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#927
2024年8月25日

ドラマ「南くんが恋人!?」の舞台裏

【司会】山口豊(テレビ朝日アナウンサー)
    八木麻紗子(テレビ朝日アナウンサー)
【ナレーション】田中萌(テレビ朝日アナウンサー)
【ゲスト】服部 宣之
     (コンテンツ編成局ストーリー制作部長
     ゼネラルプロデューサー)
毎週火曜よる9時から放送中のドラマ「南くんが恋人!?」
ストーリー制作部長の服部ゼネラルプロデューサーに
作品の見どころを聞きました。


ドラマ「南くんが恋人!?」
出演:飯沼愛 八木勇征 武田真治 木村佳乃
   沢村一樹 加賀まりこ 室井滋 光石研ほか



<30年前の作品との違い>
この作品は以前も放送されていました。
高橋由美子さん、武田真治さん出演の「南くんの恋人」から、
ちょうど今年で30年。
今回の「南くんが恋人!?」は男女が逆転して、南くんが小さくなる。
脚本家の岡田惠和さんと「今回はどういうドラマを作ろうか?」という
構想を練っていくうちに「令和版ならではの新しい物語を描いた方がいいよね」
ということになりました。
過去4度の映像化では、ちよみが小さくなる。
それってやっぱりどこかメタファーで、
「女性は男性が守るもの」という価値観の上に
成り立っていたものだと思うんですが、
「令和の時代は、もうそういう時代でもないよね」ということから、
思い切って「男女を逆転させる」というバージョンを岡田さんと思いついて
原作の内田春菊先生も非常にノッてくださって。
それでこの形で今進めています。



<脚本家・岡田惠和のこだわり>
岡田さんが紡ぐ世界というのが、このドラマの一番の魅力だと思いますし、
男女が逆転したことによる強みと、南くんのラブストーリーとか、
ちよみを取り巻く家族の問題、南くんを取り巻く家族の問題、
今回はそういった「家族の物語」というのも
ドラマの中でバランスよく描かれているので、
そこが今までの映像化とは大きく違うところかな、と。
このドラマは「ホームラブコメディー」がテーマですので、そういったところが
面白く見えるといいなと思っています。



<豪華な出演者>
主演の飯沼愛さんを始め、国宝級イケメンの八木勇征さん、
そして、30年前に南くんを演じた武田真治さん。
沢村一樹さん、室井滋さん、加賀まりこさん、木村佳乃さんなど、
本当に豪華なキャストの方々に出演していただいています。
岡田さんのドラマって、本当に役者さんが演じがいのある脚本というか、
役者さんがすごくノッてくださるっていうのがあります。



<武田真治 30年ぶりの出演>
武田さんは30年ぶりに、今回はお父さん役で出演。
武田さんの南くん愛、このドラマに対する愛が本当にすごくて、
30年前に南くんを演じた時に、ひと晩で世界が変わったそうです。
街を歩くと、いろんな人から「南くん!南くん!」と
声を掛けられるようになった。
武田さんの役者人生の中で、すごくエポックなことだったようで、
そういうことから今回、
「どうしても、どういう役でもいいから出たい」とおっしゃって、
ちよみの父親役をお願いしました。
ドラマの冒頭で、武田さんが飯沼さんに向かって「ちよみ」って
呼びかけるシーンがあるんですけど、
30年前は、武田さんは南くんとして「ちよみ」って呼びかけていたんで、
なんかそれはちょっと観ていてグッときました。

<飯沼愛・八木勇征×武田真治 スペシャル対談>
主演の2人と30年前に南くんを演じた武田真治さんが
1話放送前に対談していました。


◎飯沼愛が演じる「堀切ちよみ」

(武田)
飯沼さん、主人公の「ちよみ」はどうなの?

(飯沼)
台本を読んでいくにつれて、ちよみの愛情深さとか、
優しさっていうのがすごく素敵だなって思うからこそ、
観ている人に、ちよみの素敵さをどうやったら伝えられるかな?というのを
模索しながら演じています。

(武田)
僕は魅力的に演じるつもりはまったくなかった。
脚本が導いてくれるというか、ただ身を任せればいいと思う。
ちよみの行動が、この作品の中で素敵に映るはずだから、
そこは心配することないよって言いたいかな。

(飯沼)
武田さんのときは、ちよみ役の高橋由美子さんと現場で会う機会はあったんですか?

