5月19日

スタジオ : 吉澤一彦アナウンサー
武内絵美アナウンサー


  今村千秋(コメンテーター室)
平間 節 (取材・航空担当)
ゲスト  : 保土ヶ谷区「まちのメディア研究会」のみなさん
水越 伸 (東京大学大学院情報学環 助教授
「メディアリテラシー」の実践・研究を行う)



【放送内容】


「メディアリテラシー」の第7弾。
これまでの番組で6回にわたり、作品の制作過程をお送りしてきました。
今回は、完成作品の発表。
そして作品の制作を通して感じたことを制作した方々に伺いました。

  「メディアリテラシー」とは・・・
新聞・テレビ等の「メディア」からの情報を 「一方的な受け手」になるだけでなく、メディアの仕組みや現状などをよく知り、情報の選択をする能力を身につけること。
「メディアリテラシー」で「体験する」(実際にビデオ制作をする)ということは作品のできとは別に、メディアを身近に感じ、理解する上で重要な行為。
(水越氏 談)

  『ビデオ制作』体験
ビデオ制作メンバー:
横浜市保土ヶ谷区の「まちのメディア研究会」のみなさん8名。
男性4名・女性4名の2チームに分かれ、ビデオを制作。
制作にあたってのルール
テーマ:「保土ヶ谷」
作品時間:3分間

「まちのメディア研究会」とは、
20代~70代のメディアに関心がある人々が、定期的に集まり、意見の交換・研究などを行う市民グループ。

  《完成までの流れ》

『事前用意』
男女2つのチームに分かれた制作。
テーマを決めるためのミーティング開始。

機械の扱いや撮影時の注意点などのアドバイスをうけ、各グループが制作にあたっての担当を決める。

『テーマ決定』
女性グループ・・・ 保土ヶ谷在住の世界的舞踊家・大野一雄氏(95歳)を通して「保土ヶ谷」を描く。
男性グループ・・・ 保土ヶ谷の宿場町ができて400年。
「保土ヶ谷宿400年倶楽部」(市民サークル)を通して町づくりを描く。 

『ロケ』
取材開始。現場で相談しながらロケを進める。
テレビ朝日スタッフが、アドバイス。

『編集』
「取材したテープの確認作業」をして「仮編集」から「本編集」へ
全ての素材をもう一度見直し、編集方針を決めていく。
その際に「使いたい素材」「使えない素材」などを選択。
「映像のみ使用」「音のみ使用」「映像の順番」・・・等を話し合い、より良い効果が出るように組み立てていく。

『「テロップ」の入れ方を考える』
仮編集で仕上がった素材をみて、テロップの内容を決める。
位置・言葉の量などを整理する。

『本編集』
映像を3分の長さに仕上げる作業。
テロップを実際に画面上にのせ、文字のバランスなどを調整をする。

『音処理をする作業』
出来上がった素材にナレーションと音楽を付ける。

『完成』
本編集を終え、音の処理をして完成。
完成後、それぞれのグループの作品を全員で試写。
意見交換。

  《完成作品の披露》を終えて
Q. 「一人の人を通して何かを伝えたい」という目標があったようですが?
 
A. テーマの「保土ヶ谷」を伝える上で、大きな歴史的事実などでないとらえ方、「身近な部分で感じられるモノ」「素敵な人」「自分達も楽しくなれるモノ」そこに焦点が合いやすいのではないかと思って探していました。
そして「舞踏家:大野さん」に決めました。
(女性チーム)


Q. 思うようにはできましたか?
 
A. 出来はわかりません。夢中の中で終わってしまいました。
(女性チーム)


Q. 「一番大変だったこと」は?
 
A. 「芯」になる部分が必要であり、その部分を決めるのが大変だった。
(女性チーム)


Q. 担当として一番苦労なさったことは?
 
A. カメラ担当。初めての経験だったので「ぶれ」などがあった。
(男性チーム)


Q. チーム編成上、世代等の違いなどでの苦労は?
 
A. 作業を進めていく中で、意見の違いが生じた。
今回はその部分をまとめてできた作品。
(男性チーム)


Q. できた作品を「まちのメディア研究会」の仲間が視聴。その感想を聞いて?
 
A. 反省点は幾つかあります。
取材のテーマの決定に際し、話し合いが足りなかった事。
取材の相手が複数になり、内容がどっちつかずになってしまった事。
(男性チーム)


Q. 今回の経験を通して「メディア」に対する見方が変わったりしましたか?
 
A. 今までは、批判的だった。しかし、色々な人の意見があることに気付いた。
その意見の媒体として「メディアリテラシー」があるということを実感しました。
A. 見方は変わった。画面の作り方などをより深く、制作者の意図なども考えながら見るようになった。
A. テレビと自分との距離が変わった。
今までは、大きな組織から情報がただただ放出されているだけのような気がしていた。
しかし、今回の経験で「作っている人間を感じる・制作の意図を感じてみる・・・」そんなことを思いながら見るようになった。
A. 作品の裏には、作品の何倍もの量の時間があり、
そこでの苦労があるということを実感した。番組の見方が変わった。


Q. もう一度、チャンスがあれば「制作」をしてみたいですか?
 
A. とても大変でしたが、面白かった。こういうコミュニケーションがあるのであれば、ぜひやってみたい。
A. アマチュアの限界を感じました。今回はプロの手伝いがあり、完成まで至った。
A. 年代の違うチームでやってみたい。条件の違うモノでも結果に興味がある。
A. 何度も繰り返すことで「自分達」と「メディア」との距離が縮まり、この行為を通じてコミュニケーションが取れるようになる気がする。

 《全体を通して》
制作するにあたり、チームでの構成のたてかたが違った。
男性チームは細かいカットを決め、構成をたてた。
女性チームはその反対。

取材前にあまり細かすぎる構成をたてると「現場で得られる良い素材」を捨ててしまうことにもつながりかねない。
(平間氏 談)

「メディアリテラシー」の基本3要素
使用・・・ 作品を作る上で、より効果的にするため「照明は?音は?」
その為にはどんなモノを使うべきか・・・といったこと考え、使用すること。
受容・・・ 情報を認識し情報の内容を受け取る行為。
表現・・・ どう情報を伝えるか?作品をどう作るか?といった創造をする行為。

この3つの要素のバランスが重要。
今の状況は、
視聴者側は「受容」がバランス的に高い。
・・・「送り手側」という状況にないので仕方がないこと。
制作者側は「使用」と「表現」が高い。
・・・往々にして「テレビ」などを見ていないことが多く、「受容」が低い。

今回のような行為をくり返することによって、3つの要素のバランスが良くなってくる。そして、お互いの循環性も良くなるように思う。
(水越氏 談)

送り手側にも更なる期待。
プロが完璧に近いモノを作り、送り出すことで「制作の裏側」が見えなくなり過ぎている部分がある。
今後は、経験のない(制作の世界を知らない)視聴者にももう少し裏の部分の工程を理解してもらえるようなアプローチの仕方を考えていって欲しい。
(水越氏 談)

今回のような行為を継続的にしていくことが望ましい。
そのことがメディアの素養を高める事につながる。
(水越氏 談)

最後に
「メディアリテラシー」とは
「受け手側」と「送り手側」が双方が共に学び合い、高め合うことである。