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#906
2024年3月17日
放送開始から60周年「題名のない音楽会」音声の仕事(前編)
【司会】山口豊(テレビ朝日アナウンサー)
八木麻紗子(テレビ朝日アナウンサー)
【ナレーション】田中萌(テレビ朝日アナウンサー)
【出演】鬼久保美帆(「題名のない音楽会」プロデューサー)
柳原健司(「題名のない音楽会」音声担当)
八木麻紗子(テレビ朝日アナウンサー)
【ナレーション】田中萌(テレビ朝日アナウンサー)
【出演】鬼久保美帆(「題名のない音楽会」プロデューサー)
柳原健司(「題名のない音楽会」音声担当)
毎週土曜朝10時から放送中。
今年60周年を迎えるクラシック音楽番組、
「題名のない音楽会」を陰で支える音声の仕事に注目します。
今年60周年を迎えるクラシック音楽番組、
「題名のない音楽会」を陰で支える音声の仕事に注目します。
<音声の仕事とは>
(柳原)
クラシック音楽がメインなので、オーケストラの録音を主体に、
スタジオトークも収録、収録後の音の調整など、最後の仕上げまで担当しています。
(鬼久保)
音楽番組は音が要なので、技術チーム全体のチーフも柳原さんにお願いしています。
柳原さんなくして「題名のない音楽会」は成立しないという、重要な役割をになっていただいています。
クラシック音楽がメインなので、オーケストラの録音を主体に、
スタジオトークも収録、収録後の音の調整など、最後の仕上げまで担当しています。
(鬼久保)
音楽番組は音が要なので、技術チーム全体のチーフも柳原さんにお願いしています。
柳原さんなくして「題名のない音楽会」は成立しないという、重要な役割をになっていただいています。

●柳原さんの仕事に密着
「題名のない音楽会」スタジオ収録時の柳原さんに密着しました。
「題名のない音楽会」スタジオ収録時の柳原さんに密着しました。
<音声担当チームの打ち合わせ>
音声担当の仕事は、本番収録の6時間前からスタート。
演奏家の構成やマイクの本数、種類や位置が書き込まれた図面を見ながら全員で最終の確認をします。
―今日の収録で難しいことは?
(柳原)
セッティング的には今日は簡単かもしれないです。
マイクも10本ほどで、いつもの5分の1ほどの数。
スタジオは意外とうるさいので、マイクの数は少なければ少ないほど、
音声の収録ではシビアなところが出てきます。
演奏家の構成やマイクの本数、種類や位置が書き込まれた図面を見ながら全員で最終の確認をします。
―今日の収録で難しいことは?
(柳原)
セッティング的には今日は簡単かもしれないです。
マイクも10本ほどで、いつもの5分の1ほどの数。
スタジオは意外とうるさいので、マイクの数は少なければ少ないほど、
音声の収録ではシビアなところが出てきます。

