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#1011
2026年5月17日

プロレス実況の舞台裏

【番組司会】菅原知弘(テレビ朝日アナウンサー)
      桝田沙也香(テレビ朝日アナウンサー)
【ゲスト】西山幸彦(「ワ―ルドプロレスリング」プロデューサー)
    大西洋平(テレビ朝日アナウンサー)
    野上慎平(テレビ朝日アナウンサー)
【ナレーター】田中萌(テレビ朝日アナウンサー)


鍛え抜かれた身体と身体がぶつかり合う激闘の中で、
いくつものドラマが生まれてきた、日本最大のプロレス団体、新日本プロレス。
その熱き闘いを伝え続けているのが、
毎週土曜日深夜1時から放送中の「ワールドプロレスリング」。
プロレス中継の醍醐味は、レスラーが繰り広げる多彩な技の応酬、
声援を送る観客の熱気、そして、試合会場の興奮を伝える実況アナウンサーです。
今回は「ワールドプロレスリング」を支える
実況アナウンサーについて詳しくお伝えします。



<テレビ朝日のプロレス実況アナウンサー>
―現在、何人のアナウンサーがプロレス実況を担当しているんですか?
(西山プロデューサー)
テレビ朝日のアナウンス部のアナウンサーでは、
8名にプロレス実況をお願いしております。
そのほか、フリーアナウンサーの方も含めると10名以上になります。
おそらくアナウンス部のスポーツ実況チームでも
プロレスが一番多く最多の人数です。

―大西さん、野上さんはプロレスを担当して何年になるんですか?
(大西アナウンサー)
我々も入社してすぐに(2人とも2007年入社)
プロレス中継の担当になりましたので、
そこから研修期間がありましたけれど、入社以来20年目です。
やはり、実況アナウンサーがいろんなスポーツを担当していく中で、
プロレス中継というのは、本当に懐が深くて幅が広いです。
“スキルを養う”という意味では、
すごく大きな経験になったのは間違いないです。

(野上アナウンサー)
動いているもの、人を描写する基礎・基本が大事というのはもちろんですけど
実況の現場で度胸がつきました。
ほかでは得られない度胸がつく側面もあると思います。



<大西・野上アナウンサーのプロレス初実況>
同期入社の野上アナウンサーと大西アナウンサー。
プロレス初実況は入社2年目、2008年の同じ日でした。
あれから20年近く、プロレス実況の研鑽を重ねてきた同期入社の二人。
いつも実況されているレスラーはどう思っているのか?
真壁選手に聞いてみました。

(真壁刀義選手)
新人の頃は、野上アナウンサーは自信がないのが顔に出ていた。
「言わなきゃ!言わなきゃ!」という感じで。
実況を聞いている人は違和感があったと思うんだよ。
だけど、やっぱり頑張った。うん、すごく頑張ったと思う。
だって今なんか実況を聞いていて「おお!そうそう!」と思う。
自分がテレビ番組で食レポをするでしょ?
だから人の食レポを聞きながら食べると、
やたらと甘みが脳に到達するのと同じ。
「これすごいじゃん!」というのと同じで、
すごく試合を伝えられる実況は大切なんですよ。

<実況のトレーニング>
(大西アナウンサー)
まずは、選手の動きで、技もそうですけど、
その動きを描写、言葉にするというところからスタートするんですけれど、
2人でよく練習していました。

(野上アナウンサー)
今でもよく言いますけど、後楽園ホールの2階席の横サイド。
あそこで実況役、解説役を2人でやることもあるし、
それぞれ同時に実況の練習で喋っていたこともありました。
テープレコーダーに録音して、先輩に持っていったり。



<プロレス実況の醍醐味>
(大西アナウンサー)
感情を伝えるというところで、
他のスポーツ以上に意識をするのがプロレスだと思うんです。
たとえばですよ「目の前の相手をぶん殴っていった!」
「ぶん殴っていった」なんて、アナウンサーは使っていいはずがないんです。
でも、そういう言葉すらもふさわしい場面があるというのがプロレスなんです。
だから、他のスポーツ以上に、自分の中のいろんな言葉の引き出しや、
感情の引き出し、開けないところまで開けていくという、
自分を幅広くさせていくっていうことが、
プロレスの実況アナウンサーとしての魅力かなという気がします。

(野上アナウンサー)
他の競技よりも“選手を生かす”実況というのを心がけていて、
やはり物語があったり、ドラマがあったり、
それが選手の伝えてほしい内容だとするならば、
伝える場所が僕らの喋りでしかないシチュエーションも出てきたりします。
選手が求める喋りなんだとすれば大事にしなきゃとか、
そういう考えで喋ったりします。



<実況アナウンサーの現場に密着(前半)>
プロレスの実況アナウンサーは現場でどのようなことをしているのか、
両国大会にお邪魔しました。

この日、会場にやってきたのは入社1年目の2015年からプロレス実況を担当している山崎弘喜アナウンサー。

―いつも何時間前に会場入りするんですか?
(山崎アナウンサー)
興行にもよるんですけど、早いと3時間前。
打ち合わせがだいたい試合開始の1時間か1時間半前からあるので。


この日行われるのは9試合。
実況は吉野アナウンサー、武隈アナウンサーと3人で分担します。
そして、自身が実況を担当する前の試合は、リポーターを担当。
つまり、試合が始まればほぼ休憩することなくリングに向き合うんです。

そのため、試合前の準備はとくに重要。
スマートフォンで過去の試合映像を確認、
そして、ノートに向き合っていました。

(山崎アナウンサー)
これは実況の資料のためのノートです。
たとえば、これは今日のメインイベントの資料で、
ちょっと字が細かくて見えないかもしれないんですけれど、
それぞれの選手の経歴や技をまとめています。
その逆側のページには、
自分の中でこの試合はこういう目線で喋りたいなという、
僕の考えをまとめています。

