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#914
2024年5月19日

立川志の輔さんとテレビ 後編

【司会】山口豊(テレビ朝日アナウンサー)
    八木麻紗子(テレビ朝日アナウンサー)
【ナレーション】田中萌(テレビ朝日アナウンサー)
【ゲスト】立川 志の輔(落語家)
【VTR出演】三宅裕司(喜劇役者)
      春風亭昇太(落語家)
芸能生活42年、今年70歳・古希を迎えた、
落語家・立川志の輔さんにお話を伺いました。(後編)

<プロフィール>
立川志の輔さん(落語家)
1954年 富山県生まれ
1976年 明治大学卒業
1983年 立川談志門下入門
1990年 立川流真打ち昇進

<テレビ番組の司会>
― 志の輔さんはNHK「ためして合点(ガッテン)」「ためしてガッテン」
「ガッテン!」と27年も続いた番組の司会を務めていました。
司会者として番組に出演する際、心掛けていたことはありますか?


司会者だと思っていたら27年もたぶんやれてませんし、
僕はたぶん司会者だとも全く思っていませんし。
どちらかというと半分スタッフのつもりでした。
それこそ昔は、たぶん聞くことも決まっていて、
お答えになることも決まっていてという時代が
半世紀くらい前からずっとあったんでしょう。
だけど、それはとてもできない。
じゃあどうしたらいいのかといったら、とりあえず台本をやめましょう。
進行台本はもうやめましょう。
私が勝手に進めている中にぽんぽんと
本日伝えなきゃならない大事なことはアナウンサーに伝えてもらって、
そのかわり、たぶん楽しくないと絶対に観てもらえないから、
楽しいとか、スタジオが笑うとか。
お客さんを入れるってことがNHKになかったんです。その当時。
お客さんをスタジオに入れてもらったんですよ、30人くらい。
お客さんを入れたライブにしたんです。
ライブなんだから僕だって間違えますし、
出演される学者さんとか、そういう方々も嬉々として喋ってくれるんですよ。
「間違ってもみんな後で編集しますから」ということで、
リラックスした学者の先生たちが、
本来だったら絶対言わないだろうなというようなことを言ってくれた時が、
僕は一番うれしい瞬間。
本当に楽屋というか、喫茶店でこの人喋っているんじゃないか?
というような言葉が出たときに、
ああ、こういう作り方をしていて良かったなと、思う瞬間があって、
それをスタッフも一緒になって協力して作ってくれて、
それがやっぱり良かったですよね。
楽しかったですよ、本当に。
― 三宅裕司さんが分析する立川志の輔さんの司会

三宅裕司(明治大学落語研究会の先輩)

僕の場合は、劇団をやっていて、コントをやりたくて
テレビ界に入って、そうしたら演じるコントが
テレビでやれる時代じゃなくなったんですよ。
「じゃあ司会でもちょっとやってよ」と言われて、
そしたら司会がちょっとできちゃったんですね。
そのうちに司会業に燃えて、
もうどんどん劇団が疎かになっちゃったんですけどね。
志の輔の場合は、そういうことはしなかったんですよ。
司会がきちっとできて、
おそらく相当準備をして、きちっとやるという癖がついていますから、
そういう司会ぶりでした。
もっとほかの仕事を受けようと思えば、
変な話、金儲けができたと思うんですけどw、
恐らくそれはやらずにね。
出演番組は1つにして、落語を大事にしていたというのをすごく感じました。
司会自体も本当にきちっと準備して
きちっとやっているなっていうのを感じました。
これ今思いついたアドリブみたいに言っているけど、
もしかしたらきちっと用意していたのかなとか。
でも「はい!テレビ朝日です」のスタジオで「全部アドリブですよ」って
言うかもしれませんけどね。
嘘ですよ、それはw



― 三宅さんのコメントを観ての感想

だから!
今のを先に観せてもらえればw
わざとそうやって私に喋らせた後にVTR。。。
この構成が、たまりませんなぁw

三宅さんの司会ぶりを番組でいろいろ観せてもらって、
本当にリラックスした普段の姿というか、
普段の三宅裕司という姿で、
緊張感をこっちへ持ってこないで司会をやってらっしゃるのを観ていて、
それがすごく役に立ちました。
三宅さんは、自然体でやれちゃう人なんですよね。

― 2008年放送の「旅の香り 四季の名宿めぐり」を観ての感想
 同郷の野際陽子さんとの出演でした。


わぁ。。。
野際さんと丸一日、本当に楽しかったですねぇ。
優しい方ですし。
いいもの観せていただきました。

<旅仲間・春風亭昇太>
― プライベートでは、春風亭昇太さんと何度も旅行に出かけられていると。
 きっかけは何だったんですか?