<使用するマイクの数>
コンサートホールの場合は、設置するマイクの数が30を超える時も。
毎回、演奏家の編成が異なるので、毎回違うセッティングになるんだそう。
毎回、演奏家の編成が異なるので、毎回違うセッティングになるんだそう。
<マイクのセッティング>
打ち合わせ後は、スタジオでセッティング。
スタンドにマイクを取り付けます。
―バラエティ番組で使うようなマイクと違いますね?
(音声担当のスタッフ)
楽器の音を収録する用のマイクです。
トークを録るピンマイクとは全然違います。
床に置くスタンドマイクの準備ができたら、
ブームマイクのセッティング。
―上から録るマイクと下に置くマイクは違う?
(音声スタッフ)
楽器から離れた位置で収音するので、観客寄りの音になります。
吊り下げるマイクは「空間の響き」を録って、音に立体感を出します。
マイクの準備が終わったら、ケーブルに接続。
白いセットが特徴的な「題名のない音楽会」。
なるべく目立たないように白いケーブルを使用しています。
副調整室では、柳原さんが回線チェック。
マイクが正しく繋がれているか確認します。
そして、スタジオへ移動し、マイク位置を最終確認。
マイクによって影が出ないように、照明担当と確認します。
(柳原)
マイクの距離や角度は重要です。
近すぎても響きが録れない、遠すぎると周りのノイズがうるさくなる。
下に置くマイクと吊り下げマイクのバランスを考えます。
雑音があるスタジオのノイズレベルをどう落とせるか?
後処理もしますが、そういうことを気にしながら録音しています。
スタンドにマイクを取り付けます。
―バラエティ番組で使うようなマイクと違いますね?
(音声担当のスタッフ)
楽器の音を収録する用のマイクです。
トークを録るピンマイクとは全然違います。
床に置くスタンドマイクの準備ができたら、
ブームマイクのセッティング。
―上から録るマイクと下に置くマイクは違う?
(音声スタッフ)
楽器から離れた位置で収音するので、観客寄りの音になります。
吊り下げるマイクは「空間の響き」を録って、音に立体感を出します。
マイクの準備が終わったら、ケーブルに接続。
白いセットが特徴的な「題名のない音楽会」。
なるべく目立たないように白いケーブルを使用しています。
副調整室では、柳原さんが回線チェック。
マイクが正しく繋がれているか確認します。
そして、スタジオへ移動し、マイク位置を最終確認。
マイクによって影が出ないように、照明担当と確認します。
(柳原)
マイクの距離や角度は重要です。
近すぎても響きが録れない、遠すぎると周りのノイズがうるさくなる。
下に置くマイクと吊り下げマイクのバランスを考えます。
雑音があるスタジオのノイズレベルをどう落とせるか?
後処理もしますが、そういうことを気にしながら録音しています。






<リハーサル>
「題名のない音楽会」はリハーサルの音声も収録します。
出演者には、本番同様の演奏をお願いしています。
リハーサル中、柳原さんには気になることが。
「何かカシャカシャという音が聞こえる」
照明に付けた、光をやわらかくするフィルムが
空調の風に揺られているのが原因でした。
(柳原)
「台本をめくる音も録れてしまいます。空調を止めることもあるのですが、
スタジオの温度が変わると楽器のチューニングに影響が出るので、温度は一定の方がいいんです。
空調を止めずに照明担当にフィルムを固定してもらうことで解決しました。」
音に対しての協力は、照明担当だけでなく、カメラ担当も。
ケーブルに緩衝材を巻き、移動する際のケーブル音が
できるだけ出ないようにしています。
出演者には、本番同様の演奏をお願いしています。
リハーサル中、柳原さんには気になることが。
「何かカシャカシャという音が聞こえる」
照明に付けた、光をやわらかくするフィルムが
空調の風に揺られているのが原因でした。
(柳原)
「台本をめくる音も録れてしまいます。空調を止めることもあるのですが、
スタジオの温度が変わると楽器のチューニングに影響が出るので、温度は一定の方がいいんです。
空調を止めずに照明担当にフィルムを固定してもらうことで解決しました。」
音に対しての協力は、照明担当だけでなく、カメラ担当も。
ケーブルに緩衝材を巻き、移動する際のケーブル音が
できるだけ出ないようにしています。
<本番収録>
収録1本目はピアノの独奏。
柳原さんは最高の音を取ることだけに集中。
鬼久保プロデューサーは、演奏を聴きながら気になる部分を楽譜にチェックします。
収録2本目は弦楽四重奏とソプラノ。
編成が異なるため、セットチェンジ。
マイクの数も10本に増えます。
―楽器が多い時と少ない時の違いは?
(柳原)
多い時は変な話、若干ごまかしが効くんですが、
少ない時は、1つ1つの楽器の個性がわかりやすいので、
奏者の方も緊張すると思います。
我々がマイクの立て方や距離を間違うと、演奏のニュアンスが変わってしまうので、なるべくマイクの距離を揃えるようにしています。
柳原さんは最高の音を取ることだけに集中。
鬼久保プロデューサーは、演奏を聴きながら気になる部分を楽譜にチェックします。
収録2本目は弦楽四重奏とソプラノ。
編成が異なるため、セットチェンジ。
マイクの数も10本に増えます。
―楽器が多い時と少ない時の違いは?
(柳原)
多い時は変な話、若干ごまかしが効くんですが、
少ない時は、1つ1つの楽器の個性がわかりやすいので、
奏者の方も緊張すると思います。
我々がマイクの立て方や距離を間違うと、演奏のニュアンスが変わってしまうので、なるべくマイクの距離を揃えるようにしています。