(武田)
実物の高橋由美子さんとは、ほとんどお会いしたことはないですね。
半年後にスペシャルで1回だけ撮ったときは、
そのままのサイズの由美子さんとお会いすることができた。

◎15cmの演技

(八木)
15cmのサイズ感になるために、
グリーンバックでの撮影になるんですよ。もちろん1人で1日中。
やってみて、まず思うのはシンプルに寂しいです。
でも、グリーンバックの撮影初日、
飯沼さんが休みの日、朝の9時とかですよ、現場に来てくれて。
すごく心強くて、その人のイメージとかをつかんでおくと、
1人の時も、そこに本当にいるっていう風にリアルに思えるから、
今はいけるんじゃないかなって思っています。

(武田)
目線を合わせるのが難しくなかったですか?

(飯沼)
難しいですね。やりながら、これで目が合っているように観えているのか、
大丈夫なのかな?って思いながら演じています。

(武田)
これはね、ちょっとコツがあるんですよ。

(飯沼)
聞きたい!

(武田)
お伝えしたい。

(飯沼)
いま言ってくれないんですか!?w

◎南くんへアドバイス

(武田)
小さくなる南くんにお願いしたいことはね、
全身で演じてほしい。
どんな芝居をこの時ちよみがするだろうって想像すること自体がね、
やさしい眼差しを生むと思う。
どんな風な顔をするだろう?という気持ちが、
声のトーンや目線を優しくしてくれる。
だからもうグリーンバックとか考えずに演じていいのかもしれない。

<撮影の舞台裏>
― やっぱり撮影は大変だったんじゃないですか?

想像以上に大変でした。
八木さんは1人でグリーンバックを背負って連日撮影しているので、
本当に孤独だなって思いますし、
飯沼さんも、なかなか15cmの恋人とお芝居をするという経験はないと
思いますので、目線をどこに置くとか、声のトーンとか、
そんな1つ1つのことに悪戦苦闘しながら作り上げています。
やはり独特の世界ですね、本当に。
でもだからこそ、この15cmの彼氏、そしてもっと巨大な彼女、
そこから見えてくる、2人なりの恋人像というか、
人間関係の結びつきみたいなものが、岡田さんの脚本で面白く描かれている
ので、
観ているこちらがすごくやさしい気持ちになれる、
何かそんなものを、このフレッシュな2人から感じています。



<メイキング映像>
「南くんが恋人!?」この作品最大の魅力は、
ちよみと小さくなった南くんのシーン。
2人のシーンにも関わらず、
撮影現場ではそれぞれが単独で演じ、
合成技術を駆使して1つのシーンを作り上げています。


(飯沼)
私は想像で会話はしていますけど、ちゃんと会話をしているように
観えているのかな?という不安は少なからずあって、
ずっとこれからもこうやっていくのか…って思うと、
不安に襲われたというか。

(八木)
要所要所でモニターを観ながらやっていますけど、
これできているのかな?って。

飯沼さんと八木さんがこれまでにない演技に挑戦した
15cmの南くんとのシーンに注目です。


試行錯誤の連続だと思います。
ここにいる、この距離感。これを想像しながら芝居をしなきゃいけない。
しかも、それが恋人という関係性ですから、
当然、通常の関係性とはちょっと違う、これをお互い演じるというのは
本当に大変なんだろうなっていうのは思います。

― 15cmサイズの人形、フィギュアっていうんですかね?
これも実際に撮影現場にあるんですか?


