バックナンバー

#916
2024年6月2日

第62回テレビ塾 「池上彰のニュースそうだったのか!! 」番組制作の舞台裏
~“わかりやすく解説”は一体どうやって生み出されるのか~

【司会】山口豊(テレビ朝日アナウンサー)
    八木麻紗子(テレビ朝日アナウンサー)
【ナレーション】田中萌(テレビ朝日アナウンサー)
【出演者】
丹羽敦子(ゼネラルプロデューサー)
中田智也(プロデューサー)
小俣貴史(お客様フロント部)
森山みなみ(テレビ朝日アナウンサー)

<テレビ塾>
18歳以上の視聴者の皆さまを対象に、テレビ朝日スタッフがテレビの仕事・仕組みについて分かりやすくお話しする企画。
今回は、リモートで開催されました。



<テーマの決め方>
丹羽:
収録の後、楽屋に集まって「何かあります?」って話をするんですけどw
池上さんが手帳を持っていて、そこに台湾総統選とか、この日、どこどこの大統領
選挙とか書いてあるんです。それを見ながら提案を受けつつ、制作陣が気になって
いることを挙げて、決めています。

小俣:基準はあるんですか?

丹羽:
最近ニュースになっていることが一番多いです。
池上さんがニュースを観ていて、この説明じゃわからないなぁと思うことをわかり
やすく解説しよう、ということが多いですね。
あとは、背景が面白いと思うものですね。

<放送までの流れ>
・構成会議 放送作家やディレクターで「企画案」を考える
・池上さんとの打ち合わせ 構成案を池上さんと共にブラッシュアップ
・構成案の作成 ディレクターが会議を受けて作成
・ADの仕事 リサーチ、ライブラリーでの素材出し、映像使用の許可取り、外録ロケ

<わかりやすく解説~池上彰のこだわり①>
丹羽:
池上さんがいつもおっしゃっているのは、「誰に対して解説するのか?
まず考えましょう」ということ。
どこの大学生に説明するのか?もしくは、中学生なのか?会社員なのか?主婦なの
か?
それによって使う言葉も解説の度合いも違ってくると。
誰に向かって解説するのかを常に考えて、話しているとおっしゃってます。
でも、テレビって幅広いんですよね。
池上さんがおっしゃっているのは、「ニュースを知らない人にはわかりやすく
詳しい人にも“そうだったのか”と思える解説」を心がけているそうです。
逆もあって、「相手と会話するだけで知的レベルがわかる」っておっしゃいます。



<わかりやすく解説~池上彰のこだわり②>
中田:
突然ですが、クイズです。
政治や経済の話題でパネルを出して解説することがありますが、このパネル、
池上さん的にはNGがあるのですが、どこか分かりますか?


森山:表情が無いのでどういう関係かわからない。

中田:
おしい!
正解は位置なんです。

森山:日本から見た国の位置ですか?

中田:
正解です。
位置関係は、地図に合わせた方が見やすいと池上さんはおっしゃってます。
日本円とドルを紹介するときであっても位置関係に拘っています。
丹羽:
位置がずれていると「ん?」と一瞬思うらしいんです。
位置関係があっているとすんなり入ってくるので素直に解説が聞けるので
一瞬の立ち止まりをしないように心がけているそうです。

<わかりやすく解説〜池上彰のこだわり③>
収録前に池上さん自ら、解説に使うイラストのチェックを行なっています。
イスラム圏の方の衣装の違いなど、幅広い目線で指摘してくださいます。

<質問コーナー>
― フェイクニュースや間違った情報を流さないように気を付けていることはありますか?

丹羽:
ニュースで使用した映像を素材として使用するので、フェイクニュースということ
は無いのですが、逆があって。。。
番組素材を使ったフェイクニュースがネット上に出てまして。
そちらを気にしています。
例えば、共産主義の人々は、社会主義をパラダイスと考えています。という内容を
説明するのに「共産主義=パラダイス」というテロップを表記すると、そこだけ切
り取られて、「池上さんは、共産主義をパラダイスだと思っているよ」というよう
な番組の意図と違った使われ方をすることもありますし、
イラストや写真をコラージュされて、吹き出しテロップの文言が変えられて、
言っていないことが表記されていたり。
悪質な広告に勝手に使われたりするので、そちらのほうも気をつけています。