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#893
2023年12月10日
映画「窓ぎわのトットちゃん」後編
【番組司会】山口豊(テレビ朝日アナウンサー)
八木麻紗子(テレビ朝日アナウンサー)
【ナレーター】田中萌(テレビ朝日アナウンサー)
【出演】八鍬新之介(監督・脚本)
【VTR】役所広司・小栗旬・杏・滝沢カレン
八木麻紗子(テレビ朝日アナウンサー)
【ナレーター】田中萌(テレビ朝日アナウンサー)
【出演】八鍬新之介(監督・脚本)
【VTR】役所広司・小栗旬・杏・滝沢カレン
1981年、第二次世界大戦が終わる少し前の激動の時代を背景に、黒柳徹子さんの幼少期を自伝的に描いた「窓ぎわのトットちゃん」。
世界的ベストセラー作品がアニメーションで初の映画化!
12月8日(金)に公開されました。
今回は役所広司さん・小栗旬さん・杏さん・滝沢カレンさんなど豪華声優陣が語る映画への想いと
映画「ドラえもん」を幾度となく手掛けてきた八鍬新之介監督に
引き続き舞台裏などを伺いました。
世界的ベストセラー作品がアニメーションで初の映画化!
12月8日(金)に公開されました。
今回は役所広司さん・小栗旬さん・杏さん・滝沢カレンさんなど豪華声優陣が語る映画への想いと
映画「ドラえもん」を幾度となく手掛けてきた八鍬新之介監督に
引き続き舞台裏などを伺いました。
<豪華な声優陣>
●トットちゃんのパパ 小栗旬
黒柳徹子さんのお父さん(黒柳守綱)のことを事前に調べました。
黒柳さんとお会いしたら「父はその当時、日本で一番のヴァイオリニストでした」と。
監督と相談して芸術家としての雰囲気も出せるように演じました。
●トットちゃんのママ 杏
映像になることで自由が丘の街並みや電車など古き良き日本が
すごく調べられて忠実に再現されているんだろうなと映像を観て思ったので
タイムスリップした気持ちになれるかなと思いました。
●大石先生 滝沢カレン
子供の頃、徹子さんの物語とは知らずに原作を読んだことがあったんです。
31歳になって台本を読んだら涙なく最後のページは読めなかったです。
明るいだけじゃないというのが人生のようで、私にはすごく響きました。
●トモエ学園の校長 小林先生 役所広司
-------役所さんがオファーを受けた理由
声の仕事はあまりやったことがないので躊躇しましたけど
台本を読ましてもらってとても感動して。
こういうお話はたくさんの人に観ていただきたいと思ったので参加させていただきました。
台本を読んだだけでも本当に感動します。
自分たちの子供時代の友達のことを思い出したり、先生のことを思い出したり、家族のことを思い出したり。
ただ自分たちが経験していない戦争のことも描かれています。
その戦争のあらゆる痛みを伝えてくれる物語になっていると思います。
この映画は子供から大人までメッセージが伝わる素晴らしいアニメーションになっていると思います。
ぜひ劇場で観てください。
-------どのようにオファーして実現した?
