6月22日

スタジオ : 吉澤一彦アナウンサー
市川寛子アナウンサー
渡辺興二郎(テレビ朝日コメンテーター)
秋元 隆(テレビ朝日番組審査室)


【放送内容】

私たち放送メディアは差別のない社会の実現のために役割を果たすべき立場と考えています。
そこで今回は、放送における「差別と人権問題」について様々な方々にご提言を伺いました。
併せて「放送番組審議会」報告。



部落開放同盟中央本部書記長 
松岡 徹氏


差別を言葉で表す時に「明らかに差別を意図としてやる」場合、「認識不足で差別する意図はないけれども使う」
場合とあるが、後者でも、結果的に差別を温存・助長してしまう側面が生まれる。
今日、「メディア」は社会常識の一つになっているから、差別を温存する構造を「常識」として認識させてしまう。
我々の課題は「言葉狩り」ではなく「部落問題を解決する」、しいては人権社会を築くことで、そのためには隠すのではなく積極的に人権侵害・部落差別の問題を取上げて欲しい。
そして、なぜ差別が起きたかをしっかりと明らかにする必要があると思う。
単なる「知識、啓発、啓蒙」のレベルから、どうしたら無くす事ができるのか、という所に行き着いて欲しい。
その為に差別の現実を知る努力、それを社会に知らせて行く努力をして欲しい。



NPO障害自立支援センター「あゆみかん」副理事長 
島本 久氏


差別の解消というものに取り組む上で「メディア」は大きな力を持っていることを自覚してほしい。
それゆえ、放送人としてその「本質」をより理解し放送に携わってほしい。「偏見」「差別」といったことは、「人の心」の問題であり「あたたかい心」を持っていなければ理解されない問題だと思う。
「言葉」だけの問題でなく、それを取り巻く全体的な流れで「どのようにとらえているか」という点が問題である。同じ言葉を用いても、相手が「どのように思うか」ということで「差別か否か」ということになる。
どういう場面でどのように使うか・・・ということは一番重要なこと。



テレビ朝日放送番組審議会委員長 立正大学文学部社会学科教授
桂 敬一氏


業界で働く人は、放送に長く携わっていうちに「人権意識」「差別意識」などに対する意識が薄まってきてしまっている。一方ではそれらの問題を起こさないためにマニュアルは作り、従う。その点が問題。
差別的な用語には、それぞれ成り立ちがあるわけで、その言葉が出てくる背景には実際の差別があった。
その事実を伝えることで差別がなくなるのであれば、その言葉は使うべきである。
そのことを考慮せず、ただマニュアルに沿って番組を制作していくと言うことは、差別をなくすという放送の意義がないのではないか。
ドラマなどで文芸ものを扱う場合にも気をつけることが必要だと思う。
時代的背景を持った作品でその中に差別的な用語であったからといって現代の表現に置き換えて解決するものだろうか。そういう部分は、センスの問題があると思う。危ないものは避けよう、マニュアル通りに作ろうとすることは、放送としてはとても質の低いものになり、結果的に自分たちの首を絞めることにつながるような気がする。



BRC(放送と人権等権利に関する委員会)委員 
中沢 けい氏(小説家)


差別をなくしていくことは、「言葉をなくす」といったことではなく、その言葉がもっている意味やセンスをどう変えていくかということだと思う。
テレビは、時代の中で女性の「立ち振る舞い」「立場」の変化を伝え続け、その結果、女性の立場が変わってきたという経緯がある。テレビには、人の意識を変えさせる力があるし、使命が有る。
差別的だからといって、歴史的に使われてきた言葉を単純に使わないようにしない方が良い。
ただ、テレビは非常に影響力が大きいので「どう使うか」というのは非常に問われてくる部分ではあると思う。



脚本家
山田 太一氏


ドラマを書くライターとしていうならば、最近のドラマは「リアリズムみたいなもの」を段々バカにするようになってきていように思う。普通の人がどんな思いでいるかとか、普通の人の普通の姿・・・を描くドラマが少なくなってきた。現実の小さな心の痛みとか、苦しみに、目を逸らしすぎているのではないかと思う。しかし、そんな身近な人間の営みに流れる心のストーリーが重要だったりする。
そういう中で地道な共通認識みたいなものを深めていくことが、少し迂遠だが、「人権」を尊重する気持ちに結びついていくように思う。
結局は、一人一人の人間がどのくらい人の苦しみや嘆きというものに身を寄せられるかということだと思う。
その辺で非常にキメ細かくなれば、「人権」について成熟した社会になると思う。



「放送番組審議会」報告
テーマ
「イラク戦争や北朝鮮問題」について
「これからの系列局の役割と地方制作番組のあり方」について

『お知らせ』
民放連とNHKは、新たに「BPO 放送倫理・番組向上機構」を設置し、わが国放送界独自の自主自律機能を確立することになりました。
<BRC「放送と人権等権利に関する委員会」>
<青少年委員会「放送と青少年に関する委員会」>
<放送番組委員会>
の3つからなるこの機関では、法律の専門家や児童・青少年の研究者、メディア研究者などの意見を検討し、人権侵害の救済や、放送倫理の向上などについて審議します。
番組によってあなたの人権が侵害された時や青少年に対する放送のあり方など、放送に関する意見・苦情がある時にはご意見・お問い合わせください。

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