たまたま僕が上海に初めて行こうと思った時に、
上海蟹を食べたいと思って友達と計画していて、
「一緒に行きますか?」って電話をしたら
「行くよ!」って簡単に言ってくれて、「えっ!?」て思ったら、
もう、一緒に上海に行って。
それがきっかけでキューバ、ラスベガス、ベトナム、
カンボジア、バリ島…いろんなところへ行きました。
ですから、あの人の婚期が遅れたのは私のせいなんじゃないかな。

<春風亭昇太が語る旅の思い出>
春風亭昇太

何のためにその国に行っているのかが、
ちょっとよく分からない行動が多いんです、あの人。
カンボジアに行った時、
カンボジアだったら、カンボジアの料理を食べればいいじゃないですか。
カンボジアに行ってるんだから。
カンボジアの料理っていうのは、こういうものだっていうのをね、
味わえばいいでしょう。
だけど、志の輔さんはいっつも中華料理に行くんです。
「なんで?カンボジア料理食べようよ」
「いや、カンボジアの中華料理がどういうものか食べたいんだよ」
とか言って、で、中国に行った時に、中華料理食べるんですよ。
ただ、好きなだけじゃないか!って。



― 旅の思い出は、それぞれの落語会で披露することもあるそうですが…

春風亭昇太

落語の前にマクラっていう導入部分のお話があるんです。
そこで2人ともよく旅の話をしていましたね。
志の輔さんは志の輔さんで「このあいだ昇ちゃんと行ったんだけど」って
言って自分の会でしゃべるんです。
僕は僕で「このあいだ志の輔さんと海外に行ったんだよ」という話をするんです。
で、2人の落語会に両方行っているお客さんは、
「2人の言っていることが全然違う」ってw



― 春風亭昇太さんのVTRを観て…

一緒に行ってすごく助かるのは、
自分1人で、あるいは違うメンバーと行っていたら、
たぶんこんなにこの国のことや、この場所のことなど
これほど充実したものにならなかったかもしれないところを
本当に充実させてくれる人なんです。
見る角度がやっぱり全然違って、
私は、かなり食べ物とか土産物とか、下世話なものを見たがるんですけど、
あの人はホームビデオで自撮りをするんですよ。
人に頼まないでずっと撮影するんで、
それを帰ってきてから観ると、うまいこと撮るなとか、
この写真よく撮る暇があったねっていうぐらい、
本当にちゃんとした旅行をしているんですよ。
見る角度が全然違うから、たぶん私の落語のマクラで聞いた人は
くだらない旅だなと思ったかもしれないけど。
昇太さんの落語会で聞いた人はきっと
「ああ、いい旅をしてきたんだね」って思われている。



<70歳を迎えて>
私の師匠、談志が70歳を迎えた時の高座を脇で観ながら、
私と師匠が20歳の差があるものですから、
70歳になって落語をこんな師匠みたいにできるのかなと思っていたのが、
ついこのあいだっていう感じの古希ですね。



<三宅裕司さんと春風亭昇太さんからメッセージ>
三宅裕司

70周年の新橋演舞場では大変お世話になりました。
本当にやりにくかったですw
我々の年齢でこれから考えるのは健康だけです。
健康だけ考えていれば何とかなります。
これからのお互いの合言葉は「健康のためなら命もいらない」
これでいきたいと思います。頑張りましょう。



春風亭昇太

あなたのお友達の春風亭翔太です。
もう、長生きしてください。よろしくお願いします。
あと、気づいていると思うんですけど、
インタビューで結構褒めているんで、おごってください。



本当にありがとうございます。
お2方にご迷惑をおかけしました。
どうして先にVTRを観せてくれないんですかねぇw
確かにこのコメントを先に観ていたら、ただただお礼しかないですけどw

<続けている健康法>
骨は時々刺激してやらなきゃいけないんですけど、
骨ってなかなか自分で刺激できないじゃないですか。
踵を上げてぽんと下ろす。
これだけでピ~ッと踵から電流みたいなものが上がってくる。
これを骨が感知して、骨が目覚めるんですよ。
高座に上がる前に、ものの2分ぐらいですけど、
こうやっているだけでずいぶん体が起きますし。
骨がおおっ!ってなって。。。
これからまた2時間くらい正座するんですから。
「踵落とし」ですね。
これは「ガッテン」の放送で紹介したんです。
27年放送していてこれだけですかねw

<これからテレビでやってみたいこと>
今までテレビで落語そのものをやるということは
あまりしてこなかったんですけれど。
やっぱり落語は生のものだろうとか、
お客さんと直にコールアンドレスポンスしないと、とかっていう
何か若い頃から頑なにやってきたのを、少しこの歳になって緩めてみたら、
ひょっとすると意外や意外、
楽にやれたねっていうようなことの気づきが
この70代に起こるのかもしれないなと
思ったら、
画面でたくさんの落語をやれるような、
そういう年代のスタートになったらいいな、とも思いますので、
まあ見かけたらよろしくお願いします。



<テレビとは>
空気ですね。ついてないと寂しいし。
テレビの方からは別に私がお願いした内容ばかりが
ずっと来るわけじゃないですから、
それがいわゆる他のジャンルのものと違って
色々なものが送られてくる。
その中でふと画面を観て教えてもらったり、
知識として楽しませてもらったり。
そこにずっと空気としていてもらって。
すごく何か、むかし家族と言っていたものから、
今この歳になるまでずっと一緒に付き合ってきて、
とうとう空気に、うちの中ではなっていますね。