小栗旬さんは映画「ドラえもん」の初監督のときに
ゲスト声優として一緒にお仕事をしたことがありまして。
その時に声優としての小栗さんの上手さにちょっと驚いてしまいまして、
あまりに完璧でその時の収録は、あっという間に終わってしまったんです。
変な話、何かそれが悔しくて…
もう1歩踏み込んだ作品でぜひご一緒したいなとずっと思っていたので
お願いしました。
小栗さん自身が俳優で芸術に関わっています。
芸術に関わる方は、「戦争中に自分がどう行動するのか」
その辺の葛藤をすごく繊細に演じていただけました。
役所さんは昔からスクリーンやテレビで観ていた方なので、
もう本当に恐れ多いなと思いながら、お手紙でお願いしました。
その手紙を書くだけでも3日かかったんですけれども…
震えながら、とにかく誠実にお手紙を書きました。
小林校長先生は理想の教育者なので、完璧な人なんです。
ただ、あまりに完璧すぎるとリアリティーを失う部分もあるんです。
役所さんは今までいろんな作品で人間の正気も狂気も両方とも演じられてきた方なので、きっと小林先生に血を通わせるお芝居をしていただけるなと思ってオファーさせていただきました。
黒柳徹子さんのお父さん(黒柳守綱)のことを事前に調べました。
黒柳さんとお会いしたら「父はその当時、日本で一番のヴァイオリニストでした」と。
監督と相談して芸術家としての雰囲気も出せるように演じました。
●トットちゃんのママ 杏
映像になることで自由が丘の街並みや電車など古き良き日本が
すごく調べられて忠実に再現されているんだろうなと映像を観て思ったので
タイムスリップした気持ちになれるかなと思いました。
●大石先生 滝沢カレン
子供の頃、徹子さんの物語とは知らずに原作を読んだことがあったんです。
31歳になって台本を読んだら涙なく最後のページは読めなかったです。
明るいだけじゃないというのが人生のようで、私にはすごく響きました。
●トモエ学園の校長 小林先生 役所広司
-------役所さんがオファーを受けた理由
声の仕事はあまりやったことがないので躊躇しましたけど
台本を読ましてもらってとても感動して。
こういうお話はたくさんの人に観ていただきたいと思ったので参加させていただきました。
台本を読んだだけでも本当に感動します。
自分たちの子供時代の友達のことを思い出したり、先生のことを思い出したり、家族のことを思い出したり。
ただ自分たちが経験していない戦争のことも描かれています。
その戦争のあらゆる痛みを伝えてくれる物語になっていると思います。
この映画は子供から大人までメッセージが伝わる素晴らしいアニメーションになっていると思います。
ぜひ劇場で観てください。
-------どのようにオファーして実現した?
小栗旬さんは映画「ドラえもん」の初監督のときに
ゲスト声優として一緒にお仕事をしたことがありまして。
その時に声優としての小栗さんの上手さにちょっと驚いてしまいまして、
あまりに完璧でその時の収録は、あっという間に終わってしまったんです。
変な話、何かそれが悔しくて…
もう1歩踏み込んだ作品でぜひご一緒したいなとずっと思っていたので
お願いしました。
小栗さん自身が俳優で芸術に関わっています。
芸術に関わる方は、「戦争中に自分がどう行動するのか」
その辺の葛藤をすごく繊細に演じていただけました。
役所さんは昔からスクリーンやテレビで観ていた方なので、
もう本当に恐れ多いなと思いながら、お手紙でお願いしました。
その手紙を書くだけでも3日かかったんですけれども…
震えながら、とにかく誠実にお手紙を書きました。
小林校長先生は理想の教育者なので、完璧な人なんです。
ただ、あまりに完璧すぎるとリアリティーを失う部分もあるんです。
役所さんは今までいろんな作品で人間の正気も狂気も両方とも演じられてきた方なので、きっと小林先生に血を通わせるお芝居をしていただけるなと思ってオファーさせていただきました。

<苦労したシーン>
親友の泰明(やすあき)ちゃんの小児麻痺の動きです。
調べるのも苦労しましたし、調べた後に描いて再現するのもすごく難しくて。
それは一つの挑戦だったと思います。
まず図書館に行ってポリオの資料を調べたんです。
不思議と数が残っていなくて、しかも文字なので動きまではわからないんです。
そこで、どうしようかと思った時に、「ポリオの会」という実際にポリオに罹患された方々の団体がありまして、そこに連絡をとって取材に協力していただきました。
最初は失礼なことがあったりとか、断られてしまうかなと、おっかなびっくりお願いしたんですけども、
実際にお会いするとすごく優しい方々で、何より明るいっていうのがすごく驚きました。
その方々の肌にも触れさせていただきましたし、一緒に高尾山にも登りました。
山登りってずっと運動が続くので、どういう形で筋肉が緩んでいるのかとか歩く時に足を引きずらないようにどういうふうに気をつけているのかとか、
すごく見えやすいんですね。
「ポリオの会」の方々から「どうですか?」と誘っていただいたんです。
そういった一つ一つ一つを経験しながら、泰明(やすあき)ちゃんの抱える悩みとか強さみたいなものを理解していったという感じです。
