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#940
2024年12月1日

「劇場版ドクターX FINAL」
脚本家・中園ミホとプロデューサー・内山聖子が語る(前編)

【番組司会】山口豊(テレビ朝日アナウンサー)
      八木麻紗子(テレビ朝日アナウンサー)
【ナレーター】田中萌(テレビ朝日アナウンサー)
【ゲスト】中園 ミホ(脚本家)
     内山 聖子(エグゼクティブプロデューサー)
【VTR】西田敏行(2017年のインタビュー)


12月6日(金)に公開される「劇場版ドクターX FINAL」の
中園ミホさん(脚本家)と内山聖子さん(エグゼクティブプロデューサー)
にお話を伺います。



<劇場版でFINALになった理由>
(内山)
「ドクターX」は2012年から長く米倉さんと中園さんと一緒に
作り上げて、毎シリーズ、「これが最後」と思って作ってきました。
それくらいやっぱりエネルギーも使いますし、ワンシーズンワンシーズン、
もう精一杯全身全霊かけて、「これで最後」って言いながら、
結局またやってしまうということが続いてきました。
「この次どうするか」という話になった時に
最終的には米倉さんから
「一度、大門未知子にけじめをつけたい」
「大きなスクリーンで、テレビシリーズのファンにも最後を観てほしい」
という話がありました。
その覚悟を持って一度締めたらどうだろうかという話を
中園さんにもして、結果、これがファイナルとなりました。


(中園)
「これで終わりですから」って毎回そう言われていました。
そうすると、また次に声をかけていただいて…
っていうのがずっと続いていました。
ドラマのシリーズ7の時は、パンデミックもありました。
本当に終わりかなと思っていたのですが、もう1回書けるんだというので、ちょっと興奮しました。
みんなね、年を取ってくるんですよ、10年たつと私も含めて。
やっぱり100歳になってはできないし、
どこかでけじめをつけなきゃいけないんだろうなと思っていたら、
こういう形で花火を打ち上げて終われるのはいいんじゃないのかなと思って
うれしかったです。

<完結する「ドクターX」について街頭インタビュー>
「寂しい感じがします。これからも続いてほしいとは思いますけど」
「ちょっとショックかな。なんで最後になっちゃうんでしょう?」
「もうちょっと続けていただいてもいいんじゃないかなって思います」
「私は小学生の頃から観ているので、その時から観ていたものが
なくなっちゃうのかなって思うと寂しいんですけれども、
どうして終わっちゃうんですか?」
(内山)
うれしいですね。「寂しい」と言われたら本当にうれしいし、
そういう思いで12年間やってきたこともあるんですけど、
もともと大門未知子っていうのは、
この世にいるかいないか分からないスーパードクターで、
ふらっとやってきて、病院にいる全てのことを変えて、患者を治し、
またふらっとどこかに行ってしまうっていう、
そういうイメージで作っていたので、
どこかにきっといるんじゃないでしょうか、
と思っていただければいいかなというふうに思います。
(中園)
本当に皆さんが「寂しい」って言ってくださるとね、
本当に、あぁ私も寂しいなってしみじみ思いました。
もすごく仲のいいチームなので、キャストの方たちもスタッフも、
親戚の集まりみたいに、ドラマの撮影が始まるとみんなで集まって
楽しいことやって、また別れて。
それをずっと繰り返していたんだなと思って、いま本当に視聴者の方が
「寂しい」って言ってくださって、ちょっと急にぐっときちゃいました。



― 劇場版で完結するということになって米倉涼子さんと話されましたか?

(内山)
「劇場版で完結させたいね」っていうところからスタートした話なので、
米倉さんの意見とか物語に対する思いも、
できるだけ入れていこうと思いました。
結果的にやっぱり一番近い、岸部一徳さん演じる晶さんのこと、
大門未知子にとっては、師匠である存在。その「師匠と弟子の話」を最後にやりたいということは話していましたが、
それが米倉さんにとっては一番最悪のシナリオというか、
「つらいシナリオになった、避けたいシナリオだった」
と後で言っていましたけれど。
そこの2人を描くことが今回一番やりたいことでした。
(中園)
私は米倉さんとお仕事の話をしたことがない。
行きつけのバーで楽しく盛り上がるみたいな。
映画の脚本を書いている時もお会いしたんですけど、
やっぱり全然その話はしないで
相変わらずカッコよく飲んでいるなぁ…と私は遠くから見ていて。

<「劇場版ドクターX FINAL」のストーリー>
(中園)
私はずっとやっぱりね、大門未知子は子供の時どんな子だったんだろう?とか、
医大生の時どんなだった?どういう気持ちでキューバに行ったんだろう?って。
でやはり、晶さん(神原晶)をちゃんと描きたかったんです。
大門未知子の師匠なので。
1話完結でドラマを書く時は、やっぱり小出しにしかできないんです。
それを2時間の映画で、スクリーンでできるということは、
ガッツリそこは描きたいと思いました。
正直な話、ドラマのシリーズ1の時は、いきあたりばったりで。
キューバで軍医とかやっていたのかな?みたいな、ふわっとした感じでしたが、さすがに12年やっていると履歴書的なものが自分の中でくっきりと
ありました。
1話完結のゲストがいるドラマではなかなかそこまで描けないですから、それは描けて良かったですし、出し切ったなっていう感じです。

