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#961
2025年5月11日

映像取材部の仕事(前編)

【番組司会】山口豊(テレビ朝日アナウンサー)
      八木麻紗子(テレビ朝日アナウンサー)
【ナレーター】田中萌(テレビ朝日アナウンサー)
【ゲスト】花田 克治(映像取材部 映像取材担当部長)
     鳴坂 昇大(映像取材部 カメラマン)
テレビ朝日の報道、その最前線を担うのが映像取材部。
事件・事故・政治・経済・海外のニュースを
24時間365日、休むことなく取材を続ける部署に密着しました。



<映像取材部のデスク>


報道局ニュースセンターの中で
現場取材を行うカメラマンや音声、照明など
技術部門を担う映像取材部。
その中でスタッフを効率よく差配するのが
映像取材部のデスクです。
◎秦 大輔(取材班統括デスク)
電話連絡含めて取材の発注も結構多いので
一人では全然できなくてチームでやっています。
取材部総勢180人、みんなで役割をシフトで回しています。


出社しているカメラマンを、どの現場にいつ向かわせるか、
スケジュールを調整するのがカメラデスク。
この日はカメラマンも兼務する佐藤さんが担当。
朝から慌ただしい様子でした。
理由は、前日に発生した埼玉県八潮市の道路陥没事故。
24時間体制で取材することになり、
人員の配置をやりくりしていました。
◎佐藤茂(カメラデスク)
20人以上いるカメラマンをコントロールしているので
事件も同時多発的に起きると、到着時間など諸々あります。
指示を間違えないことが一番大事です。
一人では無理なので、デスクみんなで作業を分担してやっています。
その指示出しも気をつけて丁寧にやるように
現場優先で考えてやっています。



<本社から現場をサポート>
デスクの仕事はカメラマンの差配だけはありません。
事故現場では半径200メートルが立入禁止に。
デスク全員で、現場の状況が少しでもわかりやすい、
上から見下ろせる場所を探すため、インターネットの地図を検索。
その情報を現場のカメラマンに伝えます。
◎山崎貴智(EXデスク)
現場の人間は、自分と逆サイドの状況はやはり死角が多くて分かりません。
デスクから逆サイドに行くと“こうなっているよ”と断言はできなくても、
“こう見える可能性がある”ということは伝えられます。
社屋にいるデスクだからこそ
インターネットで地図を調べることができ情報を出せます。
ただ最終確認は現場の人間がやらなければなりません。
現場で何が起きているかを自分が見て判断しなきゃいけない。
それが現場のカメラマンの仕事なので、一次情報を間違えないようにする
一番責任が重い。 責任を持ってやらなきゃいけません。

<情報カメラの活用>


様々な事案に対応する映像取材部。
情報が入ると、即座に対応します。
陥没事故への対応に追われる中、
“ゆりかもめ”が止まっているという情報が。
カメラデスクは、すぐにカメラマンを現場へ派遣。
そして、天気予報などで目にする、
全国各地に設置されている情報カメラをチェック。
リモート操作が可能なため、
普段の取材にも活用しているんです。
情報カメラの映像からは停車している車両は見えませんでしたが、
視聴者が求める情報を、とにかく早く映像で見せる努力をする。
それが映像取材部の仕事なのです。



<映像取材部が主導する撮影>
この日は、カメラマンの星野さんが中心となって企画した
大掛かりな取材が予定されていました。
それはJR東海“ドクターイエロー”のラストラン。
様々な場所から撮影し、
「生放送で最後の勇姿をお届けする」という企画。
◎星野奈津子(デスク兼カメラマン)
「スーパーJチャンネル」の中で生中継は1回の予定。
それ以外もABEMAやYouTube(ANNnewsCH)で生中継する。
ドクターイエローの取材だけでカメラ10台、
ヘリからの空撮もあります。

<報道ヘリ>
「スーパーJチャンネル」の生放送がスタート。
もちろん八潮の事故がトップニュースなのですが、思わぬ緊急事態に。

事故発生から飛び続けている報道ヘリに不具合が発生。
テレビ朝日は2機の報道ヘリを所持しているのですが
そのうち1機は定期メンテナンス中。
もう1機も使えなくなると、空撮ができなくなってしまいます。

デスクの佐藤さんは、現場のカメラマンたちに事情を説明し、
地上のカメラで可能な限りカバーするよう指示。

数十分後、エンジンの不具合は点検で解消。
ヘリは八潮の現場に向かうことに。
ニュースサブでは、デスクの岡田さんが
ヘリに乗り込んだカメラマンに指示を行います。
機内のカメラマンには放送されている画面の状況がわからないため、
サブからデスクが画作りを指示します。