調べるのも苦労しましたし、調べた後に描いて再現するのもすごく難しくて。
それは一つの挑戦だったと思います。
まず図書館に行ってポリオの資料を調べたんです。
不思議と数が残っていなくて、しかも文字なので動きまではわからないんです。
そこで、どうしようかと思った時に、「ポリオの会」という実際にポリオに罹患された方々の団体がありまして、そこに連絡をとって取材に協力していただきました。
最初は失礼なことがあったりとか、断られてしまうかなと、おっかなびっくりお願いしたんですけども、
実際にお会いするとすごく優しい方々で、何より明るいっていうのがすごく驚きました。
その方々の肌にも触れさせていただきましたし、一緒に高尾山にも登りました。
山登りってずっと運動が続くので、どういう形で筋肉が緩んでいるのかとか歩く時に足を引きずらないようにどういうふうに気をつけているのかとか、
すごく見えやすいんですね。
「ポリオの会」の方々から「どうですか?」と誘っていただいたんです。
そういった一つ一つ一つを経験しながら、泰明(やすあき)ちゃんの抱える悩みとか強さみたいなものを理解していったという感じです。
<脚本で苦労したこと>
原作の「窓ぎわのトットちゃん」のどのエピソードを2時間の映画の中に組み込むかというところをまず考えました。
それぞれが独立したエピソードだったりもするので、多少順番を入れ替えたりしながら結びつくようにしました。
シーンによっては1年単位で昭和17年から18年にずらしたりとか、
例えば食糧がどのくらい不足していたかとか、そういったところを後から修正しました。
トットちゃんの目線から外れるかどうかということが結構大きくて、
最初は開戦の真珠湾のことをシーンとして盛り込んでいたんですけども、あくまで15歳の子供の目線に限定した方が「気付いたら戦争が近寄ってきている」という怖さが出るのかなと思ってスタッフの意見も聞きながらシーンを削除したり調整していきました。
文字(台本)の段階だと全部を関係者と共有できるわけではないので
「このシーンはどういう意味があるの?」とか、スタッフの間でも疑問に思う声もあったりして。
「映像になった時には必ずきちんと機能するシーンだから信じてください」とか言いながらみんなで進めていった感じです。
脚本があってその後、絵コンテといって設計図のようなものを書くんですけど、そこからさらに絵の情報をそぎ落として音に特化したものがアフレコ台本になります。
これは声優さんや音響監督、音響効果さんが見るものなんです。
今回のアフレコ台本は2時間の作品としては薄い方です。
セリフが今回はすごく少ない作品なんです。
アフレコ台本には、芝居をしてもらいながら丸つけたりしています。
芝居が終わった後に「カットいくつのこのセリフのニュアンスをもう少しこうしてください」とか、あるいはここの絵が変だったなと思ったらちょっと直さなきゃいけないなとかそういったことをメモしています。
それぞれが独立したエピソードだったりもするので、多少順番を入れ替えたりしながら結びつくようにしました。
シーンによっては1年単位で昭和17年から18年にずらしたりとか、
例えば食糧がどのくらい不足していたかとか、そういったところを後から修正しました。
トットちゃんの目線から外れるかどうかということが結構大きくて、
最初は開戦の真珠湾のことをシーンとして盛り込んでいたんですけども、あくまで15歳の子供の目線に限定した方が「気付いたら戦争が近寄ってきている」という怖さが出るのかなと思ってスタッフの意見も聞きながらシーンを削除したり調整していきました。
文字(台本)の段階だと全部を関係者と共有できるわけではないので
「このシーンはどういう意味があるの?」とか、スタッフの間でも疑問に思う声もあったりして。
「映像になった時には必ずきちんと機能するシーンだから信じてください」とか言いながらみんなで進めていった感じです。
脚本があってその後、絵コンテといって設計図のようなものを書くんですけど、そこからさらに絵の情報をそぎ落として音に特化したものがアフレコ台本になります。
これは声優さんや音響監督、音響効果さんが見るものなんです。
今回のアフレコ台本は2時間の作品としては薄い方です。
セリフが今回はすごく少ない作品なんです。
アフレコ台本には、芝居をしてもらいながら丸つけたりしています。
芝居が終わった後に「カットいくつのこのセリフのニュアンスをもう少しこうしてください」とか、あるいはここの絵が変だったなと思ったらちょっと直さなきゃいけないなとかそういったことをメモしています。

<伝えたいこと>
当たり前の日常が実はすごく尊いものでなおかつ美しいもので。
ウクライナとかパレスチナのこととかが今あるんですけれど、
日本もまだ平和ですけども、平和なうちにその当たり前の日常の大切さを
気づくきっかけになっていただけたらなと思いました
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
●八鍬監督はこれまで映画「ドラえもん」を3作手掛け
「窓ぎわのトットちゃん」は企画・脚本・絵コンテも担当
そんな八鍬監督はどのようなきっかけで
アニメの世界にすすむ事になったのでしょうか?