<テレビと映画の違い>
(内山)
何と言っても、スクリーンが大きいところもあるんですけれど、
今はもうテレビドラマとか、
小さな画面で観られることも多くなったじゃないですか。
どんどん先送りしながら観るっていう。
映画は集中して2時間ぐらいの間、劇場に座って観てもらえる。
それはもう何よりえがたいもので。
私がテレビドラマを作る時は、最初のシーンからかっ飛ばしていこうと思って作っています。
最初が面白ければ次のシーンも観るし、
次のシーンが面白ければ、その次のシーンも観るし、
最後のシーンより最初のシーンを大事にするっていうセオリーを
勝手に自分のプロデューサー論として持っていました。
映画だから、座ったら最後まで観てくれるんだと思った瞬間に
最初より最後を大事にしようと思って、
やっとそれができると思って作ったのが映画でした。
(中園)
描きたいところを思い切り書けるということなんだと思います。
1話の連ドラだと、いろんなキャストのいろんな登場人物のファンの方もいらっしゃるし、
皆さんが楽しいところを観せたい。その中でストーリーを作っていくので。
2時間の映画だと遠慮なく晶さんと未知子の関係。
そこをグワーッといけるんだなって。
それは思い切りいけたと思います。

<西田敏行さん演じる蛭間重勝>
(中園)
蛭間院長が、いつも優しい方なんで、私の脚本を読むと、
「いや、あのシーンがいいよ」「あのセリフがいいよ」って
褒めてくださるんです。
だけど出来上がった映像を観ると、1字も残ってなかったりするんですね、
私のセリフが。
こんなシーン書いたかな?と、シリーズ7までずっとそうでした。
ただ今度の映画に関しては、本当に1字1句変えずに読んでくださって、
もうこんな悲しいお別れになるのなら、
思いきりアドリブやってくれてよかったのに
と思うぐらいきちんとやってくださっています。
西田さんって本当に私のセリフ読んでくださらないんですが、
「蛭間院長はこんなことは言わない」ということは絶対におっしゃらないんです。
それは全身全霊で蛭間重勝を自分の中に入れて、
ああいうシーンを作ってくださったんだと思います。
逆に私もアドリブが楽しみになっていて、
「今度どんなになっているんだろう?」と思っていたら、「あれっ?」と思いました。
本当に私が書いたセリフをそのまま言ってくださっているな、とびっくりしました。

今年10月、映画完成報告会見の数日後、
76歳でお亡くなりになった西田敏行さん。
70歳の時 ご出演いただいた「はい!テレビ朝日です」では
「ドクターX」への想いを語っていました。
(西田)
大門未知子の「自由に自分のスキルを披露できる女医さん」に対抗するっていうんですかね、組織の中で
「そんなに自由なんてあるあるわけねぇじゃねえか」みたいなところを
体現、具現化する一つの象徴として蛭間を捉えていますけどね。
勧善懲悪というよりは、やっぱり世の中のある意味で「社会悪」みたいなところ。
だから話もタイムリーにいろんな時局時勢を取り入れて、
それをちょっと皮肉を込めてお伝えするような感じになっているんで。
僕はやっぱりそこが皆さんに受け入れてもらっている一つの要素なのかな
という風に思いながらやっていますけれどね。
― アドリブについて

(西田)
本当に脚本を書いてらっしゃるシナリオライターの方には、
本当に甚だ申し訳ないんですけど、やっているうちに、
「こういうことも言いたい」みたいな思いがふぅっと浮かんできちゃうんですね。
だから前もって、前の晩にこういうことをやってやろうとか、
そういう作為は一切ないんですけど、そういう予定調和じゃない、
ちょっと緊張が走る瞬間がかなりリアルで、
映る側も何か楽しくなるんじゃないかな、
なんていう風にちょっと思っちゃったりしているから。
俳優さんによっては迷惑だなという人もいらっしゃると思います。

(VTRを観て中園さんの感想)
西田さんは、本当にもう蛭間重勝だったんだなって思いました。
それは本当に光栄なことですね。
あんな名優にそれだけ気持ちを入れてなりきっていただいて、楽しんでもらって。
西田さん演じる蛭間重勝は、私が思っている蛭間よりも蛭間らしいです。



<豪華な出演者>
「劇場版ドクターX FINAL」は、
大門未知子を演じる米倉涼子さんをはじめ、豪華キャストが出演。
テレビドラマシリーズから続く個性豊かな、お馴染みのキャストはもちろん、
研修医・東村練に西畑大吾さん。そして、ファイナルで未知子と対峙する
最大最悪最強の敵、神津比呂人は染谷翔太さんが演じます。
(内山)
最強最悪の敵は若い人がいいなって思ったんです。
今まで本当に西田さんを含め、
伊東四朗さん、北大路欣也さん、北野武さんという錚々たる強敵と戦ってきた
未知子が、最後に戦うというか、本当に厄介だなと思うのが、
ものすごく才能溢れる若い外科医だったらいいなとは思いました。
あとはもう中園さんや監督と相談する中で、
どういうふうにその立ちはだかる敵の造形を作っていくかっていうことは
話し合っていったんですけど、
直感的には、本当に若くて得体の知れない未知数な人、
一方では医師として未知子と同じような能力を持っている人がいいなと思って。



<「劇場版ドクターX FINAL」の見どころ>
(内山)
ファイナルなので、
ぜひ大門未知子の最後を見届けてほしいという思いだけなんですけど、
この令和の時代ではなかなかみなくなった「師匠と弟子」というか、
会社でいえば上司と部下でも先輩と後輩でもいいんですけど、
その信頼し合える関係というものが薄くなってきたこの時代に
そこをたっぷり、もう擦り倒しているので、
そこに笑って泣いていただきたいなと思います。
(中園)
もうそれに尽きます。
尽きますけど、あとプラス、本当に西田さんが初めて
私の書いたセリフをちゃんとそのまんま言ってくださったので、
そこもぜひ観ていただきたいなと思います。