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#934
2024年10月13日
第63回テレビ塾「外報部・海外特派員の仕事とは?」②
~全世界を駆け巡る海外ニュース報道の裏側~
【司会】山口豊(テレビ朝日アナウンサー)
八木麻紗子(テレビ朝日アナウンサー)
【ナレーション】田中萌(テレビ朝日アナウンサー)
本間智恵(テレビ朝日アナウンサー)
【出演】大和 聡史(報道局ニュースセンター 外報担当部長)*6月12日開催時
大平 一郎(報道局ニュースセンター 外報部デスク)*6月12日開催時
力石 大輔(ロサンゼルス支局 支局長)
小俣 貴史(お客様フロント部 モデレーター)*6月12日開催時
林 美沙希(テレビ朝日アナウンサー)
八木麻紗子(テレビ朝日アナウンサー)
【ナレーション】田中萌(テレビ朝日アナウンサー)
本間智恵(テレビ朝日アナウンサー)
【出演】大和 聡史(報道局ニュースセンター 外報担当部長)*6月12日開催時
大平 一郎(報道局ニュースセンター 外報部デスク)*6月12日開催時
力石 大輔(ロサンゼルス支局 支局長)
小俣 貴史(お客様フロント部 モデレーター)*6月12日開催時
林 美沙希(テレビ朝日アナウンサー)
<テレビ塾>
18歳以上の視聴者の皆様を対象に、テレビ朝日スタッフがテレビの仕事・仕組みについて分かりやすくお話しする企画です。
<大谷翔平選手の入団会見を取材したロサンゼルス支局と中継>
- 力石:
- L.A.支局は1984年のオリンピックに合わせてできたと言われています。
引っ越しを何回かしていますが、特派員が作業している部屋はこの場所に来てから変わっていません。
こちらは来客時に接客する部屋ですが、特徴は時計が2つあるということです。
東京とロス、両方の時間を常に意識しています。
一番奥にあるのが機材部屋です。
このスーツケースとこの機材があれば、国立公園の山奥からでも中継できるようになりました。
カメラも小型化、高性能化が進んでいますが、今も現役なのが報道カメラです。
これで大谷選手の会見もアップすることができました。
その時の事はまた後ほど詳しく説明できればと思います。

<大谷翔平選手 入団会見の裏側>
- 大平:
- 各局のテレビ放送が映っているこの写真を見ていただければわかるのですが、
E Xと書かれたテレビ朝日のモニターだけが唯一大谷選手をとらえています。
これは生中継の映像です。
午前8時ちょっと前、ちょうど「グッド!モーニング」の放送が終わる直前でテレビ朝日だけがこの瞬間、大谷選手の姿をいち早く中継でお伝えすることができました。



<中継 六本木―――ロサンゼルス>
- 力石:
- 前日、東京とオンラインでミーティングを行いました。
外報、スポーツ、各番組の技術も含めて100人以上が参加して何を目標にするか話し合
いました。
結果は「1秒でも早く捉えよう」ということになり、外報では通常2名のスタッフを8名に増やしました。
ニューヨークから応援にきてもらい、11人で4か所から中継することになりました。
最初の作戦は、まず現場に行くことです。
我々は4時間前から球場のゲート近くでスタンバイして、何とか先頭集団に食い込みました。
これが場所取りとして結果的にうまくいったと思います。


続いて大事だったのが、大谷選手が5つあるうちのどの席に座るのかということでした。熟練のスポーツ記者の予想では右側に座るということだったので、我々も右側を撮影する前提で準備を始めました。
もう一つ難しい要素が残っていました。
椅子が5つ。入り口は左右両方に2つ…。
左側にはカメラが大勢いたので、もしかしたら我々が知らないだけで、左から来るのかなと思いました。
そこで我がチームのカメラマンに聞きました。「1秒でも早く撮るのがミッション」だけど、どちらにしますか?
小宮山カメラマンは野生の勘で
「カメラが少ない方に行きましょう!必ず右側から来ると信じています」と…。
実際その通りになって、放送でいち早くご覧いただくことができました。
とにかく準備をして、最後は現場の人の判断、嗅覚で決めるというのが今回振り返ってみて良かったポイントかなと思います。