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
【アニメーションの世界に進むきっかけ】
自分の父親がすごく映画が好きな人だったので、その影響でたくさん映画を観てきました。
実写の世界にも少し行ったんですけれども、他の映像の仕事もないかなと思ってアニメーションの世界に入りました。
ただ入った時は、アニメーションのシステム自体を全く理解していなくて。
今いるシンエイ動画という会社が、劇場版「ドラえもん」とか、劇場版「クレヨンしんちゃん」とか毎年2本も映画を作っているというちょっと珍しい会社なんですけれど、
この会社であればずっと映画を作っていけるんじゃないかなと思って入ったんです。
-------テレビは小さい頃から観ていた?
もちろん、テレビは観ていました。
役所さんが出演されていた「三匹が斬る!」も観ていましたし、アニメーションも「ドラえもん」や「ドラゴンボール」も普通の子どもと同じようにたくさん観ていました。
ウクライナとかパレスチナのこととかが今あるんですけれど、
日本もまだ平和ですけども、平和なうちにその当たり前の日常の大切さを
気づくきっかけになっていただけたらなと思いました
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●八鍬監督はこれまで映画「ドラえもん」を3作手掛け
「窓ぎわのトットちゃん」は企画・脚本・絵コンテも担当
そんな八鍬監督はどのようなきっかけで
アニメの世界にすすむ事になったのでしょうか?
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【アニメーションの世界に進むきっかけ】
自分の父親がすごく映画が好きな人だったので、その影響でたくさん映画を観てきました。
実写の世界にも少し行ったんですけれども、他の映像の仕事もないかなと思ってアニメーションの世界に入りました。
ただ入った時は、アニメーションのシステム自体を全く理解していなくて。
今いるシンエイ動画という会社が、劇場版「ドラえもん」とか、劇場版「クレヨンしんちゃん」とか毎年2本も映画を作っているというちょっと珍しい会社なんですけれど、
この会社であればずっと映画を作っていけるんじゃないかなと思って入ったんです。
-------テレビは小さい頃から観ていた?
もちろん、テレビは観ていました。
役所さんが出演されていた「三匹が斬る!」も観ていましたし、アニメーションも「ドラえもん」や「ドラゴンボール」も普通の子どもと同じようにたくさん観ていました。

<アニメーション テレビと映画の違い>
テレビアニメの監督は、毎週放送するものを作っていくので、複数のスタッフが絵コンテを描いたものをチェックするという全体を管理する立場に近いんですね。
それはそれでそれぞれのディレクターの色が出て、いろんな人が見るテレビとしてはとても正しいやり方だと思ってます。
一方で映画は、製作時間がテレビよりはあるので、今回のように企画から脚本、絵コンテまで一人で担うことができたりするんです。
自分は一つのことに集中する方がやりやすいので、映画の方が向いているなという感じはあります。
それはそれでそれぞれのディレクターの色が出て、いろんな人が見るテレビとしてはとても正しいやり方だと思ってます。
一方で映画は、製作時間がテレビよりはあるので、今回のように企画から脚本、絵コンテまで一人で担うことができたりするんです。
自分は一つのことに集中する方がやりやすいので、映画の方が向いているなという感じはあります。

<映画とは>
人間を描く詩である 映画監督 八鍬新之介