試合開始の2時間前、番組スタッフが全員集まり、打ち合わせ。
それぞれの試合や選手の情報について確認を行います。

そして、第1試合の開始時間。
担当ではありませんが、山崎アナウンサーは会場へ。
通路でメモを取りながら試合観戦。
今後のための情報収集が重要なのだそう。

試合が終了すると、実況席近くのリポーター席へ移動。
マイクを常に握り、実況席から死角になる場所で何か起これば、
すぐさまリポートを入れます。

そして、試合が終了すると実況席へ。
山崎アナウンサーの本番が始まります。

<VTRを見て感想>
―ノートを作るということは大西さんと野上さんもしているんですか?
(大西アナウンサー)
作っていきます。
作り方は人それぞれかなという感じです。
僕は経歴の部分をすごく細かく入れます。
最初から最後までというか。プロレスの場合、
その選手がこれまでどんなレスラー人生を歩んできたのかというところが
急にこの試合のある場面でつながるということが起こり得るので、
その経歴を細かにノートにメモしておくということを意識しています。

―アナウンサー同士で連携したり、話し合ったりすることはありますか?
(大西アナウンサー)
レスラーの体重が重くなったとか細かい点、そういうことも共有します。

(野上アナウンサー)
技も。選手は内緒でいきなりリング上でドンと新技を出します。
そうすると、次の試合でその技が出た時に、
なんという技名で実況すればいいんだろうってなった時に、
選手取材をして、たとえば私が得た情報だとすると、
実況アナウンサーのグループチャットに
「両国大会で出た新技は〇〇になりました」と
いう情報を共有します。

<実況アナウンサーの現場に密着(後半)>
山崎アナウンサーが担当するのは、この大会のメインイベント。
リップクリームを塗って、いざ出陣です。

まずは選手の入場。
ノートに書き留めたフレーズを活かしながら、
闘い前の高揚感を煽ります。

試合開始のゴングが鳴ると、
冷静に熱く、解説者、ゲストとともに実況で試合を盛り上げていきます。
状況を見て、リサーチした情報を実況に入れながら、
大技には体ごと飛び出すような絶叫で、レスラーの闘いと観客の声援、
会場の熱気を伝えていきます。


試合が盛り上がる中、
実況席ではフロアディレクターから時折指示が飛んでいます。
どんなことを伝えているのでしょうか・・

(下島ディレクター)
試合中、技名をカンペで出したり、
たとえば、レスラーが師匠の技を使ったりとか、
そういう普通に試合を展開するのではなくて、
そこにちょっと奥行きを出すようなことを見つけた場合に、
それをカンペで出したり、
そういうことを細かく微調整をしている感じです。

実況を終えた山崎アナウンサーにプロレス実況の魅力を聞きました。

(山崎アナウンサー)
自分の引き出しを増やしてくれている競技。
なかなかこれだけいろんな能力が求められるスポーツはないと思うので、
僕にとって必要不可欠な実況です。

<VTRを見て感想>
(大西アナウンサー)
山崎アナウンサーの特徴として、声がいいんです。
どれだけ高い音まで上がっていても、
絶対に裏返らないないんだろうなという
山崎アナウンサー自身の自信も感じます。
聞いていてもそこに安心感があるという、
そこはやはり山崎アナウンサーの本当に他の誰も持っていない
大きな武器だなと見ていて感じます。
これがプロレスの面白いところで、たぶん喋る人によって
また全然違う実況になるだろうし、それも受け入れてくれます。
だからきっと同じ試合を僕が喋ったり野上アナウンサーが喋ったりすると、
また全然違う実況になります。

<アナウンサーが考える理想の“プロレス実況”>
(野上アナウンサー)
何が起きているか分からないまま進んでいったりすると、
視聴者はストレスじゃないですか。
だから、いかにしてそれをナビゲートしてあげるかという仕事が
僕らの任されている役割だと思うんです。
その表現方法は個人個人自由であって、
たとえば自分で知識を披露して、
こういう風に勉強してきたからこうなんですよって伝えるのか、
あるいは、それを知らない体で解説者に聞いて、
解説者からこれを引き出して伝えてもらうのか、それは様々なんです。
でもそれはゴルフでも野球でも同じかなという気はします。

(大西アナウンサー)
僕らはやはり邪魔になっちゃいけないです。
すごい試合をレスラーたちがやっている中で、
その魅力を僕たちが実況によって邪魔をして伝わらなくなるということが
一番避けなきゃいけないと考えています。
これは本当にどの競技でも、プロレスでも野球でもオリンピックでも
なんでも変わらずに見ている人たちが競技に集中できて、
とにかく「試合を楽しめた」と言ってもらえる
中継がベストだと思っています。
常にそこを目指していくっていう、そんな感じです。



<6月14日(日)全国ネット放送>
24年ぶりにプライムタイムで放送された、
今年1月4日の東京ドーム大会に続き、
新日本プロレスのビッグマッチが再び全国ネットで放送決定!

新日本プロレス大阪夏の陣!!
DOMINION 6.14 in OSAKA-JO HALL
逆襲のウルフ&新世代頂上決戦
6月14日(日)よる10時15分
テレビ朝日系列地上波にて放送

(西山プロデューサー)
毎年6月恒例の新日本プロレス大阪城ホール大会を、
当日、全国ネットで放送できるということで、
我々は熱い戦いをきちんとお届けしようと思っていますので、
ぜひご覧になってください。