基地を置いたヤマハ
それぞれの生き残り戦略を浮き彫りにしながら、「モノ作り」の現状と未来を考えていきます。
商品の競争力が「品質」と「コスト」との方程式で決まるとすれば、企業側がその答えをどこに求めるかで、それぞれの市場戦略が見えてくる。この差異が最もわかりやすく示されたのが、ここ1年ほどの間に展開されたスクーター製造をめぐる各社の動きだった。
番組では、オートバイの街浜松市で何が起こっているのかを低価格スクーターをめぐり「ホンダ」「スズキ」「ヤマハ」の三社三様の企業戦略の取り組みを紹介する。
【選考理由】
日本のメーカーが抱える経済問題を、スクーターの製造を通して、もの作りの戦略や哲学などからわかりやすく作っている作品であった。3人の社長が個性あるキャラクターで難解な経済問題をわかりやすく説明し、夢と希望を与える内容となっている。
【ディレクターコメント】
深入りするとメカニック的な話や専門用語が多くなってしまい、その分野に興味のない人が理解できないので、「わかりやすく」
企業戦略を探るにはまず「トップの言葉で語ってもらう」、やはり企業はトップだなといろいろなシーンで感じる。今回もそれぞれの会社のトップにその戦略をダイナミックに語ってもらった。


奨励賞・・・
テレメンタリー2002「ふたりのダンス・ダンス・ダンス 〜車いすダンスがつないだ青春〜」(制作:広島ホームテレビ)
【番組内容】
今から10年前、不慮の事故で車いす生活を余儀なくされた阿田(あだ)光照さんと、心の病で入退院を繰り返していた平田陽子さん。雑誌の文通欄を通して知り合った二人が車いすダンスのペアを組んだのはおよそ4年前の春。
番組では、世界選手権の様子も交え、夢に向って力強く生きる二人の車いすダンスの競技生活に密着し、ハンディに向き合う障害者と健常者の心のふれあいを描いています。
車いすダンスは今、彼らの生活の中心になり、生きる希望になっている。一昨年11月、はじめて行われた「全日本車いすダンス選手権大会」で4位に。そんな二人が今年の秋、目標としていた世界の舞台に立った。
【選考理由】
ハンディキャップのある二人が清々しく、自然体であり、思わず応援したくなる内容であった。我々に元気と生きる勇気を与えてくれる作品であった。車椅子ダンスの競技人口は全国で800人程。彼らがハンディのある人達にも生きる勇気と希望を与えてくれる素晴らしい内容であった。
【ディレクターコメント】
取材相手がハンディを持っているので、接する際に「どうかな?」という気持ちがあったが、本人はすごく明るく元気に生きているので、そこを表現できればと思った。彼女には心の病があるので、「身体と心のハンディ」その両方がうまく出せたら、今の社会をうまく表現できると思った。



放送番組審議会からの報告

対象番組:「子連れ狼」

大五郎の気概に思わず落涙した。子育て中の親にも教訓になる。
月曜日の夜7時という放送は、落ち着いて見られない時間帯では。金曜日の遅い時間、あるいは再放送など編成上考えてほしい。
時代劇特有の痛快さなどがうまく盛り込まれ、「親子の絆」「家族の尊さ」といったテーマが番組全体を通じて感じられる。家族のあり方が大きく変わる現在、いつの時代も変わらない本質的なテーマを扱うことは意義があると思う。
本格的時代劇という良さの反面、明るさが出てこない。連続ドラマなので、ストーリーに少しだけ“華”を加えても良いのでは。
新鮮で惹きつけられるように見た。全般に映像がきれいだ。特に緑が美しい。
民族音楽のタッチ、尺八のエスニックな感じは面白い。しかし、この時代劇にはシンセサイザーの音が心に響かず、このドラマに合う生の演奏にしてほしい。また、番組でしか聞けない主題歌を聞きたい。



次回の放送は、11月16日(日)の予定です。