<満足する音にするための録り直し>
演奏終了後、演奏家から
「もう一度演奏してもいいですか?」と録り直しのお願いが。
音が第一の「題名のない音楽会」は、演奏家が納得できるように録り直しすることはもちろん、鬼久保プロデューサーが気になったところも部分的に録り直しています。
スタジオ収録が終了したのは、午後8時過ぎ。
柳原さんの長い1日が終わりました。
(柳原)
音の収録は繊細。
気になったノイズは、収録後に調整します。
最終的にトラックダウンを行うので、
スタジオ収録では、バランスを聴きながら
リヴァーブ(残響)の混ざり具合が良いかを確認して
よければそのまま録ってしまって
また後日、トラックダウンで処理をします。
※【トラックダウン】
多重録音されたものを混ぜ合わせ、
音質などを調整し仕上げていく行程
「もう一度演奏してもいいですか?」と録り直しのお願いが。
音が第一の「題名のない音楽会」は、演奏家が納得できるように録り直しすることはもちろん、鬼久保プロデューサーが気になったところも部分的に録り直しています。
スタジオ収録が終了したのは、午後8時過ぎ。
柳原さんの長い1日が終わりました。
(柳原)
音の収録は繊細。
気になったノイズは、収録後に調整します。
最終的にトラックダウンを行うので、
スタジオ収録では、バランスを聴きながら
リヴァーブ(残響)の混ざり具合が良いかを確認して
よければそのまま録ってしまって
また後日、トラックダウンで処理をします。
※【トラックダウン】
多重録音されたものを混ぜ合わせ、
音質などを調整し仕上げていく行程

<クラシック音楽番組の音>
(柳原)
クラシックの場合は、演奏家がバランスをとってくれることが多くて、
マイクを立てすぎると嘘っぽく聞こえたりします。
なるべく遠くにある1本のマイクで全体を録れるようにしたいんですけど、
「テレビ用の音」にしたいのでマイクを増やしています。
演奏の流れでフューチャーしたいところのレベルを上げられるように、
演奏家の人数分くらいのマイクを立てています。
クラシックの音は空気感が強くて、そのまま放送すると視聴者は音を小さく感じてしまいます。
少し音を前に出したいんです。
クラシックの場合は、演奏家がバランスをとってくれることが多くて、
マイクを立てすぎると嘘っぽく聞こえたりします。
なるべく遠くにある1本のマイクで全体を録れるようにしたいんですけど、
「テレビ用の音」にしたいのでマイクを増やしています。
演奏の流れでフューチャーしたいところのレベルを上げられるように、
演奏家の人数分くらいのマイクを立てています。
クラシックの音は空気感が強くて、そのまま放送すると視聴者は音を小さく感じてしまいます。
少し音を前に出したいんです。