報道ヘリのトラブルのため、
予定していた“ドクターイエロー”のラストランは空撮を中止、
規模を縮小して放送することに。
臨機応変に対応するのもニュースの現場では重要なのです。
◎花田克治(映像取材担当部長)
これは仕方がありません。
“ドクターイエロー”のラストランは、どちらかといえば
平和な時だからこそ成立する企画です。
やはり優先すべきは、人命が関わっている八潮の陥没事故の方
というのは当然の判断です。
ですが、担当していたカメラマンやデスクたちは
心中穏やかではないと思います。
思い通りにならない、仕方ないのはわかっていますが、
やっぱり悔しいですよ。」


「スーパーJチャンネル」の放送後、デスク業務は交代。
24時間体制で映像取材部の業務は続きます。

<「映像取材部の仕事」の魅力>
◎佐藤茂(カメラデスク)
カメラマンとして現場にも出ますが、撮影しオンエアされて
やはり達成感がある。
事件、事故、災害、観ている人の役に立っているかと使命感もあります。
起こることがすべてニュースなので新鮮といいますか、
ちょっと刺激的でもあります。

<1日の取材件数>
― 映像取材部全体で1日にどのくらいの数の取材に出るんでしょうか?

◎花田克治(映像取材担当部長)
多い日だと120件ほど。 国会のニュース、海外のニュースなど、
いろいろ混ざってはいますが、100件を超えることは普通にあります。
ニュースなのでいつ何が起きるか分かりません。
何が起きてもいいように構えてはいますが、
今回の八潮の陥没事故のような大きな事故が起こると、
同時に何人もカメラマンを派遣しなきゃいけないことになります。

<デスクの仕事で大切なこと>
◎花田克治(映像取材担当部長)
記者の皆さんからの依頼をできるだけ取材して、
放送につなげたいと思っている。
テレビはやはり、映像がないとニュースになりません。
カメラマンをなんとか派遣してオンエアにつなげたいと思っています。
突発事象にどうやって対応するかという、そのバランスをどう取るか。
できるだけ分かりやすく、ニュースを伝えるためにどういう映像を
番組・ニュースに出せるかが一番大事なところだと思います。

<24時間体制の映像取材部>
◎花田克治(映像取材担当部長)
デスクの仕事は24時間体制。
一番はやはり災害対応というのが大きいですね。
災害はいつ起きるか分からないです。
東京では地震が起きたとなると、
まず泊まりのカメラマンは首相官邸に行きます。
危機管理の対策本部ができた時に、
総理だとか、閣僚が入ってくるところを撮らなきゃいけません。
状況によっては気象庁にも人を出さねばなりません。
北朝鮮がミサイルを発射したら防衛省に行かなきゃならないとか、
ニュースは24時間動いているので
映像取材部には、常に人がいるようになっています。

<突発的事故への対応>
◎花田克治(映像取材担当部長)
一番は「何が起きているのか早く知ること」です。
情報を取るのは社会部など出稿部の記者たちがまずはやるわけですが、
とはいえ情報がなくても映像取材部のカメラマンは
現場に行ってまず撮り始めなきゃいけません。
だから、カメラマンもただ単に撮ればいいだけじゃなくて
カメラマンも記者的な動きをしながら取材を進めて、
だんだんと事件、事故の全容がわかってくるという感じです。
そのあたりは常に意識して、映像取材部のみんなは動いています。

<他局との違い>
― 放送で他局との違いを意識することはありますか?

◎花田克治(映像取材担当部長)
もちろんあります。 インターネットの地図だとか、
そういうものを見ながら「ここなら撮れるんじゃないか?」という感じで。
現場のカメラマンと連携しながら
撮影ポイントをどんどん絞っていくんですけど、
他社も同じような動きをもちろんしています。
他社が先行してしまうこともあるので、
映像取材部のデスクは、他社のオンエアも観ながら、
「このカメラはどこから撮っているんだろう?」と
地図で探して現場のカメラマンに伝え、また場所を探ってもらう。
そういうことはやっています。

― そういう後方支援を大事にしているってことですね?
◎花田克治(映像取材担当部長)
やはり撮っている最中は、現場でスマホをいじることはできません。
状況を探れないので、それを全部デスクが引き受け
情報を現場のカメラマンに伝えます。