<北朝鮮「軍事衛星」打ち上げ 撮影の裏側>
― 日本のメディア各社が報じた北朝鮮による軍事偵察衛星の打ち上げ
この撮影には並大抵ではない苦労がありました。
この撮影には並大抵ではない苦労がありました。


- 大和:
- これはかなりきつい仕事です。
北朝鮮がいつ発射するか明確に知らせてこないため、24時間、10日間、2チームでローテーションを組んで撮り逃さないようにずっと狙っています。
発射場があるとされる北朝鮮の東倉里(トンチャンリ)は、撮影場所のある中国の丹東(タントウ)という場所から50kmぐらい離れています。
そんな離れた先から打ち上がる約20mの物体をカメラで狙います。
しかも、冬は-10℃。
そういう環境の中で窓を開け続けてクリアに撮れるように空を見続けるか、時に窓を閉めて窓が曇らないようにケアをするか。
色々なことをやりながら、やっと撮れたのがこの映像です。


<変わる取材方法>
- 大平:
- コロナ以降はZOOMやSKYPEといったビデオミーティング機能を
使ってインタビューをすることもありました。
私がロンドン支局にいた時、イスラム組織タリバンに、話を聞きたいと思いアフガニスタンにつないでインタビューをしました。
ムハンマド内務報道官という方ですが、彼のSNSのアカウントにメッセージを送りインタビューを申し込みました。
彼は時間通りに回線を繋いでくれて、そしてインタビューして放送するという、そういった時代になりました。
こういったインターネット使ったインタビューだけではなく、こんな取材の手法もあります。
O S I N T(オープンソースインテリジェンス)という手法です。
これはオンライン上などで、誰もが得られる情報を分析してまとめることによって、新たな事実をあぶり出す、アメリカのCIAなどの諜報機関が捜査に使っていた手法です。
欧米のメディアを中心に、取材にも活用しようという動きが広がり、今、日本でも活用する動きが広がっています。
そこで我々もこのO S I N Tの手法を取材に使いました。
「北朝鮮・金正恩氏のメルセデス密輸の手口」という企画を作りました。
本来、制裁でこういった高級品は輸入できないはずの北朝鮮がなぜ持っていたのかということを調べようという流れです。
アメリカの調査機関が車のシリアルナンバーを入手していたので、そこから調べました。メルセデスのデータベースが公開されていたのでそこからモデルが判明。
車種と一致したということで、これは間違いないであろうということで、別件で入手していた輸出入に関する書類、これを紐解いていくとルートがわかってきました。
ここから実際の取材が入ります。
韓国に、この車を積載した貨物船がいるということがデータベースで判明し、荒木記者が韓国に飛んで、この貨物船を実際に直撃することになりました。
これがO S I N Tの手法です。

<変化しないもの“取材メシ”>
- 大平:
- 皆さんと同じように取材中だとしても食べなければいけません。
食べるだけではなくて、この現地の食からいろんなことが見えてきます。
左はアフリカ・コンゴのお肉で、ヤギなですね。
現地ですごくヤギが食べられていまして、炭火で焼くととっても美味しいんです。
真ん中はヒツジのレバ刺しです。
レバノンは中東の中では随一のグルメ大国なんです。
そして、自炊をせざるをえない状況もあって、
イスラエルやウクライナなどで外出禁止令が出ているときなどは、ホテルの1室に炊飯器を持ち込んだり、コンロを持ち込んだりして、豚の角煮や鍋で辛ラーメンなどを作ることもありました。


<やりがい>
- 大平:
- 直接は皆さんに関係ないという風にみえますが、
必ず「世界はどこかでつながっています」ので、そういったことも含めて伝えていきたいと思います。
- 大和:
- 映像メディアとして、「1カットが決定的な証拠」になったり、
そこから事実に迫っていく入り口になることもあると思っていて、
情報があふれ、何を信じていいのか分からない時に、
少しでも世の中の役に立てる外報部でありたいですし、テレビ朝日でありたいと思っています。
