2022年9月　テレビ朝日新人シナリオ大賞　大賞受賞。
史上最年少、22歳で受賞した彼女の才能は、
10年に1人の逸材と審査員から絶賛されました。
受賞作「拝啓、奇妙なお隣さま」は、2023年7月15日に放送。
初の連続ドラマ「ハレーションラブ」が土曜夜11時30分から放送中。

「脚本家として生きていこう」と決めた半年後のコンテストでした。
背中を押していただいたという嬉しい気持ちと、見つけていただいたという感謝の気持ちでいっぱいでした。
どこかに就職して日々の仕事をこなしながら自分が本当に書きたいものを全力で書けるのか？と考えた時に、それでは届ける人にも失礼になってしまう。
ちゃんと自分の書きたいものを書いて伝えたいという思いから、大学4年生に上がるときに就職はしないで、脚本家としての決意表明でもないですけど、それで応募したので、大賞をいただけて嬉しい気持ちでいっぱいでした。

「生きる」ってどういうことだろうというテーマを根底に課していました。
私が小学生の頃に、病院にいた曽祖母が家に帰りたくて点滴を外してしまい、ベッドに縛りつけられたことがあったんです。
家に帰りたいと言っている本人を縛り付けている状況が、生きていると言えるのだろうか？という話を家族がたくさんしていました。
本人の選択と家族の決断は生死に関わることなので大切にはなるけれども、簡単に決められることではないと私自身感じました。
家族は、本人の意思を尊重して家に連れて帰ってきたのですが、私にもその決断が出来るのだろうか？と考えながら作品に落とし込みました。

キャスト、スタッフ、プロの皆さんに私の脚本に息を吹き込んでいただいて、私の文字でしかなかった脚本が活きた映像になって、視聴者に届くんだなと凄く実感しました。
出来上がった映像の嬉しさと一緒にそういう気持ちもありました。
脚本を書く時に外面の声とか顔をイメージしないで、内面のイメージを膨らませて書くタイプなので、キャスティングについては、この人は違うなとかこの人はピッタリだなという認識よりは、この方々にやっていただけるんだという嬉しさが大きかったです。
実際に演じてくださっているのを拝見したときに、作ってあるキャラクターに新たな魅力を加えて観せてくださったなと凄く嬉しくて、皆様に演じていただけて光栄でした。

この選考に携わって7～8年になるのですが、選考委員の3先生が読まれてすぐ、彼女が書いた文体と台詞、寝たきり状態の意識下で会話を繰り広げるという設定がすごく新しくて、なかなかプロの脚本家には書けないことだとおっしゃっていて、その才能にすぐにのったというか満場一致で大賞に決まりました。
選考委員の井上由美子先生は、「10年に1人の才能だからこれはテレビ朝日としてちゃんと育てるとかその先のことを考えたほうがいい」とおっしゃていました。
圧倒的な才能を久しぶりに目にしたという感じでした。
応募してきたシナリオは2時間のサイズだったのでドラマサイズの1時間に直すという作業があったんですけど、僕らと打ち合わせをしながら僕らの意図を汲んで本当にうまく直されてきたんです。
脚本を直すという作業は、脚本家にとって一番大変なことなんですね。
こちらの意図を汲んで的確に直された、その能力も含めて連続ドラマに挑戦してみるべきだと感じました。
対応力とか修正力ってプロの脚本家として一番今後求められていくところなので、そこも素晴らしく対応されていたのでこれは本当にすごい才能を見つけたなという感じでした。

新人の私に求められるものは、まさに対応力と修正力だと思っていて、そこをみて今回の連続ドラマのお仕事をくださったというお話は、すごく嬉しかったです。

1話30分の中でしっかり緩急をつけること。
第1話から最終話までの流れをちゃんと作る。
をたくさん考えたんですが、苦労とか大変とも違って、時間とか労力だけ見たら大変なのかもしれませんが、とにかく楽しくて、執筆を通してすごく貴重な経験をさせていただきましたし、書くことの楽しさを改めて確認できました。
これから街や人が隠してきた真実が見えてくると思うので、見落とさずにいっぱい拾って欲しいです。

フードコートとかで書くのが好きなんです。
いろんな喧騒を背後に聞きながら自分の世界に入っていくほうが、スッと入れるので、喧騒の中で書くことが多いです。
ヒューマンドラマというところを大事にもしているし、向きあいやすい部分だとは思ってたんですけど、リアルかどうかというところもすごく関わっていて、
リアルさが自分の耳で感じて肌で感じてというのは、喧騒の中にいるほうが、人が立てた音、人の話し声を聞きながら書くことで、よりリアルに書くことができるのかなぁと。

キャラクターは、そのキャラクターだけであるように。
作者としての私が見えないように。キャラクター自身がしっかり1人の人間に見えるように。ということはいつも心がけています。
私が10人のキャラクターを作った時に、それぞれに少しずつ私を入れてしまうと客観的に観たときに、その根底に同じ人間がいるというのが見えてしまうだろうなと思っていて、10人いたら考え方の違う10人がいたほうがドラマとしても面白い部分になると思います。
討論させたときにすぐに結論が出るのではなく、いっぱい討論できたほうが面白いだろうなと思うので、1つ1つのキャラクターにおいて、自分と切り離して、その人を作り上げたいなという思いがあります。

脚本家は、一人の力では　映像として誰かに届けることができないので、スタッフやキャストの皆さまに息を吹き込んで届けていただく。
その前段階になる脚本というものは、スタッフやキャストの皆さまが受け取ってくださるものだと思うので、1つ1つの文字にちゃんと想いを込める。鼓動を吹き込むのが私の仕事なのかなぁと思ってこの言葉をモットーにしました。

感性のみずみずしさ、感受性の豊かさ。
それを台詞としてアウトプットできる能力。
これらがすごいところですね。
天性のものだと思うんですが、才能溢れた方ってどうしても世界が狭くなる傾向があるんですけど、若杉さんは、ドラマというエンターテインメントという形で世の中に届ける力を持っています。
他局も含めていろんな作品を書いていただいて、彼女がどれくらい脚本家としてこれからの日本のドラマ界を引っ張っていけるのかというのを1プロデューサーとしても、1視聴者としてもすごく楽しみにしています。

まだまだスタートしたばかりなので、アドバイスをできる立場ではないんですが。
これから私が生きていく上で大切にしていることとしては、
いつチャンスが現れるか分からないので、チャンスを掴む準備はしておかなければいけない。なぁと思っています。

ジャンルを絞らず書かせていただけるものは、全部書きたいです。
その中で、どの作品を通してもドラマを観たときに、視聴者のみなさんが、自分だったり、家族や友人、恋人、いろんな人と向き合えるような作品を作っていきたいです。
ドラマは、自分を重ねたり、気づきがある場所でもあるので、自分の中に落とし込める、ドラマを観る時間がそういう時間にもなればいいなと願っています。

何者にもなれる場所。
脚本を書く私にとっても観ている皆さまにとってもそうだと思うのですが、新しい世界を創るということは、その場所に自分が入るということだと思うので、普通じゃ体験できないことを、ドラマを通して体験していただきたいし、そのキャクターを創り出す私自身、今まだ考えてこなかったことを考えられる時間でもあるので、自分の創るドラマは、何者にもなれる場所になるといいなぁと思っています。