毎日ちよみさんに持ち歩いていただいて。
人形は「なんさん」って呼んでいるんですけど、人形を置いて。
ただ、それもまた武田さんに言わせると、
「どこか1点だけ見つめちゃっているというのも、
15cmの人に対する芝居としてはちょっと違うんじゃないか」
これは15cmの恋人と芝居をしたことがある武田真治さんにしか言えないこと。
「もうちょっと目線をぼやっとした方が、実は観ている方からすると、
ちゃんと会話するように視えるんじゃないか」とか、
そういう独特のアドバイスをいただいています。
ちょっとだけ普段のお芝居より大きい方が気持ちが伝わるんですよね。
小さくなった自分が、大きい相手に対して何かを伝えようとする時って、
どこかでちょっとオーバーアクションになるはずなんです。
声のトーンとかも含めて。
それを武田さんが八木さんに言ってくれて、
そういうところのお芝居の差というのはすごく面白いなって。
武田さんの30年前の経験がめちゃくちゃ生きていますね。



<ゆずが歌う主題歌「伏線回収」>
今回のドラマは湘南を舞台にした「ひと夏の物語」なので、
青い空と青い海には、「ゆず」さんの歌が似合う。
無条件でテンションが上がりますよね。
何かそういった物語を作りたいなと思った時に、
「ゆず」さんの歌って絶対に似合うだろうなって思ったので、
主題歌が「ゆず」さんに決まった時は、本当に何か恥ずかしいけど
ちょっとガッツポーズするぐらいの嬉しさがありました。

― ドラマの主題歌はどうやって決まっていくのですか?

いろんなケースがあると思うんですけど、
やっぱりいいドラマって何十年たっても
必ず主題歌やその時流れた音楽と共に人の思い出の中に蘇ってくる。

その音を聴くだけで、そのドラマの情景が蘇ってくる。
だからこそドラマにとって主題歌って本当に大事で、
通常はプロデューサーと音楽プロデューサーが、
ドラマの世界観を話し合って、その世界観に合ったアーティストさん、
いろいろなアーティストさんを提案していただいて、
そこから決めていくというケースが多い気がします。
もう1つのパターンとして、実際にその脚本家とプロデューサーが
脚本を作る段階から頭の中に歌声が流れちゃっているんですよね。
自分でセリフを黙読していると、もう勝手にバックミュージックが流れていて、
そうすると、どうしてもこの人に歌ってほしいということを
お願いしに行く、それこそ一本釣りに近いというか。
「どうしてもこのシーンでこれが流れちゃったんで、
どうか歌っていただけませんか?」
今回のドラマでいうと、ちよみが走っているところとか、
「ゆず」さんのメロディーが浮かんで。
きっとこれは僕だけじゃなくて、みんな同じ思いを持ったと思うんですけど、
ちよみの背中をポンと押してくれる気がして、
脚本家の岡田さんの優しい世界と「ゆず」さんの音楽って
すごくマッチすると思いますね。



<出演者コメント>
◎木村佳乃さん(ちよみの母「堀切楓」)

私は「南くんの恋人」がドンピシャの世代でございまして、
高橋由美子さんを武田真治さんが手のひらにのせている作品を
拝見していたので、現代で映像化されることに驚いて、
しかも今度は小さくなるのが男女逆転ということで、
またそれもウキウキしていて、とにかく作品の一員に入らせていただける
ということで、とにかく今ワクワクしております。



◎加賀まりこさん(ちよみの祖母「百合子」)

私が15cmになっちゃったらどうしよう?
初めて考えたんだけど、全然浮かんでこない。
自己主張が強いから困っちゃうわね。



本当にありがたいことに、若い2人を盛り上げようと思って、
ベテランの方々が集まってくださって、
現場の空気を盛り上げてくださっています。
やっぱりすごくいい雰囲気の中で撮影ができているのが、
プロデューサーとしてとても幸せだなと思いながら現場を見ています。

<「南くんが恋人!?」今後の見どころ>
物語もどんどん佳境に入っています。
ちよみと南くん、2人の関係性がどうなっていくのか?
そして、それを見守る家族や商店街の方々は、
どんな思いでこの2人の先を見ているのか?
岡田惠和さんの脚本らしい、あたたかくも優しい世界が
どんどんどんどん色濃くなっていきます。

最後まで観ていただいて、このドラマを観終わった時に、
少しでも視聴者の皆様が優しい気持ちになっていただければ
幸いだなと思っております。