<ベストな音声収録>
(柳原)
何かをしたという感じが見えない方がかっこいいと思っています。
なるべく自然になるように。
だけど、不自然にちょっと実は前に出している、とか、
そういう音声収録がベストだと思います。
自然風に聴かせる。自然すぎちゃうと多分、「ん?」ってなっちゃうと思うんですけど、少し不自然が入ると自然に聴こえる、みたいな。
―鬼久保さんは、柳原さんの収録する音をどう感じていますか?
(鬼久保)
テレビで放送するクラシックの最上級の音を作ってくれる。
あまり真面目に「クラシックはこう録るべき」という方式でやってしまうと、
他の番組をザッピングして観た時に、どうしても聴き劣りしてしまう。
そこをちょっと「あざとい音の作り方」といいますか、
メインのメロディーがきっちり前面に来るようにコントロールするという、
そのあたりのさじ加減が絶妙にうまいと思っています。
何かをしたという感じが見えない方がかっこいいと思っています。
なるべく自然になるように。
だけど、不自然にちょっと実は前に出している、とか、
そういう音声収録がベストだと思います。
自然風に聴かせる。自然すぎちゃうと多分、「ん?」ってなっちゃうと思うんですけど、少し不自然が入ると自然に聴こえる、みたいな。
―鬼久保さんは、柳原さんの収録する音をどう感じていますか?
(鬼久保)
テレビで放送するクラシックの最上級の音を作ってくれる。
あまり真面目に「クラシックはこう録るべき」という方式でやってしまうと、
他の番組をザッピングして観た時に、どうしても聴き劣りしてしまう。
そこをちょっと「あざとい音の作り方」といいますか、
メインのメロディーがきっちり前面に来るようにコントロールするという、
そのあたりのさじ加減が絶妙にうまいと思っています。
<スタジオとホールの違い>
(柳原)
テレビのスタジオは、いろんな番組が使えるように「音が響かない空間の作り」になっています。
クラシックのホールは「響き」をホールの中で作っているので、
その響きを利用して収録することが一番重要になってくるんです。
マイクで単体の音を狙っているというより、響きも一緒に録っている。
ホール全体の音を録ることを意識しています。
テレビのスタジオは、いろんな番組が使えるように「音が響かない空間の作り」になっています。
クラシックのホールは「響き」をホールの中で作っているので、
その響きを利用して収録することが一番重要になってくるんです。
マイクで単体の音を狙っているというより、響きも一緒に録っている。
ホール全体の音を録ることを意識しています。

<難しかった音声収録>
(柳原)
難しいといえば、全部難しいですけど、
邦楽の楽器を、オーケストラのようにした収録がありました。
琴が10、尺八が10とか。
音声収録の正解がどこにもないんです。
そういう意味では難しかったです。
(鬼久保)
邦楽器をいくつも並べることは元々、伝統としてないんです。
ひと言で日本楽器といっても、
その楽器が存在した時代も文化も違うと、一緒に交わることがないんです。
津軽三味線と琴が一緒に演奏する文化は本来ないのです。
それらを全部一緒に豪華メンバーを集めて、新しい曲として作ったので、
どこにも正解がないんです。
それをアレンジャーの先生と柳原さんが、
曲を作っていくような作業を行なっていました。
―大変でしょうが、やりがいがすごくあるんじゃないですか?
(柳原)
やりがいはすごくあります。
毎回、挑戦でしかないので。
難しいといえば、全部難しいですけど、
邦楽の楽器を、オーケストラのようにした収録がありました。
琴が10、尺八が10とか。
音声収録の正解がどこにもないんです。
そういう意味では難しかったです。
(鬼久保)
邦楽器をいくつも並べることは元々、伝統としてないんです。
ひと言で日本楽器といっても、
その楽器が存在した時代も文化も違うと、一緒に交わることがないんです。
津軽三味線と琴が一緒に演奏する文化は本来ないのです。
それらを全部一緒に豪華メンバーを集めて、新しい曲として作ったので、
どこにも正解がないんです。
それをアレンジャーの先生と柳原さんが、
曲を作っていくような作業を行なっていました。
―大変でしょうが、やりがいがすごくあるんじゃないですか?
(柳原)
やりがいはすごくあります。
毎回、挑戦でしかないので。
